暗号資産の現物取引高は2024年8月に1兆4336億500万円、証拠金取引高は1兆320億7100万円に達しており、企業によるビットコイン(BTC)を含む暗号資産の保有も拡大しています。特にデジタルサービスやゲーム開発を手がける企業が暗号資産を保有する例が増え、円安や資金調達の手段としての活用が目立ちます。2024年5月時点で国内の上場企業の31社が暗号資産を保有しており、3年前の16社から倍増しています。
本稿では日本国内を中心に、ビットコインおよび暗号資産を保有する企業について解説し、ビットコインの保有状況がどのように変化するのかについても考察します。
国内企業のビットコインおよび暗号資産保有状況
暗号資産の自動損益計算サービスを展開するpafinのデータと日本経済新聞社の独自調査によれば、国内の上場企業による暗号資産の保有が拡大しており、2024年5月時点でその数は31社に達しています。これは3年前の16社から倍増しており、特にデジタルサービスやゲーム開発を手掛ける企業が際立っています。ビットコインをはじめとする暗号資産の保有目的には、円安のリスク回避や資金調達手段としての利用が増加しているのが特徴です。市場はピーク時の8割程度にまで回復しており、これが企業の暗号資産保有増加の背景にあります。
両社の調査によれば、企業の保有目的の1つは資産価値を見込んだ投資です。メタバース関連企業のメタプラネットは、10月15日に106.976BTCを追加購入し、購入総額は10億円に達しました。今回の追加購入により、メタプラネットのビットコイン保有量は855.478BTCに増加し、累計購入総額は79億6500万円に上ります。1BTCあたりの平均購入価格は931万61円となっています。この背景には円安の影響があり、同社CFOは以下のように説明しています:
円の価値下落を回避するためにビットコインを保有することで、インフレへの対策になる。将来的にはビットコインがバランスシートの大半を占めるようにしていく
王生貴久最高財務責任者(CFO):メタプラネット
また、ネクソンも2021年に、資産価値を保護する目的で1億ドル相当のビットコインを購入していました。
関連記事:ソニーとメタプラネット、円安警戒の中、暗号資産に目を向ける
日本企業の暗号資産保有ランキング
以下のランキングはpafinと日本経済新聞社の独自調査にメタプラネットの購入総額を組み込んだものになります。このランキングではビットコインを含む暗号資産を保有する企業の暗号資産評価損益をランキング形式で示しています。
企業名 | 企業概要 | 暗号資産評価損益 |
---|---|---|
メタプラネット | 投資・メタバース関連 | 不明(※購入総額は79億6500万円 ) ビットコインのパフォーマンスは+1% |
gumi | スマホゲーム開発 | 5.9億円 |
グリー | 交流サイト運営 | 2.7億円 |
Eストアー | 企業の自社EC総合支援 | 1.3億円 |
トリプルアイズ | AI関連サービス | 0.2億円 |
ガーラ | オンラインゲーム開発 | 0.2億円 |
アクセルマーク | 携帯コンテンツ | 0.1億円 |
シンクワイズ | オークション運営 | 0.1億円 |
ユナイテッド | 携帯広告通信、ベンチャー投資 | 0.1億円 |
グローバルウェイ | 転職・就職の口コミサイト | 168万円 |
モバイルファクトリー | スマホゲーム開発 | 86万円 |
ネクストーン | 音楽の著作権管理 | 63万円 |
ティー・エル・イー | キャン開発マーケティング | 54万円 |
IGS | 人材開発クラウド | 4万円 |
Link-Uグループ | サーバーの開発・運用 | ▲480万円 |
ギグワークス | IT支援サービス | ▲581万円 |
コムシード | スマホ向けゲームアプリ | ▲0.1億円 |
リミックスポイント | 法人向け電力小売り | ▲0.2億円 |
アクアライン | 水回りサービス | ▲0.7億円 |
アカツキ | スマホゲームの開発・運営 | ▲1.1億円 |
きちりHD | 高級居酒屋運営 | ▲1.3億円 |
ネクソン | オンラインゲーム開発 | 不明 |
スクエニHD | ゲーム大手、ドラゴンクエスト他 | 不明 |
コロプラ | スマホ向けゲーム | 不明 |
エイベックス | 音楽・ソフト大手 | 不明 |
SBIグローバルAM | 投信商品評価 | 不明 |
ホットリンク | マーケティング支援 | 不明 |
第一商品 | 商品先物大手 | 不明 |
アルファグループ | 販売代理店支援 | 不明 |
ネクスグループ | 無線通信機器開発 | 不明 |
メリルリンチ日本証券 | 金融情報サービス | 不明 |
※▲はマイナスの評価損益となります。
日本国内の暗号資産保有率
本稿執筆時点で日本で暗号資産を保有している人の割合は約4%と推定されています。これは、日本の総人口に対する割合であり、世界的に見ると低い数字と言えるでしょう。暗号資産を保有しているユーザーの内訳を見ると、以下のような特徴があります。
