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AIエージェントのメリットとデメリット

20分
投稿者 Shota Oba
編集 Shigeki Mori

ヘッドライン

  • AIエージェントは取引自動化で2025年初頭に関連暗号資産の時価総額が9.6%上昇。取引最適化や手数料削減が市場効率を向上させています
  • 取引自動化、資産管理、DeFi統合などで活躍。AI駆動ウォレットは投資戦略の最適化とユーザー体験の向上に貢献しています
  • 透明性の欠如やセキュリティリスクが課題。信頼性向上や規制整備が今後の成長を左右します

AIエージェントは、自律的な意思決定と取引の自動化によって暗号資産市場の効率化を加速させています。

2025年初頭、AIエージェント関連の暗号資産は時価総額が9.6%上昇し、他セクターを上回る成長を記録しました。メリットとしては、取引ルートの最適化、手数料の削減、リスク管理の強化などが挙げられ、ユーザー体験の向上に寄与しています。一方で、ブラックボックス化による透明性の欠如や、システム依存によるセキュリティリスクといった課題も浮き彫りになっています。

本稿では、AIエージェントがなぜこれほど市場で注目されているのか、そのメリットとデメリットを詳しく解説します。

AIエージェントが市場で注目される理由

AIエージェントの最大の特徴は「ほぼ完全な自律性」にあります。この特性により、人間の介入を最小限に抑えながら複雑なタスクを効率的に遂行することが可能です。市場の注目を集める一因となったメタ社のマーク・ザッカーバーグCEOは、AIエージェントの未来について次のように予測しています:

数億、あるいは数十億のAIエージェントが存在する世界が訪れるでしょう。最終的には人間の数を超えるかもしれません

マーク・ザッカーバーグCEOメタ社

この発言は、AIエージェントがいかに広範囲な影響を与える可能性を秘めているかを示唆しています。また、2024年初頭には、AIエージェント関連の暗号資産の時価総額が9.6%上昇しており、他のセクターを大きく上回っています。さらに、ベンチャーキャピタルであるドラゴンフライの創設者ハシーブ・クレシ氏は次のように述べています:

関連記事:Nvidia CEO、AIエージェントを数兆ドル産業と予測

AI駆動のウォレットは、ブリッジングの自動化、取引ルートの最適化、手数料の最小化によってユーザー体験を変革するでしょう。暗号資産とAIが交差する場所の一つはUX(ユーザーエクスペリエンス)です。ポストAIウォレットは、ブリッジングを管理し、取引ルートを最適化し、手数料を最小化し、相互運用性の問題やフロントエンドのバグを解決し、明らかな詐欺やラグプルを避けることができるはずです

ハシーブ・クレシ氏|ドラゴンフライ

クレシ氏はまた、AIエージェントがソフトウェアコストを削減し、プロジェクトの立ち上げを容易にすることで、新たな技術革新を促進すると予想しています。一方で、安全性や信頼性といった課題が依然として残ることも指摘されています。

またビットコインETFの発行体でもある資産運用会社のフランクリン・テンプルトンはAIエージェントの盛り上がりを将来性を見据えた価値のある動きであると報告書で位置付けています:

AIエージェントがSNSでのコンテンツ生成を革命化し、さまざまな産業やプラットフォームで重要な役割を果たす未来を想像できます。これらのエージェントはまだ完全に自律的ではなく、現状ではほとんど実用性がありませんが、この新興セクターは大きな可能性を秘めており、進化し成熟する過程を注意深く見守る価値があります。

フランクリン・テンプルトン

従来、AIエージェントは商品リコメンドや情報検索で活用されていましたが、決済の段階では人間の手が必要でした。しかし、ウォレットを持つAIエージェントの登場により、対応可能なタスクが大幅に広がり、新たなユースケースの創出が期待されています。この流れを受け、a16zやCoinbaseといった企業が積極的に取り組みを進めています。

