2024年における中央銀行デジタル通貨(CBDC)の動向は、各国の金融政策や技術革新の進展を鮮明に反映しています。デジタル経済が急速に発展する中、CBDCは国際的な注目を集め、各国の中央銀行が競って研究・実装を進めています。本記事では、日本をはじめとする世界各国のCBDCの最新状況を詳しく比較し、それぞれの国がどのようにデジタル通貨を導入・運用しているかを多角的に解説します。各国の政策背景や技術的課題、経済的影響についても深掘りし、CBDCの未来を展望します。
CBDCとは?
CBDC(中央銀行デジタル通貨)は、各国の中央銀行が発行するデジタル形式の法定通貨です。法定通貨とは、国家が法律で定めた通貨であり、円やドルなどが含まれます。CBDCは中央銀行の債務として発行され、その価値は国家によって保証されているため、価格変動が起きにくいという特徴があります。これにより、CBDCは現金や銀行預金とは異なる新しい形態の電子マネーと考えられます。2024年には、134か国がCBDCを探索中であり、これらは世界のGDPの98%を占めています。
暗号資産トラッキングサイト「コインゲッコー」の2023年の調査によれば、各国のCBDCの開発スピードに関しては、発展途上経済が先進経済よりも速い進展を見せています。バハマ、ジャマイカ、ナイジェリアは、それぞれ2020年、2021年、2022年に完全なCBDCをローンチした最初の国です。世界で最初のCBDCは、2020年10月に立ち上げられたバハマの「Sand Dollar」でした。ウルグアイは、2017年にCBDCの大規模な試験を最初に行った国であり、中国は2014年にCBDC研究を開始した最初のG20国です。
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2024年のCBDC導入状況:日本の最新取り組み
日本銀行は4月22日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)のパイロット実験の進捗状況を公表しました。報告書によると、2024年3月までに実験用システムの構築と検証が行われ、中央システムやエンドポイントデバイスを含む広範囲なテストが実施されました。特に、台帳管理の分担方式とプライバシー保護の工夫に重点が置かれています。
2023年4月以降、日本銀行は実験用システムの構築と機能検証に取り組んでおり、民間事業者の技術や知見を取り入れつつ、システム性能の検証と未実装機能の机上検討を進めています。また、プライバシー保護にも配慮されており、顧客管理部分とCBDC台帳部分の分離が計画されています。個人情報の管理と決済情報の処理が別々に行われることで、利用者のデータ保護が図られています。さらに、システムの性能や事務量に関しても、実社会での導入を見据えた高負荷対応が目指されています。
日本銀行が設立した、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の設計、導入、および運用に関する議論や情報交換を行うためのプラットフォームであるCBDCフォーラムでは、異なるテーマに特化した5つのワーキンググループが設置され、以下のテーマに関して活発な議論が行われています:
- CBDCシステムと外部インフラの接続(WG1)
- 追加サービスとCBDCエコシステムの設計(WG2)
- KYCとユーザー認証・認可の標準化(WG3)
- 新技術の探求(WG4)
- ユーザーデバイスとUI/UXの改善(WG5)
日銀は今後、2024年内に実験をさらに進展させ、さまざまな市場環境でCBDCの機能試験を行う計画です。24年4月以降、日本銀行およびWG2参加者の有志メンバーは、CBDCの追加サービスを念頭に置いてクラウド上に共同で実験環境を用意し、
送金、払出、受入などの様々なAPIの構築を行っています。
さらに、日本政府と日銀は1月に「CBDCに関する関係府省庁・日本銀行連絡会議 中間整理」を公表し、初の連絡会議を財務省内で開催しました。重要な論点としては、偽造防止措置や犯罪収益の押収方法の検討が挙げられました。この会議は、財務省理財局長を議長とし、内閣府、警察庁、金融庁など関連する府省庁の幹部と日銀の理事が参加しています。
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また、24年4月8日、植田和男総裁は、衆議院決算行政監視委員会で「自国の決済システムの安全性を確保することが重要」と述べ、導入時期については明言を避けました。また、3月5日には、フィンテックの最新動向を議論する都内のイベントで、「個人や企業など幅広い主体が利用することを念頭に置いたCBDCの導入の是非は、国民的な議論を経て決まるべき」と述べています。
国際的な観点
日本銀行は他国のCBDC導入状況を注視しており、特に中国やヨーロッパの動向に注目しています。これにより、グローバルなベストプラクティスを取り入れながら、国内でのCBDC導入を進める方針です。また、国際決済銀行(BIS)との協力により、クロスボーダー決済におけるCBDCの利用可能性についても検討が進められています。
