これまで社債や不動産などのアセットは小口化が難しかったという問題ありました。金融業界で大きな注目を集めているのが「STO(Security Token Offering=セキュリティ・トークン・オファリング)」です。STOは、ブロックチェーン技術を活用して発行される「セキュリティトークン」と呼ばれるデジタル証券を用いた資金調達方法のこと。STOを活用することで、社債や不動産などのあらゆる資産に投資することができ、また従来のICOとは異なり、法規制に準拠した安全性の高い投資方法として期待されています。
そこで本記事では、STOのメリット・デメリット、国内初のSTO発行事例をわかりやすく解説します。
STO(Security Token Offering)とは?
STO(Security Token Offering)は、ブロックチェーン技術を活用して発行される「セキュリティトークン」と呼ばれるデジタル証券を用いた資金調達方法のこと。投資家は、これまで小口化が難しかった社債や不動産などのあらゆる資産に投資することができ、また従来のICO(Initial Coin Offering)とは異なり、セキュリティトークンは法的な規制対象となるため、投資家保護の観点から透明性の高い資金調達が可能となります。
STOは、法規制の整備や技術の進歩、投資家理解の向上によって、今後大きな成長が見込まれる分野です。従来の資金調達方法よりも透明性と効率性が高いSTOは、企業にとっても投資家にとっても魅力的な選択肢となる可能性があります。
STOに関する国内の法整備・規制の取り組み
日本国内では、金融庁を中心に、STOに関する法整備・規制の取り組みが加速しています。
1. 金融庁による研究会
- 中心となるのは「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」
- 民間のイノベーションの促進や金融のデジタル化への対応のあり方を検討
- 今後、具体的な制度設計や規制緩和の方向性について議論が深められる見込み
2. STO協会の認定
- デジタル証券に関する自主規制団体として、「一般社団法人日本STO協会」を認定
- 実務や運営における透明性向上を図る
3. その他の取り組み
- 金融商品取引法の改正
- 証券取引所の規則改正
- 税制上の措置
これらの取り組みを通じて、日本国内でもSTO市場の健全な発展に取り組んでいます。今後は、法規制の整備と実務の運用がどのように進められていくのか、注目されます。
STOのメリット
STOのメリット3つについて解説します。
- 法規制の遵守
- 流動性の向上
- コストの削減
STOのメリット①:法規制の遵守
STOは、証券取引法などの法規制の対象となるため、ICOと比べて投資家保護の観点から安全性が高いと言えます。具体的には、以下のようなメリットがあります。
- 情報開示の義務化:STO発行者は、事業計画や財務状況などの情報を投資家に開示する必要がある
- 募集方法の制限:STOは、公募ではなく、機関投資家や富裕層など、少数の投資家に対してのみ募集することができる
- 取引所の規制:STOは、証券取引所や暗号資産取引所で取引することが可能
これらの規制によって、投資家は詐欺や情報開示不足などのリスクから守られることになるため、STOは公的に守られたアセットであるといえます。
STOのメリット③:流動性の向上
STOは、証券取引所に上場したり、暗号資産取引所で取引したりすることが可能になるため、従来の株式よりも流動性が高くなる可能性があります。
STOは、発行後すぐに取引所で売買することが可能となり、二次市場の形成が容易といえます。流動性が高いほど、価格変動リスクが低くなり、園結果、より多くの投資家から注目されるメリットもあります。
STOのメリット③:コストの削減
STOは、ブロックチェーン技術を活用することで、証券発行や取引にかかるコストを削減することができます。具体的には、以下のようなメリットがあります。
- 仲介業者の排除:STOは、証券会社などの仲介業者を介さずに発行・取引することが可能
- 処理の効率化:ブロックチェーン技術を活用することで、証券発行や取引にかかる事務処理を効率化することができる
- コストの低減:仲介業者を介さず、事務処理を効率化することで、コストを大幅に削減することが可能
STOのデメリット
STOのデメリットについて解説します。
- 法規制の不透明
- 投資家理解の不足
STOのデメリット①:法規制の不透明
STOは比較的新しい概念であるため、各国の法規制が未整備な場合があります。そのため、STOの発行や取引に関する明確なルールが定まっていないケースが多く、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 投資家保護の不十分
- 資金洗浄やテロ資金供与のリスク
- 税務上の不透明性
TOの流通市場の整備が不十分なことにより、取引場面が限られてしまう点にも注意が必要といえるでしょう。
STOのデメリット②:投資家理解の不足
一般の投資家が暗号通貨やSTOについて正確な理解を持っていないことも浸透が遅れている理由の1つです。投資家がSTOについて理解するためには、投資家教育が必要であり、企業側も投資家に対して、STOのリスクやメリットについて十分な情報提供を行う必要があるといえます。
STOの活用事例
STOの活用事例について解説します。
- ソニー銀行と三井住友信託銀行のSTの発行
- LINE証券のSTOサービス
- 丸紅による賃貸住宅のデジタル証券
STOの活用事例①:ソニー銀行と三井住友信託銀行のSTの発行
2023年7月ソニー銀行株式会社と三井住友信託銀行株式会社が、Securitizeプラットフォームを活用して、STの発行を行うことを発表。
従来のSTは、社債や不動産を裏付けとした投資商品として販売されてきましたが、今回の取り組みは、合同運用信託を裏付けとしたSTの販売となっており、国内初の取り組みとなります。
STOの活用事例②:LINE証券のSTOサービス
2022年5月からLINE証券は、スマホ投資サービス「LINE証券」に新たな投資サービス「STO」を追加しました。
第一弾として、国内初の仕組みとなる個人向け公募引受型デジタル債を販売。まとまった資金が必要だった社債投資を、少額から始められるようにすることで、若年層の資産運用デビューを支援することが目的となっています。
LINEアプリから簡単にSTへの申し込み、投資、利払いの受け取り、償還が可能となっており、従来の投資商品よりも手軽に、様々な資産に投資することができます。今後、LINE証券は、デジタル債以外にも、未上場株、不動産、ワイン・ウイスキー・クラッシックカーなどの実物資産、メタバース上の土地やNFTなど、様々な資産への投資を可能にするSTの取り扱いを検討しています。
STOの活用事例③:丸紅による賃貸住宅のデジタル証券
2023年5月、丸紅は、個人投資家向けに、1口10万円から投資可能な賃貸住宅のデジタル証券を発行。これは、不動産デジタル証券としては最小規模の金額設定であり、若年層などこれまで不動産投資に参入できなかった層にも門戸を広げるとして期待が集まっています。
購入はSBI証券を通じて行うことができ、投資家はSBI証券に口座を開設することで、購入が可能。発行総額は8億3600万円を予定しており、投資家は、口数に応じて売却までの賃料収入と売却時の利益を受け取ることができます。
丸紅の今回の取り組みは、少額から始められる不動産投資の新しい形として注目されています。
まとめ:STOの法整備が進み、国内で活性化していくことに期待
本記事では、STOの概要、メリット、デメリット、国内外の事例について解説しました。STOは、従来のICOと比べて法規制に準拠しているため、投資家にとって安全性が高い投資方法と言えます。また、流動性の向上やコスト削減など、様々なメリットも期待されています。一方、デメリットとしては、市場規模がまだ小さいことや、法規制の整備が追いついていないことなどが挙げられます。しかし、これらの課題は今後克服されていくと予想されます。
実際に、国内外でSTOの発行事例が徐々に増えており、今後さらに加速していくことが期待されます。STOは、金融市場の未来を変える可能性を秘めた技術です。今後も動向に注目していきましょう。
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