トラスティッド

ビットコインは2050年までに世界を支配するのか?

44分
投稿者 Shota Oba
編集 Shigeki Mori

ヘッドライン

  • ビットコインは政府から個人への権力移譲を促す手段となり、グローバルな金融の再設計を加速させています
  • AIやDAO経済において、ビットコインは中立で自律的な決済手段として新しい経済圏を支える基盤になっています
  • 米国の政策転換や新興国の需要が採用を牽引し、ビットコインは単なる投資を超えたインフラ的存在へと進化しています

暗号資産やブロックチェーン、特にビットコイン(BTC)は、世界経済や社会のあり方に根本的な変革をもたらしつつあります。各国の金融政策や個人の資産管理にまで影響が及ぶ中、その変化の行方に注目が集まっています。今回、BeInCryptoはExat Networkの最高マーケティング責任者(CMO)であるトリスタン・ディキンソン氏に独占インタビューを実施。

本稿では「2050年までにビットコインが世界を支配する可能性」についての同氏の見解を解説します。

トリスタン・ディキンソン氏(Exat Network)が語る「業界の転換点と個人への権力移譲」

冒頭、司会を務めるBeing Cryptoのジェネシス・エルナンデスは、「同インタビューの目的は、単なるビットコインの価格予想ではなく、ビットコインが今後数十年で経済構造や社会のあり方にどういった影響を与えるのかを深掘りすることです」と述べ、対談の趣旨を明確にしました。

この問いかけに対し、ディキンソン氏はまず、暗号資産やブロックチェーン技術、特にビットコインがもたらしている本質的な社会構造の変化について指摘しています。

暗号資産やブロックチェーン、特にビットコインは、明確に政府から個人へのパワーシフトを引き起こしている。私たちは今、まさにこの業界における重大な転換点の入口に立っていると言える

この発言の背景には、ビットコインがもつ非中央集権性、透明性、そして権力から独立した価値保存手段としての性質があります。また、同氏はビットコインの普及状況について具体的に地域ごとの特徴を挙げ、特に既存の金融インフラが不十分な地域でビットコインの需要が急激に高まっていることに触れました。

特にアフリカ、南米、中央アメリカでは、ビットコインをはじめとする暗号資産の採用率や成長スピードが非常に高い。これは、これらの地域が伝統的な金融システムに対して明確な課題や制限を抱えているからだ

実際に、これらの新興地域では法定通貨が不安定だったり、銀行口座を持てない人口が多かったりするなど、ビットコインを含めた暗号資産の普及を促進する社会的背景があります。これらの地域でビットコインが普及することにより、従来の金融システムにアクセスできなかった人々が、自由に経済活動を行える可能性が広がっています。ディキンソン氏がスーパーマーケットでの買い物を例に挙げて、商品の値段がビットコイン価格変動により、レジでの支払い時に変動してしまう問題を詳しく指摘しています。

例えば5ドルの商品をスーパーで購入しようとすると、レジに並んでいる間にビットコインの価格が変動し、実際の支払い額が4.5ドルになったり6.5ドルになったりする可能性があります。こうした価格の不安定さは、ビットコインが日常的な決済手段として普及するのを阻んでいる要因です

さらに、同氏は自身が関わっているプロジェクト「Exat Network」が、ビットコインを単なる「価値の保存」手段から「新しい金融資産」へと進化させることを目指していることについても紹介しました。

Exat Networkはビットコインを、従来のように単に価値を保存するだけの資産から、利回りを生み出す動的な金融資産に変化させることを目的としている

これはいわゆるBTC-Fi(ビットコイン・ファイナンス)という考え方であり、ビットコインを用いたステーキングや貸付など、多様な金融商品を提供することを通じて、ビットコインがより一般的な資産として広く利用される可能性を示しています。

こうした一連の発言を通してディキンソン氏が強調しているのは、ビットコインが単なる投機対象を超えて、個人が政府や金融機関から独立した形で自らの資産を管理・運用する「個人主権」の新たな形態を提供するという可能性です。つまり、ビットコインは社会的な権力構造の再編を促しつつあり、2050年までの間に大きな変革を起こしうるという展望を示しています。