アメリカのCBDC戦略と今後の展望
アメリカ合衆国では、連邦準備制度(FRB)が2024年2月にCBDCに関する新たな研究報告書を発表しました。この報告書では、CBDCが国際的な支払いシステムおよび米ドルの役割に与える影響について詳細に分析されています。報告書によれば、CBDCの導入は支払いの効率化や金融包摂の促進に寄与する一方で、プライバシー保護やサイバーセキュリティに関する懸念も存在します。また、政治的な議論も進展に影響を与えており、2024年の大統領選挙に向けていくつかの候補者がCBDC開発に対して反対の意見を表明しています。
ドナルド・トランプ前大統領はインタビューで、CBDCを「非常に危険」と批判しています。彼は、この技術が個人の自由やプライバシーを脅かすものと見なしています。また、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長に対しても批判を加え、続投を否定する意向を明らかにしました。同氏は、暗号資産の保有やNFTプロジェクトの運営など暗号資産へ積極的に参入する一方で、デジタルドルが個人の銀行口座から資金が消えるシナリオを引き起こす可能性があると警告しています。さらに2023年5月に実施された世論調査では、CBDCを支持すると回答した米国人は16%とどまる結果となりました。
ヨーロッパ連合のデジタルユーロ計画の現状と課題
ヨーロッパ中央銀行(ECB)は、2024年6月にデジタルユーロの設計に関する新たな文書を発表しました。同文書では、デジタルユーロの技術的な特徴と、ユーロシステムにおける役割について詳述されています。デジタルユーロは、オフラインでの利用や高いプライバシー保護、即時決済の機能を備えており、2025年の導入を目指して準備が進められています。ECBは、デジタルユーロが既存の金融システムとどのように統合されるかを評価し、金融の安定性を維持するための措置を講じています。
中国のデジタル人民元:先駆的な取り組みとその影響
中国は、世界で最も進んだCBDCプロジェクトであるデジタル人民元(e-CNY)の導入を進めています。2022年2月には試験運用が拡大され、北京と上海を含む17の都市に展開されました。e-CNYは、交通機関、医療サービス、エネルギー取引など幅広い用途で利用されており、中国の金融システム全体の監視と制御を強化するための重要なツールとなっています。また、国際間取引の効率化を目指し、m-CBDC Bridgeプロジェクトなどのクロスボーダー決済の試験も進められています。
アジア諸国のCBDC導入状況と経済的影響
アジアでは、中国に加えて、韓国やシンガポールなどもCBDCの研究と試験運用を進めています。これらの国々は、デジタル通貨が経済に与える影響を評価し、国際間取引の効率化や金融包摂の促進を目指しています。インドでは、2023年にリライアンスリテールがデジタルルピーのパイロットプログラムを開始し、CBDCのオフライン機能のテストを進めています。
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新興市場におけるCBDCの役割と可能性
ブラジル、ロシア、インド、南アフリカなどの新興市場では、CBDCの研究と試験運用が進行中です。これらの国々は、国内支払いシステムの効率化と金融包摂の促進を目指しており、いくつかの国はクロスボーダー取引におけるCBDCの利用を検討しています。例えば、ブラジル中央銀行は、2024年にCBDCの正式導入を目指しており、複数の金融機関と連携してパイロットプログラムを実施しています。
CBDCの技術的課題とセキュリティ対策:各国のアプローチ
CBDCの導入に際しては、サイバーセキュリティのリスクやプライバシー保護、規制フレームワークの整備など、多くの技術的課題があります。各国はこれらの課題に対処するために、慎重な設計と厳格なセキュリティ対策を講じています。例えば、アメリカでは、ボストン連銀とMITのプロジェクト「ハミルトン」によって、安全で競争力のある支払いシステムの開発が進められています。
さらにCBDCの導入は、伝統的な金融システムとの共存が求められます。各国は、CBDCが銀行システムに過度な影響を与えないようにするための設計と運用を行っています。例えば、ヨーロッパでは、デジタルユーロが既存の銀行システムとどのように統合されるかを評価し、金融の安定性を維持するための措置を講じています。
まとめ
CBDCは、銀行口座を持たない人々へのアクセスを提供し、金融包摂を促進する可能性があります。しかし、同時にサイバーセキュリティのリスクやプライバシー保護の課題も存在します。各国は、これらの課題に対処するための対策を講じ、CBDCの導入によるメリットを最大限に引き出す努力を続ける必要があります。
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