スペースX株(SPCX)の価値は上場初日を下回っている。先週の終値は115ドル近辺で、6月12日の上場時に会社が設定した135ドルを約15%下回る。
上場時に購入した投資家は全員含み損の状態となっている。今後株価が回復するかが注目点だが、その答えを探る決定的な手がかりがある。
スペースX株に何が起きたのか
スペースXは1株135ドルで5億5560万株を売却した。調達額は約750億ドルで、会社の時価総額はおよそ1兆7700億ドルとなった(目論見書より)。
出足は好調だった。初値は150ドルで、初日の終値は161ドル前後だった。6月16日には225.64ドルの高値を記録した。
ところが、その後センチメントが変化した。7月22日には前日比6.7%下落し、終値は115.26ドル。6月の高値から約49%下落している。
現在、時価総額は約1兆5200億ドル。下落の初動時点で、イーロン・マスク氏の資産から5000億ドルが消失した。
三つの事象が同時に発生した。
- スターシップの進捗遅延
- 競合ブルーオリジンの新たな資金調達
- 中国がロケットブースターの回収に成功
中でも最後のニュースが大きかった。7月10日、中国は長征10Bブースターの海上プラットフォームへのネット回収に成功した。軌道ブースターを回収したのは世界で2か国目。スペースXは2015年12月に初成功しており、中国は約10年後を追う形となる。
ピーター・シフ氏はこの下落を市場全体の調整局面への警告と位置付けている。現在、IPO投資家は約20%の含み損を抱えている。
8月の2つの日付が持つ深い意味
スペースXは8月4日に初の決算発表を予定している。その2営業日後、8月6日には大量の株式が売却可能となる。
背景には上場時の「ロックアップ」がある。これは関係者による一定期間の売却制限だ。
スペースXのロックアップはカレンダーではなく決算発表を基準としている。決算発表後には最大9億1150万株が売却可能となる。
イーロン・マスク氏は売り手に含まれていない。同氏の株式は366日のロックがかかっており、早期解除はできず、2027年6月まで売却できない。
売却されない大量の株式
8月に売却解禁予定だった別の4億5580万株については、ほとんど注目されていないが、実際には市場に出てこない。
この株式は「IPO価格の30%超で取引された場合」にのみロック解除される。目安となる株価は175.50ドル。
決算日までの10営業日のうち5営業日でその条件を満たす必要がある。しかし現在の株価は115ドル近辺であり、条件達成は不可能である。
その結果、市場に出回る株数は大幅に減少した。8月に予想された供給の約半分はすでに消滅した形だ。
テスラよりもメタが比較対象となる理由
多くの投資家はスペースXとテスラを比較するが、この比較は成立しない。
テスラは2010年6月に上場し、1株17ドルで1330万株を売却、2億2600万ドルを調達した。スペースXの調達額はその約330倍に相当する。
より近しいのはフェイスブック(現メタ)だ。2012年5月に1株38ドルで上場し、160億ドルを調達した。
いずれも創業者による強固な支配体制が特徴である。マスク氏はスペースXの議決権の82.4%を保有しているが、株式の過半数は持っていない。
その理由は、1株あたり10票の「クラス2」株式を保持しているからである。普通株式は1株1票。
個人投資家は両案件に殺到した。当初報道では、SpaceXは個人投資家向けに全体の30%を割り当てるとされたが、CNBCが後に報じたところによれば、実際の比率は2割強にとどまった。
| SpaceX、2026年 | Meta、2012年 | Tesla、2010年 | |
|---|---|---|---|
| 新規上場価格 | 135.00ドル | 38.00ドル | 17.00ドル |
| 調達額 | 750億ドル | 160億ドル | 2億2600万ドル |
| 上場時価総額 | 1兆7700億ドル | 1040億ドル | 約20億ドル |
| 初日終値 | 161ドル、19%上昇 | 38.23ドル、0.6%上昇 | 23.89ドル、41%上昇 |
| 創業者の議決権割合 | 82.4% | 過半数 | 特別なものなし |
| 新規上場価格からの最大下落率 | これまでで15% | 53.3% | すぐに回復 |
| 新規上場価格回復までの期間 | 未定 | 14.5か月 | 数週間 |
Metaのロックアップ解除が株価に与えた実際の影響
ここが最も重要なポイントだ。Metaも2012年に2度、同様の懸念に直面した。
1回目のロックアップ解除は2012年8月16日、2億7100万株が売却可能となった。この日、株価は6.3%下落した。
2回目はさらに大規模だった。2012年11月14日には、約11億9000万株が売却可能となった。
株価は12.6%上昇した。最大規模の売りが、最高の上昇日となった。
損失はすでに前倒しで織り込まれていた。Metaは2012年9月4日に底値となり、17.73ドルで引けた。これは新規上場価格から53.3%安であり、SpaceX株主が経験した下落幅の3倍超にあたる。
「これこそ、ブームとなった大型新規上場銘柄に初日から飛び乗るのがいかに危険かを示す好例だ」とピーター・シフ氏は指摘した。
SpaceX株に反転の契機をもたらすもの
Metaが回復したのは、期待感ではなかった。たった1つの数字で転機を迎えた。
2013年7月24日、広告売上高に占めるモバイルの割合が約41%に達したと公表した。3四半期前は14%近くだった。
年間で売上高は53%成長した。翌日、株価はほぼ30%上昇した。
2013年8月2日、ついに再び38ドルを上回って引けた。これには14.5か月を要した。
SpaceXも独自の数字が求められる。スターリンク利益、打ち上げ回数、スターシップの進展などが候補となる。
どれがどれだけの価値を持つかについて、アナリストの見解は割れている。目標株価は156ドルから239ドルまでばらつきがある。
モルガン・スタンレーは指摘する。仮に100ドルへ下落すれば、AI分野の評価はほぼゼロになるとみる。テクニカルアナリストは、上放れしやすい「フォーリングウェッジ」型のチャートパターンを挙げる。
キャシー・ウッド氏は依然としてSpaceXを長期保有で最も有力視している。一方でグーグルのSpaceX持ち分は、さらに長くロックアップされ続ける。
Metaは14.5か月と、1度の好決算で復活した。SpaceXは、売却解禁2日前の8月4日に初めてこのチャンスを迎える。