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ビットコインの役割はどのように変化するのか?—日常通貨か、デジタルゴールドか

2025年にはビットコインを所有するアメリカ人が金を所有する人より多い—これが意味すること

インタビューの話題は続いて、「ビットコインが将来的にどのような形で私たちの生活に溶け込んでいくのか」という具体的な問いに移ります。エルナンデス氏は2040年という将来を見据え、「ビットコインは日常的に使用されるグローバルな通貨になる可能性があるのか、それともデジタルゴールドのような資産として位置付けられるのか」と問いかけました。

これに対し、ディキンソン氏はビットコインの価格変動(ボラティリティ)が日常的な通貨としての利用を妨げる要因となっていることを指摘し、以下のように述べました。

スーパーで何かを購入するとき、例えば5ドルの商品があるとする。しかし、レジに到着する頃には、価格変動によって4.5ドルや6.5ドルに変わってしまう可能性がある。そのような状況では、日常的な決済手段としては使いにくい

これはビットコインがまだ価格安定性に課題を抱えており、日常的な決済手段として浸透するには至らないという現実を示しています。実際、現時点ではビットコインを用いた日常の決済は価格の不安定さから限られたものとなっています。

しかし、その一方で同氏は、ビットコインがデジタルゴールドのような金融システムのバックボーンとして機能する可能性について強く肯定しました。次のように語っています。

ビットコインは、ゴールドと似た性質を持ち、金融システムの背後におけるグローバルな担保資産として機能する可能性が非常に高い

実際、ビットコインとゴールドは供給量が限られていることやインフレ耐性がある点などで似ており、すでに一部の国や企業が準備資産として採用する動きが出ています。エルサルバドルのように国家としてビットコインを法定通貨として採用した国も存在し、米国など他の大国も準備資産として検討を始めるなど、ビットコインが金融インフラに組み込まれつつあることは現実味を帯びてきています。ビットコインが日常的通貨としての役割ではなく、デジタルゴールドとしてグローバルな担保資産(コラテラル)として機能する可能性について強調しています。

ビットコインが担う最も重要な役割は、『グローバルな金融システムのバックボーン』です。金(ゴールド)が国家や金融機関の準備資産として機能しているのと同じように、ビットコインもグローバルな担保資産として広く普及しつつあります。

またディキンソン氏は、このような動きが国際的に加速することを見据えて、各国がビットコインに対する態度を徐々に軟化させていくことも予測しています。特にアメリカの動向について言及し、次のように話しました。

米国が少しでも動けば世界中に影響を及ぼす。アメリカがビットコインを戦略的準備資産として採用すれば、世界的なビットコインの普及や認知度は一気に高まるだろう

ディキンソン氏は、米国がビットコインを戦略的資産として明確に採用する動きを見せれば、世界的な金融システムが大きく変化すると予測しています。それは世界の基軸通貨である米ドルの地位や、従来のゴールドの役割にも影響を与える可能性を秘めているのです。

このように、ディキンソン氏はビットコインが単純に「日常の通貨」となるよりも、「金融システムの担保資産」としてグローバルな地位を獲得する可能性が高いと考えています。その上で、同氏が関わるExat Networkが、単なる価値の保存資産からさらに進化した「動的な利回りを生む金融資産」へとビットコインを導くことを目指していることも改めて強調しました。

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ビットコインは経済格差を解消するか、それとも拡大するか?

次に、社会経済的な問題として「ビットコインが世界の経済格差にどのような影響を与えるのか」というテーマへと移ります。エルナンデス氏は、多くの人々がビットコインを投資対象として捉え、富を築く手段とみなしている現状を指摘した上で、「2040年には、ビットコインが世界の経済格差を縮小するのか、それとも逆に格差を拡大するのか」と問いかけました。

ディキンソン氏は、この問いに対し、まずビットコインがもたらした金融アクセスの民主化というポジティブな側面を強調します。

ビットコインの初期段階においては、金融アクセスを民主化するという重要な役割を果たした。裕福である必要も、特定の国に住む必要もなく、インターネット環境さえあれば誰でも参入可能だった。このことによって、少額投資でも多くの人が富を築く機会を得られた