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AIエージェント関連の暗号資産のメリット

暗号資産におけるAIエージェントの役割AIエージェントは暗号資産分野で多岐にわたる活用方法を持っています。

カテゴリ機能詳細
暗号資産におけるAIエージェントの役割取引の自動化と効率化– リアルタイムで市場データを分析し、迅速な取引を自動化
– 24時間稼働のスマートトレーディングで短期的な市場変動にも対応
リスク管理とポートフォリオ最適化– ポートフォリオの脆弱性を評価し、資産配分をリアルタイムで調整
– 流動性供給やレンディング戦略を活用し、利回りの最大化を図る
ウォレット管理と決済の自動化– トランザクション承認やマイクロペイメントを自律的に処理し、初心者でも簡単に利用可能なインターフェースを提供
NFTの生成と進化– インタラクティブなNFT(iNFT)を開発し、ユーザーとの対話を通じて価値向上を実現
DeFAI(分散型金融 + AI)マルチチェーン対応とシームレスな運用– ビットコイン、イーサリアム、ソラナなど複数のブロックチェーンに対応し、クロスチェーン資産管理を実現
直感的なインターフェース設計– ワンクリック取引や自動運用設定など、DeFi初心者でも簡単に操作できるUI/UXを提供
AI主導のパーソナライズド金融サービス個別最適化された投資戦略の提案– ユーザーごとの取引履歴や資産状況を分析し、最適な投資戦略を提案
– 過去のデータを基にした個別の投資方針を構築
リアルタイムでのポートフォリオ調整– 市場の変動に応じた迅速なポートフォリオ再調整により、リスクを最小化しつつ収益機会を最大化
AIとスマートコントラクトの連携AIエージェントによる市場分析と取引執行– オンチェーンおよびオフチェーンデータを基に、市場分析、取引執行、リスク管理を自動化
スマートコントラクトによる自動決済と資産管理– 事前に定義されたルールに基づき、安全で効率的な資産管理と取引処理を実現
オフチェーンデータ分析とオラクルの活用– 経済指標やソーシャルメディアのデータ分析を通じて市場動向を把握し、ブロックチェーンオラクルを介して外部データを安全に供給

実際、AIエージェントは新たな成長市場で圧倒的な存在感を示しています。CoinGeckoの年間報告書によると、24年10月にGOATがローンチされたことをきっかけに、AIエージェントとミームコインの強みが融合し、この分野全体が急速に拡大しました。

AIエージェントの市場価値と2024年を通じた日次取引量 出典: CoinGecko

特にAIエージェントの市場価値は第4四半期に322.2%もの成長を遂げ、155億ドルに達しました。また、暗号資産取引所OKXが率いる投資企業OKX Venturesは2025年の報告書において、AIエージェントへの注力を鮮明に打ち出しました。この報告書では、AIエージェントが「市場で徐々に不可欠な存在になる」と述べられており、2030年までにその市場規模が1.8兆ドルに達する可能性が示唆されています。

同社は、今後最も注目すべき進展として、エージェント間の相互作用の深化とユーザーインターフェースの改善を予測しています。OKXはAIエージェントにおける興味深いトレンドを捉えつつも、報告書全体では推測よりも具体的なデータに重点を置いています。

また、BeInCryptoとのインタビューでジェフ・レン氏は、エージェント間の相互作用とそれに伴うリスクについて重要な見解を示しました。同氏は、規制と並行して分散型コミュニティの関与が重要な保護手段になると強調しています。

AIエージェントがDeFiの風景を再構築する中で、市場の整合性を保護しつつ、その可能性を引き出すために、強固なセキュリティとガバナンスの枠組みを開発することが重要です。操作を防ぎ、公平性を確保するために、強固なサイバーセキュリティ防御の開発に重点を置くべきです

ジェフ・レンパートナー|OKX Ventures

関連記事:OKX Ventures、2025年AIエージェントの強気を予測

さらに暗号資産アナリストのHitesh.ethは、このDeFAI市場が今後数カ月で10倍に拡大すると予想しています。また、時価総額が100億ドルに達する見込みがあるとも指摘しています。

高度なAIツールを活用してユーザー体験を簡素化し、意思決定を効率化することで、DeFAIは参入障壁を下げ、真に自律的でユーザーフレンドリーな金融インタラクションを可能にすることを目指していますダニエル

関連記事:DeFAIが2025年の大きな話題になる理由=専門家

AIエージェント関連暗号資産のデメリット

暗号資産市場の発展とともに、AIエージェントは次世代のブロックチェーンソリューションとして注目されています。しかし、その普及にはいくつかの重要な課題が存在します。

