国際送金の市場規模は2022年時点で約1.6兆ドルに達し、今後も拡大が見込まれています。しかし、従来の銀行送金システム(SWIFT)には高額な手数料や長い送金時間など多くの課題が残されています。こうした課題を解決するために注目されているのが、リップル社が提供するRippleNetと暗号資産XRPです。
本稿では、RippleNetとリップル(XRP)の特徴や従来型送金との比較、実際の導入事例、今後の課題について詳しく解説します。
リップル(XRP)とは?
リップルは、米カリフォルニア州に本社を構えるリップル社が開発した、国際送金ネットワーク「リップルネット」で使用される暗号資産です。リップルネットは現在主流のSWIFTに代わる仕組みを目指しており、高速で低コストな送金を実現しています。中央集権型であるため、運営・管理をリップル社が直接行い、高い効率を保っています。
高速で低コストな送金
リップルの取引は約3.3秒で完了し、手数料も約0.0004ドルと極めて低コストです。この性能は、信頼できる少数の検証者が取引を承認する独自のコンセンサスアルゴリズムによって支えられています。ビットコインのような大規模な計算が不要なため、高速かつ効率的に取引を処理できます。
エスクローによる供給管理
リップル社は、発行済みの1,000億XRPの55%(550億XRP)をエスクロー契約によりロックアップし、市場への供給を制御しています。この契約はXRP Ledger上に記載され、透明性が高く、市場への供給予測が容易です。当初は毎月10億XRPを55ヶ月間リリースする計画でしたが、最新の変更で2027年4月まで延長されました。: 2025年7月時点の情報によると、エスクローには約350億XRPが残っています。
ただし、リップル社がXRPを大量に保有しているため、市場価格に影響を与えるリスクがある点が課題として指摘されています。
XRP Ledgerの独自技術
リップルは一般的なブロックチェーンではなく、「XRP Ledger」という独自の分散型台帳技術を採用しています。この技術の特徴は以下の通りです。
- 高速かつ低コストな取引を可能にする仕組み
- ビットコインのPoW(プルーフ・オブ・ワーク)とは異なるコンセンサスアルゴリズム
- 信頼性の高いノード(検証者)による取引承認
XRP Ledgerはマイニングを必要とせず、エネルギー消費も大幅に抑えられています。新規取引の承認は数秒以内に行われるため、ビットコインとの大きな違いとなっています。
関連記事:リップル(XRP)とは?将来性や特徴についてわかりやすく解説
国際送金の課題とは?

国際送金とは、異なる国の間で資金を移動することを指します。従来の銀行システムでは、着金まで数日を要し、手数料も高額になる傾向があります。例えば、70年代から運用されている国際銀行間ネットワークSWIFTと呼ばれる国際銀行ネットワークを経由すると、送金完了まで1~5営業日がかかり、手数料は送金額の最大7%にも及ぶことがあります。SWIFTは銀行間のメッセージ送信ネットワークであり、実際のお金の移動は各銀行が相手国に開設する預託口座(ノストロ口座)の振替で処理されます。
国際送金の現状と課題:従来システムの問題点
近年SWIFTは「GPI」サービスで速度向上を図り、50%の取引を30分以内、96%を24時間以内に処理できるよう改善していますが、それでも国内送金のように数秒で完了するレベルには至っていません。中継銀行の営業時間やタイムゾーンの違いがネックとなり、リアルタイム送金は難しい状況です。
従来の送金では、送金人がリアルタイムで状況を追跡するのは困難でした。中継銀行で発生する手数料の総額や、実際に届く金額が事前には不明確です。SWIFTは近年、追跡コード「UETR」による送金状況確認機能を提供していますが、完全な透明性の実現には至っていません。
一方で、世界の決済市場規模は2022年時点で約1.6兆ドル(約220兆円)と推定されており、2027年には約2.2兆ドルに達すると予測されています。国際送金分野は年平均5%程度の成長を続けています。
特に銀行インフラが未整備な地域や自国通貨の信頼性が低い国では、家族への送金や資産の保全手段として、暗号資産(仮想通貨)やステーブルコインが利用されています。新興国を中心に、従来よりも安価で確実な送金手段へのニーズが高まりつつあります。
RippleNet(リップルネット)とは?
こうした課題を解決するために登場したのが、ブロックチェーンを活用した新たな国際送金ソリューション「RippleNet(リップルネット)」と、その中心的な暗号資産XRPです。RippleNetを利用すれば、国際送金は数秒で完了し、手数料も数円以下と大幅なコストダウンを実現します。
本記事では以下のポイントを解説します。
- RippleNetの仕組み(初心者向けに平易に説明)
- SWIFTを利用した従来型送金との比較
- リップル(XRP)が国際送金に強い理由
- 送金の速さ
- 圧倒的な低コスト
- 取引の透明性
- XRPが送金摩擦を軽減し、金融機関の課題を解決する具体例
RippleNetの登場により、企業間の大口送金から個人の海外送金まで、幅広い分野で効率化が期待されています。実際リップルのブラッド・ガーリングハウスCEOは、XRPレジャー(XRPL)が5年以内にSWIFTの世界的な流動性の14%を獲得する可能性があると予測しています。
SWIFT送金の基本的な流れ