彼は自身の経験を交えて、伝統的な金融システムでは富裕層に限定されていた資産運用サービスが、ビットコインの登場で一般の人々にも開かれたことを指摘しました。これにより、資金が少ない人でも比較的簡単に資産形成ができるようになったのです。

しかし、同時にディキンソン氏は、現在の状況では機関投資家が市場に参入したことで、初期の民主性が変質しつつあることも指摘しました。

現在、市場は機関投資家の参入によって変化している。ETFなどが登場し、機関投資家が本格的に市場に参入したことで、初期のように少額から大きなリターンを得ることは難しくなりつつある

これは、従来の株式市場と同様、機関投資家が市場を支配することで、新規参入者や少額投資家が不利になる構造がビットコイン市場にも及び始めているという現実を意味しています。

しかし同氏は、依然としてビットコインが伝統的な金融システムに比べて、公平性を一定程度保っていることを主張しました。

格差というものは完全になくなることはない。しかし、ビットコインは元々が中央集権的ではなく、透明でオープンソースな仕組みであるため、従来の金融システムに内在する不公平性や制度的な障壁を軽減する力を持っていることは間違いない

ディキンソン氏は、格差解消が完全に達成されることは難しいと認めつつも、ビットコインには既存の金融システムよりも公平性が高く、少なくとも「システムに内在する不公平」を是正する効果があると考えているのです。

その一方で同氏は、市場が完全に機関投資家に支配されてしまうリスクも指摘しました。その一例として、最近のミームコインブームが短期間で爆発的な利益を生んだ背景に、小額投資家が少ない資金で利益を得るチャンスを狙った動きがあることを挙げています。こうした投機的な動きが激しくなる背景には、機関投資家が市場に参入して、以前ほど容易に利益が得られなくなったことが一因であると示唆しました。

ディキンソン氏の発言を総合すると、ビットコインは確かに従来の金融システムよりも「富の公平な配分」を促進する可能性がある一方で、市場環境が変化するにつれて新たな格差や不公平性を生む可能性もあるということです。このように、ビットコインが経済格差に与える影響は一面的ではなく、今後の市場の進化や規制環境など、様々な要素が絡み合いながら決定されていくことになるでしょう。

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AI(人工知能)経済におけるビットコインの役割—AIとDAOがもたらす新たな経済圏

ディープマインドクリスタルAI、AIタンパク質

インタビューの後半では、ジェネシス・エルナンデス氏が「AIが社会や経済に広く普及している現在、AIとビットコインはどのように交わっていくのか」という新たなテーマを投げかけました。背景には、AIが人々の金融取引や意思決定、さらには行政や統治機能にも関わり始めているという現状があります。

ディキンソン氏はまず、AIエージェント(人工知能による自律的な経済主体)が日常的に金融取引を行う時代が既に到来していることを示した上で、その金融基盤としてのビットコインの役割に着目しました。

AIエージェントというのは、国籍や銀行口座、法的な身分証明を持たない存在だ。彼らが24時間365日取引を続ける経済環境を想定すると、従来の金融システムでは追いつけない。ここでビットコインのようなパーミッションレスで透明性の高い金融基盤が求められることになる

同氏は、従来の法定通貨(フィアット)が、銀行口座や国籍といった制約に縛られている一方、ビットコインはこうした制限がないため、AI経済の基盤として最適であることを指摘しました。つまり、AIが主体となって取引を行う新しい経済圏(Machine to Machine Economy)において、ビットコインが基本的な金融基盤になり得るというわけです。

次にディキンソン氏は、DAO(分散型自律組織)の文脈でもビットコインが重要な役割を果たす可能性を示唆しています。

「DAOは現在でも資本を管理したり、外部の契約者を雇用したり、戦略を実行する機能を持っているが、将来的にはAIエージェントを活用してこれらの機能をさらに高度化する可能性がある。この際、従来の銀行システムや国境に依存せずに資金管理を行う必要がある。ここでもビットコインのような国境や制限のない金融インフラが不可欠になる。」

つまり、今後DAOがAIを活用して自律的に経済活動を行うようになる場合、従来の金融システムを用いることは困難であり、ビットコインをはじめとした分散型かつ許可不要(パーミッションレス)の金融基盤を活用することが現実的になる、という見通しを述べています。

