オードリー・タン氏と安野貴博氏が日本のデジタル戦略の課題を議論=WebX2024リポート

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更新 Oihyun Kim

アジア最大規模のWeb3カンファレンス「WebX2024」(CoinPost主催)が28・29日、東京で開催された。昨年の1万6500人以上の来場者が見込まれ、暗号資産やブロックチェーン関連企業が120社以上、参加した。注目されたBitFlyerステージでの講演は29日、台湾の元IT大臣オードリー・タン氏とAIエンジニアで起業家・SF作家の安野貴博によるトークセッションが行われ、「今、日本が取り組むべきデジタル戦略」について議論した。

タン氏はマイクロソフト首席研究員を経て2016年に台湾初のデジタル担当大臣に就任した台湾を代表するプログラマ。安野氏はオープンソースであるGitHubを、政策議論に「応用」できないかという実験を試みるなど新しい公約を掲げて7月の東京都知事選に出馬した起業家。両者とも官民に関わって国内のデジタル戦略に一石を投じてきた人物だ。

誰一人置き去りにしないデジタル戦略

タン氏はコロナ・パンデミック期、感染症対策のためのソリューション事業を担当し、台湾政府と民間の共同開発によるマスクの在庫状況対応アプリを公共インフラとして浸透させるなどの実績があり、「デジタル・ソリューションは余裕のある人々に提供するのではなく、インフラレベルへの投資によって誰一人取り残さないようにすることが重要」とし、「これは日本のデジタル戦略にも共通する価値観だ」と語った。

安野氏は、「日本と台湾のデジタル戦略は似ているところがある」としながらも「日本では政府によるトップダウン的なプロセスを踏襲することが多く、より柔軟にソフトウェア開発ができる流れが必要だ」と課題を呈した。

これに対し、タン氏は「トップダウンで行われるインフラ整備は、探索的なプロセスにより1、2年ほどの時間を要する」とし、「台湾では、(同じトップダウン的であるが)総統によるハッカソンおよびファンディング・ラウンドのような、地元の人々が近所で概念実証を始めることを奨励するような資金の使い方が一般的」と語り、「その段階では、それほどコストがかからないので、もしそれのアイデアが本当に地域社会の問題解決になるのであれば、プロトタイプ化されたアイデアの多くに二次投票や二次ファンディングを使用して、いくつかのチームを浮上させている」というプロセスを示した。

目的志向をベースにした共同体的用途としてのAI

安野氏は7月の東京都知事選において、自身のAIエージェントがYouTubeで市民からの質問に答える”AIあんの”という選挙活動が話題となったほか、著書『松岡まどか、起業します AIスタートアップ戦記』では、AIスタートアップの起業について記すなど、これまの日本にはなかった選挙活動やスタートアップ理論が話題だ。

タン氏が「あなたのキャンペーンはデジタル民主主義、デジタル戦略、民間セクターのすべてを1つのプラットフォームにするようなものか」と聞くと、安野氏は「スタートアップではスピードが大切」と語り「(選挙活動では)市民はYouTubeや電話で私の政策について何でも聞くことができ、実に8000もの質問が挙がった。これまでの候補者では(選挙期間で)でこれほど膨大な量のの市民の声に答えることはできない」と答えた。

タン氏は「ブロックチェーンや暗号通貨という考え方は、投機や(P2Pのような)退廃的用途と結びつけられていることが多いが、日本では常に、非常に強力な共同体的用途と結びつけられている。これは他国とは大きな違いではあるが、この目的志向は非常に重要であり、安野氏はテクノロジーを活用することで、誰も取り残されることなく、民間セクターの役割も果たすことができることも語っていた」と語った。

日本はコミュニケーションを大事にする=自然言語でのAI

このようなAI開発や運用の重要性について、安野氏は「日本では人口が急速に減少し、今後あらゆる産業、あらゆる企業が労働力不足に陥る。そのような状況の中で、私たちはAI技術を活用する強い動機がある」と考えている。

技術や知識においては他国に遅れを取っているという安野氏に対し、タン氏は「日本はAIをプログラムしたり、整列させたり、家畜化したりする強い意志があると思う。以前は、Pythonやプログラミング言語の知識が必要だったが、あなたの小説では、人々は自然言語を使うだけだ。私たちが応用している社会的感情知能は、AIを作る素養となる」と語り、「インフラレイヤーがグローバルに共有されていれば、アプリケーションレイヤーは揺るがない」と日本のデジタル戦略への期待感を示した。

安野氏の考えでは、「例えば、オープンAIやグーグル、メタなどのIT巨大企業がアプリケーション分野で利益を上げているが、その上に、熊本などで話題となる半導体企業のレイヤーという基盤モデルを使えば日本にもチャンスがあるだろう」という。タン氏はその考えについて「そうなると、ミドルレイヤーがますます一般に普及していく。そうすることで、一般的な人も推論が非常に速くなり、潮の満ち引きのようなうねりとなり、社会全体が上昇していくだろう」と賛同した。

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Shigeki Mori
大阪府出身。日本では雑誌編集者、読売テレビ広報記者、豪州では日系メディア編集・記者などを経てフリーに。日本とオーストラリアで20年以上、ジャーナリスト、編集者、翻訳者、ウェブプロデューサーとして活動してきた。近年は暗号資産関連の記事の執筆や翻訳、コンテンツ・マネジメントを行っている。
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