国際送金で広く使われるSWIFTは、世界中の銀行が参加する金融メッセージネットワークです。SWIFT自体は資金を直接移動する仕組みではなく、銀行間で送金指示の電文(メッセージ)を安全にやり取りするための通信網です。
SWIFTを用いた送金プロセスは以下のようになります。
- 送金元銀行が、送金額・通貨・受取人の情報を記載したSWIFT電文を作成。
- 電文を受け取った**中継銀行(コルレス銀行)**が次の銀行へ送金を転送。その際、手数料を差し引きます。
- 最終的な受取銀行が中継銀行から資金を受け取り、受取人の口座へ入金します。
例えば、米国から日本への送金は次の手順を踏みます。
- 米国の送金元銀行が、自行の米ドル口座から提携中継銀行の口座へ送金。
- 米国の中継銀行が日本の中継銀行と連絡し、資金を円へ為替交換(為替スプレッドが発生)。
- 日本側の中継銀行が資金を受取銀行の預託口座へ振り込み。
- 受取銀行が預託口座から資金を受取人の口座に入金。
関連記事:XRPとSWIFTが提携か
XRPを用いた送金(ODL)の仕組み
RippleNet上でXRPを活用した送金システムである「ODL(オンデマンド流動性供給)」は、非常にシンプルです。従来の中継銀行を経由する方法に代わり、XRPをブリッジ通貨としてリアルタイムで資金を交換します。
ODL送金プロセスの概要
- 送金元金融機関が送金額を自国通貨からXRPに変換します。
- 変換したXRPを数秒以内に送金先国の提携先(金融機関または交換所)へ送付します。
- 受取側金融機関が受け取ったXRPを即座に現地通貨に両替し、受取人に入金します。
この仕組みによって、送金先での事前資金(ノストロ口座)が不要になり、送金時間は数日から数秒に短縮されます。手数料も劇的に削減され、取引の透明性も大幅に向上します。
RippleNetと従来送金(SWIFT)の比較
XRPを用いたRippleNet送金は、SWIFTを利用した従来型送金に比べ、スピード・コスト・透明性のすべてにおいて優れています。具体的な比較を見てみましょう。
送金スピードの比較
- SWIFT(従来型):平均36~96時間(約1.5~4日)
- RippleNet(XRP):平均数秒~10秒以内
例えば、1,000万ユーロを送金したテストでは、RippleNetで約6秒、SWIFTで約30時間を要しました。高額送金でもRippleNetの速さは圧倒的です。
手数料・コストの比較
- SWIFT(従来型):
- 銀行手数料+為替スプレッドで送金額の平均7%、地域によっては10%以上
- 中継銀行による追加コストも発生
- RippleNet(XRP):
- XRP Ledger取引手数料は約0.0002ドル(ほぼゼロに近い)
- 送金額に応じても0.3%程度
- Ripple社によると、国際送金全体のコストを最大42%削減可能
実際の試算では、RippleNetを導入する企業全体で年間約550億円のコスト削減効果が報告されています。
透明性・追跡性の比較
- SWIFT(従来型):
- 中継銀行の手数料や為替スプレッドが不透明で、事前把握が困難
- RippleNet(XRP):
- 送金前に双方が為替レートや手数料を合意
- XRP Ledger上のトランザクションは公開台帳でリアルタイム追跡可能
- 取引が改ざんされるリスクも極めて低い
流動性と資金効率の比較
- SWIFT(従来型):
- 各銀行が世界中に外貨資金を事前にプール(ノストロ口座が必要)
- 資金繰りコストが高く非効率的
- RippleNet(XRP):
- ブリッジ通貨としてXRPを利用するため、外貨の事前プールが不要
- 銀行の流動性維持コストを約65%削減可能
- 為替スプレッドが縮小され、市場競争原理が働きやすい
ケーススタディ:日本から米国への送金比較
項目 | 従来のSWIFT送金 | RippleNet(ODL)送金 |
---|---|---|
送金額 | 10万円 | 10万円 |
中継銀行手数料 | 数千円 | 数十円程度 |
為替スプレッド | 数千円(数%) | 事前合意済みで最小 |
実際の受取額 | 約9万2千円(7~8千円減) | 約10万円(ほぼ全額) |
送金時間 | 数日 | 数秒 |
従来の国際送金(SWIFT)とRippleNet(XRPを活用したODL)を比較し、それぞれの特徴を明確に整理しました。
観点 | 従来送金(SWIFT) | RippleNet(ODL+XRP) |
---|---|---|
送金速度 | 数日~1週間程度 改善版(SWIFT gpi)でも半日~1日 銀行営業時間や時差の影響あり | 数秒~数分で完了(XRP台帳上で約3~5秒) 24時間365日リアルタイム |
手数料・コスト | 送金額の数%~十数%(平均6.6%) 中継銀行ごとに手数料が発生 隠れコストあり | ごく僅かな手数料(約0.0002ドル) 為替スプレッドも最小化 送金コストを最大60%削減可能 |
透明性・追跡性 | 着金までの経路や手数料が不透明 (SWIFT gpiで進捗確認は可能だが限定的) | エンドツーエンドで追跡可能 事前に手数料や為替レートを明確化 リアルタイムの送金状況確認可能 |
資本効率 | 各国に事前資金(ノストロ口座)が必要 資金拘束が大きく非効率的 | 事前資金不要(送金ごとにXRPで即時調達) 資金繰り効率が大幅に向上 |
近年SWIFTもGPI導入やリアルタイム送金網との連携を進め改善を図っていますが、従来型ネットワーク特有の課題(事前資金、営業時間、システムの複雑さ)は依然として残っています。一方でRippleNetは、ブロックチェーン技術とXRPを活用することで、こうした旧来の制約を根本から解消している点が大きな強みです。
RippleNetとXRPの実利用例:導入事例と提携金融機関