また、ビットコインがこのような新しい経済システムにおいて果たす役割として、同氏は「最終的な決済(セトルメント)」を挙げています。

ビットコインが担う最も重要な役割は、最終的な取引のセトルメント(決済)であると考える。ビットコインは中立で分散型の仕組みであり、改ざん不可能な取引記録(台帳)を提供できるため、AIやDAOが経済活動を行う際の最終的な調停役として機能する

AIエージェントが法的な身分証明や銀行口座を持たないため、既存の金融システムではなくビットコインを使用することの必要性について詳しく説明しています。

AIエージェントには国籍も銀行口座も存在せず、24時間365日取引を続けます。彼らには国境や銀行システムの制約を受けない分散型の金融基盤が必要であり、その役割をビットコインが果たすことになります

また、DAOがAIを用いて自動的に資本を管理し、契約を実行する際にも、ビットコインが必要となることを示しています。

「DAOはAIエージェントを利用して資本管理や契約執行を自律的に行うことができますが、従来の銀行システムや国境に依存する方法ではなく、制限がないビットコインを金融インフラとして活用することになります。」

これは、ビットコインが単なる通貨や資産以上の役割を担い、経済活動全体の信頼性を担保する重要なインフラとしての地位を獲得する可能性を示唆しています。実際、現在でもビットコインのライトニングネットワークなどの技術は、マイクロトランザクション(超少額決済)を迅速かつ低コストで処理できるように進化しており、AIや機械同士の迅速な取引を支える実用的な仕組みとして期待されています。

以上の発言を通じて、ディキンソン氏が描いているのは、ビットコインが今後のAI主導型経済においても不可欠な役割を果たすという未来像です。すなわち、ビットコインは単なる投資対象を超えて、新たな経済圏における「信頼性を保証するための基盤」となり得るという視点を提示しているのです。

関連記事:Nansen CEO、AIとブロックチェーン分析の融合について語る: 賢い投資家のためのスマートインサイト

政府による規制と課税の未来—国家との駆け引きが生み出す新しいパワーバランス

インタビューは次に、政府がビットコインに対してどのように対応し、どのように規制や課税を行っていくかというテーマに進みました。ジェネシス・エルナンデス氏は、「人々がビットコインを使い、自らの資産を銀行や仲介業者なしに管理できるようになった場合、政府にとって税金や規制の問題はどのように変化するのか」と問いかけました。

これに対しトリスタン・ディキンソン氏は、まず現在の政府による暗号資産への対応が世界各国で大きく異なることを指摘しています。

暗号資産に対する各国の政府の対応は非常にまちまちだ。ナイジェリアのように規制を厳しくしてビットコインを禁止しようと試みる国もあれば、それがかえって利用率を高めてしまうという逆効果を生んでいる例もある。一方で、中国のように厳格な禁止措置を継続している国も存在する

ディキンソン氏は、ナイジェリアの例を挙げ、厳しい規制が結果的に暗号資産への関心や需要をかえって高めてしまったことを強調しています。このことは、政府の規制や制限が常に望んだ通りの結果を生むわけではないという重要な指摘となっています。

続いて、ディキンソン氏は、政府が暗号資産を課税対象として扱おうとする動機についても具体的に触れました。

政府が暗号資産を課税対象として捉えようとするのは、透明性とコントロールを維持するためだ。彼らは過去数年間、デジタル資産をどのように課税し管理すべきかを模索し続けてきたが、まだ明確な解決策を見出せていない

彼によると、世界各国は依然として暗号資産の規制や課税をどう扱うべきか決定しきれていません。例えば、オーストラリアや米国などでは「含み益(実現されていない利益)」にも課税するかどうかという議論が起きています。これは、伝統的な金融資産にはない新たな課題を政府にもたらしています。

また、ディキンソン氏は、エルサルバドルのようにビットコインを公式に採用し、法定通貨として位置付けることで課税ルールが明確化されるケースにも触れました。これにより、市民の暗号資産取引や経済活動が活発化した事例として注目されています。

エルサルバドルはビットコインを公式に戦略的準備資産として採用したことで、税制や規制が明確になり、国民が日常的にビットコインを利用する基盤を整備できた。初めは笑われたが、今ではその判断が正しかったと評価されている