- 20代: 1,204,522 口座
- 30代: 2,180,928 口座
- 40代: 1,873,317 口座
- 50代: 1,031,654 口座
- 60代: 355,462 口座
- 70代: 96,082 口座
データーを参照すると、日本では30代と40代の保有者が多いことがわかります。さらに、男性が68.13%、女性が17.28%と、男性の割合が圧倒的に多いことが特徴です。
世界のビットコイン保有企業状況
ビットコインは全世界で1976万BTCが流通しており、2024年8月時点で、RIVERのデータによれば企業は68万3332BTCを保有し、これは全ビットコイン供給量の3.3%に相当します。この数は2020年6月から587%増加しています。さらに、公開されていないデータでは、非公開企業の保有量が公開企業を上回っており、企業が公開する義務がないため、実際の保有量はさらに多い可能性があります。
公開企業の中では、マイクロストラテジーが25万2220BTCを保有しており、これは全供給量の約1.2%を占めています。同社は資本調達を行い、それをビットコイン購入に充てる戦略を採用し、他の企業もこの戦略を模倣し始めています。また、ロビンフッドは14万4657BTCを保有し、ビットコインを積極的に蓄積する企業の一つです。その他、マラソン・デジタルが2万BTC、テスラが9720BTCを保有しており、これら企業がビットコインを保有する動きは今後も注目されています。
非公開企業の保有量では、Block.oneが16万4000 BTC、Mt.Goxが14万1686BTCを保有と続き、世界最大の非公開保有企業となっています。さらに、ブラックロックやJPモルガンもETFを通じた保有者であり、ビットコインの継続的な保有を明かしています。
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ETF・ファンド発行企業の保有状況
本稿執筆時点でビットコインETFの総運用資産(AUM)は512億3,000万ドルに上っています。さらにETF関連の企業によるビットコインの保有数は総供給量のうち5.25%を占めています。なお、各国政府の合計BTC保有量は全体の12.1%を占めます。
以下が本稿執筆時点での各ETF発行企業の保有状況になります:
- iShares Bitcoin Trust: 37万0,846 BTC
- Grayscale Bitcoin Trust: 21万9,480 BTC
- Fidelity Wise Origin Bitcoin Trust: 18万0,067 BTC
- Bitwise Bitcoin ETF: 4万1,074 BTC
- VanEck Bitcoin Trust: 1万1,488 BTC
- 21Shares Bitcoin ETP: 1万789 BTC
- Bitwise 10 Crypto Index Fund: 1万748 BTC
- WisdomTree Physical Bitcoin: 9,164 BTC
- CoinShares Valkyrie Bitcoin Fund: 8,933 BTC
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ビットコイン保有企業の未来
ビットコインの企業採用率は予測が難しいものの、RIVERは2026年初頭までの累積保有量について3つのシナリオを予測しています。
- 最低予測:マイクロストラテジー、テザー、コインベース、スクエアがビットコインを取得し続ける戦略を維持すると仮定し、これら4社は1日あたり204BTCを購入する見込み。2024年上半期のペースより37%低下するが、安定的に購入が続く
- 中間予測:2024年上半期に企業は合計6万4886BTCを購入しており、これは1日あたり356BTCの購入ペース。このペースが2026年まで続くと予測
- 上限予測:楽観的なシナリオでは、米国企業の10%が現金の1.5%(103.5億ドル)をビットコインに変換すると仮定。これにより1日あたり315BTCが購入され、これを最低予測と合わせて1日あたり519BTCの購入となる
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まとめ:ビットコインの認知拡大により、さらなる企業保有率が高まる可能性大
暗号資産の保有は、国内外の企業にとって資産管理やリスクヘッジの重要な手段となっており、特に円安や市場の不確実性を背景に、ビットコインを含む暗号資産の保有が急速に増加しています。国内企業の間でも、メタプラネットやネクソンをはじめ、多くの企業がビットコインに資産を移行しつつあり、その傾向は今後も続く見通しです。企業が暗号資産を保有する動きは、今後も市場の変動や規制の影響を受けながらも、重要な戦略として位置付けられるでしょう。
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