課題詳細
市場の不安定化リスク– 高頻度取引によるフラッシュクラッシュの可能性
– システム依存によるアルゴリズムのバグや障害で重大な損失リスク
透明性の欠如– AIの意思決定プロセスがブラックボックス化し、取引の根拠が不透明
– 市場参加者がAI取引ロジックを理解できず、信頼性が低下する可能性
規制の遅れ– 技術進化に対して法整備が追いつかず、不正利用やハッキングのリスクが増加
– 国際取引における法的枠組みの未整備
市場の公平性への影響– 高度なAI技術を持つ投資家と個人投資家の間で情報格差が拡大
– 大口投資家が有利な状況となり、市場の健全性が損なわれる可能性
ブロックチェーンとの統合の難しさ– イーサリアムやソラナなどのネットワークは独自のプロトコルがあり、AIエージェントの統合には高度な技術が必要
– 異なるネットワーク間のスムーズな連携が困難で、運用が複雑化
データの信頼性と正確性– オラクルの不正確性により外部データ取得時に誤差や信頼性低下が発生
– スマートコントラクトのバグがAIエージェントの意思決定に悪影響を与える可能性
セキュリティリスク– AIエージェントがサイバー攻撃の標的となる可能性、特にスマートコントラクトの脆弱性を突いた攻撃が増加中
– プライベートキーの盗難による不正アクセスや資産流出のリスク
スケーラビリティの制約– ネットワーク混雑によるトランザクション処理の遅延が発生し、迅速な意思決定に支障
– 高額なガス料金によりトランザクションコストが増大
規制の不確実性– 暗号資産やAI関連の規制が頻繁に変更されることで、自律型エージェントの法的責任が曖昧になる可能性
– 規制の不確実性が事業運営のリスク要因に
倫理的な懸念– 自律型AIエージェントの取引結果に対する責任の所在が不明確
– 市場操作とみなされる行為が意図せず発生する可能性や市場不安定化のリスク

このほかにもAIエージェントが関連している暗号資産へのリスクの懸念も指摘されています。

AIエージェントトークンの99%は詐欺であり、AIエージェントのラッパー(外装)は過去のトレンドよりもタチが悪い。ミームコインはなんの有用性もないが、AIコインは本物のように装い、無防備な買い手をだます手口を使うことになるでしょう

ZachXBT

この批判は、暗号資産コメンテーターのジャスティン・テイラー氏がAIエージェントそのものにトークンが必要であるのかを疑問視した投稿に対するもので、同氏は、AIエージェント市場の過熱が、過去に見られたトークンを多用したWeb3ゲームのトレンドと似ているとし、トークンがマーケティング目的で使われ、投資家に損害を与えたケースが多いとしています。

実際、Phut Cryptoの調査によると、2025年1月2日から14日にかけて立ち上げられたAIエージェントの約90%が失敗したと推定されています。さらに、AIエージェント関連トークンに投資したトレーダーの約75%が損失を被っており、これらのトークンの平均寿命はわずか17日という結果が示されています。

今後の解決策

これらの課題を克服するために、以下の取り組みが求められます。

  • データ品質の向上: 信頼できるデータを提供するオラクルの改善
  • セキュリティの強化: ハッキング対策や脆弱性の解消
  • 規制の整備: 国際的な基準の構築
  • 技術と設計の改善: ユーザーに優しいUI/UXの提供

これらのアプローチを通じて、AIエージェントは暗号資産市場でより広く活用される可能性を持つかもしれません。

関連記事:ブロックチェーンオラクル入門編

AIエージェントを理解して投資に反映しよう

AIエージェントは、暗号資産市場において取引の最適化、手数料削減、リスク管理の強化といった明確なメリットを提供する一方で、透明性の欠如やセキュリティリスクといった課題も抱えています。

2025年初頭には、AIエージェント関連の暗号資産が時価総額9.6%増加という顕著な成長を示しましたが、これは単なるトレンドではなく、技術革新が市場に与える影響の一端に過ぎません。

今後は、技術的な進化だけでなく、規制整備やセキュリティ対策が重要となり、AIエージェントの健全な成長を支えるカギとなるでしょう。

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国際関係の大学在籍中に国内ブロックチェーンメディアでのインターンを経て、2つの海外暗号資産取引所にてインターントレーニング生として従事。現在は、ジャーナリストとしてテクニカル、ファンダメンタル分析を問わずに日本暗号資産市場を中心に分析を行う。暗号資産取引は2021年より行っており、経済・社会情勢にも興味を持つ。
筆者の紹介を全文表示
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