ディキンソン氏は将来、スマートコントラクトを活用して取引ごとにリアルタイムでマイクロ課税が行われる新しい課税モデルが出現する可能性について具体的に触れました。

将来的には、スマートコントラクトを活用したリアルタイムでのマイクロ課税システムが登場する可能性があります。例えば、一年間取引を蓄積して確定申告を待つのではなく、取引が実行されるその瞬間に微細な課税が自動的に行われる仕組みです。これは政府にとっても効率的であり、課税プロセスを劇的に簡素化することができます

つまり、ブロックチェーン技術が税務行政に組み込まれることで、透明で公正な税務管理を可能にし、行政コストも削減できることを示しています。

一方でディキンソン氏は、ビットコインが持つ「個人主権」の側面が、政府にとってはコントロールや可視性を失うことになるため、脅威となりうることも指摘しています。特に、政府が人々の資産状況を完全に把握できない状況が生まれることについて次のように述べました。

政府にとって暗号資産の拡大はコントロールを失うことを意味する。ビットコインを利用すると、政府は個人の資産状況や取引内容を完全には把握できなくなるためだ。これは政府にとって恐ろしいパワーバランスの変化である

つまり、ビットコインが社会に浸透すればするほど、政府と個人の間で新しい権力バランスの駆け引きが生じることになります。政府はこの変化を認識し、それに応じて規制や課税ルールを調整しなければなりませんが、その取り組みはまだ始まったばかりであると言えるでしょう。

ディキンソン氏が示す将来像では、ビットコインの普及に伴い、政府は規制や課税のあり方を再考せざるを得なくなり、個人が自律的に経済活動を行える環境が徐々に広がっていくことになります。その過程は複雑で、国家によって異なる対応がとられることが予想されますが、確実に社会の経済的自由度や透明性に大きな影響を与えるでしょう。

地域ごとのビットコイン採用動向—米国と新興国、どちらが主導権を握るのか?

アメリカ製コイン トランプ

次に話題は、「世界各地域で今後数十年の間にどの地域が特にビットコインの採用を積極的に進める可能性があるか」という具体的な地域動向に移りました。インタビュアーのジェネシス・エルナンデスが、「今後数十年にわたり、どの地域や国々がビットコインの採用において主導権を握ると考えるか」と質問しました。

これに対してトリスタン・ディキンソン氏はまず、新興国や発展途上国が従来は暗号資産採用の主要なドライバーだったことに触れました。

当初は、アフリカや南米、中央アメリカなどの新興地域が、伝統的な金融インフラが不十分なことから、暗号資産を積極的に採用し、市場を牽引すると考えていた

彼は、新興国が既存の金融システムに問題や制約を抱えているため、ビットコインやその他の暗号資産が提供するソリューションをいち早く活用すると見ていたのです。実際、ナイジェリアやアルゼンチンなどでは通貨価値が不安定であったり、インフレ率が非常に高かったりするため、住民が暗号資産を生活の防衛策として使用するケースが急増しています。

一方、最近の米国の政治的な動きが、世界のビットコイン市場に与える影響についても、同氏は興味深い見解を示しています。彼は、米国が暗号資産に対して前向きな姿勢を取り始めたことで、世界の市場環境が大きく変化する可能性が出てきたと指摘しました。

最近、米国政府がビットコインを戦略的な準備資産として採用するという動きを見せ始めたことで、世界的な採用の主導権を新興国から米国が奪う可能性が出てきている。もし米国が本気で動けば、世界中のビットコイン採用が一気に加速することになるだろう。

特にディキンソン氏は、米国の新しい政権が暗号資産に対して積極的であること、さらには米国が技術革新やイノベーションの中心地であるという歴史的背景も踏まえ、米国が動けば世界がそれに追随する可能性が高いと分析しています。

総じてディキンソン氏の分析によれば、従来は新興国が主導していた暗号資産の採用が、米国という経済的・政治的影響力の大きな国の動向によって一気に変化する可能性が出てきました。そのため、今後数十年間におけるビットコイン市場の成長や社会的受容は、新興国と米国の間で複雑に絡み合った相互作用の中で決定されていくことになるでしょう。