革新的なRippleNetとXRPですが、実際どの程度活用されているのでしょうか。Ripple社は2023年時点で「世界300以上の金融機関がRippleの決済インフラを利用している」と報告しています。特に送金ニーズが高い地域の事例を紹介します。
アジア太平洋地域の事例

日本~タイ間送金(SBI Remit×サイアム商業銀行)
日本のSBI Remit(SBIホールディングス傘下)がRippleNetを導入。タイのサイアム商業銀行(SCB)と提携し、在日タイ人約4万7千人が即座に日本円からタイバーツへの送金を実現しました。これにより送金が数秒以内に完了し、利便性と速度が飛躍的に向上しました。
2021年にSBI Remitは日本初のXRPを利用した送金サービスを開始。その後2023年にはフィリピン・ベトナム・インドネシアへの送金サービスも拡大。Ripple社が出資するマレーシアのTranglo社と連携し、東南アジア全域へ展開中です。
フィリピン送金(UnionBank・China Bank)
- UnionBankはフィリピン初の暗号資産認可銀行で、RippleNet・ODLを活用。
- China Bankはカタール国立銀行(QNB)とRippleNet経由で提携し、中継銀行を省略して送金コスト・時間を大幅削減しました。
インド亜大陸送金(Yes Bank・Axis Bank)
インドのYes BankとAxis BankがRippleNet・ODLを採用。ブラジル・メキシコ・東南アジア間で即時送金を提供しています。
東南アジア全域(Tranglo社)
マレーシアのTranglo社がRippleNetを導入後、年間取扱額は約10億ドルに急増(前年比1,729%増)。東南アジアのODL送金が急速に普及しています。
ラテンアメリカ地域の事例