個人の権力か、国家の支配か—ビットコインが変える世界のパワーバランス

Investisseurs institutionnels

インタビューの最後のテーマは、「ビットコインが広く社会に浸透した時、最終的に個人と政府のどちらがパワーを握るのか」という、より根源的な問題に焦点が当てられました。ジェネシス・エルナンデス氏は、特にアルゼンチンのような暗号資産が政府への抵抗手段となったケースを挙げながら、「ビットコインが本当に普及した時、政府や企業から独立した個人が強い力を持つ社会が到来するのか、それとも政府が再び支配力を取り戻すのか」と問いかけました。

これに対してトリスタン・ディキンソン氏は、過去の歴史的文脈を踏まえ、ビットコインが個人の自由や自律性を促進していることを認めつつも、最終的には政府が何らかの方法で再び支配力を維持する可能性を指摘しました。

歴史を見れば、政府は最終的に常に何らかの形で権力を取り戻す方法を見つけてきた。しかし、ビットコインは明らかに政府から個人へとパワーを移行させている。インターネットが情報アクセスの民主化を促したように、ビットコインは資産管理や経済活動の自由化を促している。」

ディキンソン氏は、ビットコインがもたらすパワーシフトが完全に政府の権限を消滅させることは難しいと考えており、むしろ政府がいずれ規制を通じて再調整を図るだろうと予測しています。しかし、同時にビットコインによるパワーバランスの変化が政府を変革させ、結果的にはより個人の自由が尊重される社会へと進化する可能性があるとも述べています。

また、同氏は具体的な例として、アルゼンチンで起きたミームコインの騒動を取り上げ、政府がビットコインや暗号資産を十分に理解しないまま規制を試みると、大きな混乱を生むリスクがあることを示唆しました。

アルゼンチンでは、政府が十分に理解しないままミームコインなどを支持した結果、大きな政治的問題に発展した。このように政府が暗号資産に関わる際には、正しい知識と理解が不可欠だ。そうでなければ、意図しない結果を生み、混乱を招くことになる

つまり、ビットコインや暗号資産を正しく理解しない政府の関与は、市場や社会を混乱させる危険性も持っているという警告を発しているのです。

ディキンソン氏はさらに、世界的に見れば政府が徐々に成熟し、ビットコインや暗号資産を無理に押さえ込むのではなく、むしろ積極的に受け入れるような動きも広がっていると評価しました。そして彼は、社会全体として見ると、現在の方が過去数百年のどの時期よりも自由で民主的な社会になっていると指摘しています。

世界を広く見渡せば、政府も次第に成熟している。まだ完全ではないが、過去100年や200年前よりもはるかに個人の自由が尊重される社会になっている。この流れが続けば、暗号資産が普及しても、政府と個人の関係性はより良い方向へと進化していく可能性がある

同氏が提示する未来像では、政府と個人の間の新しいパワーバランスが生まれつつあり、ビットコインの普及がその重要な推進力となっています。短期的には混乱や抵抗も予想されますが、長期的には政府がビットコインの価値や役割を理解し、社会全体がより民主的で自由な方向に向かっていく可能性を示しています。

関連記事:量子コンピュータはビットコインを破壊できるのか?

まとめ:ビットコインは投資資産を超えたインフラ的存在に

ビットコインのサイクルは終わっていない—ステーブルコインの指標がさらなる成長を示唆

インタビュー全体を通じてトリスタン・ディキンソン氏が提示したビジョンは、ビットコインが単なる投機資産にとどまらず、個人の自由、政府の規制、社会的な格差解消、AI経済圏の創出、そして国家と個人の関係性の再構築にまで広がる多面的なものでした。2050年という未来に向け、私たちが今直面している社会的、経済的、政治的な選択が、ビットコインを通じてどのような世界を形成していくのか、その可能性を示唆するものとなりました。

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国際関係の大学在籍中に国内ブロックチェーンメディアでのインターンを経て、2つの海外暗号資産取引所にてインターントレーニング生として従事。現在は、ジャーナリストとしてテクニカル、ファンダメンタル分析を問わずに日本暗号資産市場を中心に分析を行う。暗号資産取引は2021年より行っており、経済・社会情勢にも興味を持つ。
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