ブラジル(Travelex銀行)
ブラジルのTravelex銀行が南米初のODL利用銀行となり、事前資金不要の即時決済を実現。RippleNet利用で海外口座へのプレファンディングを避け、大幅な効率化を達成しました。
メキシコ送金(Bitso)
Ripple社はメキシコのBitsoと提携し、米国-メキシコ間ODL送金を展開。導入後、送金コストを約60%削減しました。
その他南米地域
コロンビアやペルーでもRippleNet採用が始まり、アルゼンチンやチリでは通貨不安に対する安定した送金インフラとして注目されています。
中東・アフリカ地域の事例

中東(UAE・カタール等)
- UAEのLuLu Exchangeがアジア向け送金をRippleNetで効率化。
- UAEのZand Bankや送金アプリMamoもRippleNetを採用。
- カタール国立銀行(QNB)はフィリピン向け送金にRippleNetを活用しています。
アフリカ地域
ナイジェリア・ケニア・エジプトなどでRippleNet導入が進行中。エジプト最大手のNational Bank of EgyptがUAEとの送金ルートを構築しています。
RippleNetとXRPによる国際送金は世界各地で実用段階に入り、多くの地域金融機関・フィンテック企業が積極的に採用しています。一部大手銀行は慎重ですが、特に規制環境が整備された地域では効果が顕著です。XRPは投機対象から「クロスボーダー送金インフラ」としての実用的価値を明確に示し始めています。
RippleNetがもたらす今後の展望と課題

RippleNetとXRPは国際送金の高速化・低コスト化を実現する強力なソリューションですが、今後の普及にはいくつかのポイントがあります。
規制環境の進展
- Ripple社は2023年、米国証券取引委員会(SEC)との訴訟でXRPが証券ではないとの判断を勝ち取った。
- 米国での利用がしやすくなったが、国ごとに暗号資産への慎重な姿勢が残る。
- 各国で明確な規制整備が進むかがRippleNet拡大の鍵。
競合技術との共存
- SWIFTもISO20022への対応などで高速化を進めている。
- 各国中央銀行のCBDC(中央銀行デジタル通貨)も国際送金への影響力を強めている。
- ステーブルコインや他の送金ソリューション(例:Stellar)も競合となる。
- RippleNetが競争優位を維持するには、相互運用性を高めつつネットワーク参加機関を増やし流動性を確保する必要がある。
- Ripple社はISO20022標準への準拠やCBDC実験(ブータン、パラオ)など新技術との融合に積極的。
大手金融機関の参加動向
- 現在、RippleNetは地域銀行や送金業者中心だが、米欧の大手銀行が参加すればネットワーク効果が飛躍的に拡大する。
- バンク・オブ・アメリカ(BoA)など米国メガバンクとの提携が注目される。
- 伝統的な銀行間ネットワークからのシフトが加速する可能性がある。
Ripple社の事業拡大
- Ripple社自身も事業拡大を進めており、米英でデジタル資産カストディサービスを展開。
- 機関投資家向けサービスも拡充中。
- 2024年末には独自ステーブルコインRLUSDを発行し、XRPと補完的に利用。
- 為替リスクを抑え、トレード金融や証券決済など新領域への展開が期待される。
技術的ハードルの克服
- 企業や銀行にとってシステム統合や社員教育などの運用面が課題となる。
- Ripple社はAPIを通じて既存システムとの統合を簡素化。
- SBI RemitはRippleNet導入を3ヶ月で完了した。
- 技術的障壁の低下が普及を後押ししている。
まとめ:RippleNetが描く国際送金の未来

RippleNetとXRPの活用は、従来型の国際送金が抱える課題を根本的に解消する可能性を秘めています。高速かつ低コスト、透明性の高い送金を実現することで、金融機関だけでなく、個人の生活にも大きなインパクトを与えるでしょう。規制の整備や大手銀行の参入など課題は残りますが、RippleNetが送金市場のスタンダードになる日は近づいていると言えます。
よくある質問
XRPはリップル社が管理する中央集権的な仕組みで高速・低コストの送金に特化しています。一方、ビットコインは分散型で管理主体がなく、主に価値保存の手段として利用されています。
通常、RippleNetを使った送金は約3~5秒で完了します。従来のSWIFT送金(数日間)と比較すると圧倒的な速さです。
RippleNetを使う場合、手数料は1回の送金につき数円以下と非常に低額で、従来のSWIFT送金の数千円~数万円の手数料と比べて劇的に安価です。
はい。RippleNetでの送金は公開台帳(XRP Ledger)上でリアルタイムに追跡可能であり、不正や改ざんのリスクは極めて低い仕組みとなっています。
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