上場投資信託(ETF)の登場は、暗号資産市場の成熟における重要な一歩を示しています。これまでの注目は主にビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のETFに集まっていましたが、現在ではその関心がソラナ(SOL)など他の資産にも広がりつつあります。
本稿では、新たに注目される投資手段であるソラナETFの基本を解説します。申請を行っている主要プレイヤー、ソラナETFの仕組み、そしてリスクと期待されるメリットまでを幅広くカバーします。
主なポイント
- ソラナETFは、現物型と先物型の両方が用意されており、投資家の多様なニーズに応じて、規制された形でソラナに投資できる手段を提供します。
- VanEckや21Sharesといった大手資産運用会社がソラナETFの申請をリードしており、機関投資家による関心の高まりを示しています。
- グローバルに展開されるソラナETFへの投資は、市場のボラティリティや規制面の課題といったリスクを伴う一方で、ステーキング報酬へのエクスポージャーなど、他にはない利点も提供します。
SOL(ソラナ)ETFとは?その仕組みを解説
ソラナETFとは、証券取引所で取引される一般的な投資信託の一種であり、SOL(ソラナ)の価格動向に連動するよう設計されています。これにより、個人投資家や機関投資家は、規制の枠組みの中でソラナへのエクスポージャーを得ることが可能となります。このETFという仕組みを活用することで、デジタル資産であるソラナへの投資が、よりシンプルかつ信頼性の高い方法で提供されるのが特徴です。
また注目すべき点として、ソラナETFは「ハウィーテスト(Howey Test)」における4つの要件すべてを満たしているとされており、これがSEC(米証券取引委員会)の規制対象となる証券としての位置付けを裏付ける要因となっています。
取引の仕組み:ソラナETFの流通構造
ソラナETFは、トロント証券取引所(TSX)などの伝統的な株式市場で売買される金融商品です。
投資家は証券会社の口座を通じてETFの売買が可能で、取引価格は市場の需給に応じて取引時間中リアルタイムで変動します。
このため、暗号資産そのものを直接売買するよりも高い流動性が確保されており、投資家にとって売買の柔軟性が高いのが特徴です。
ソラナETFの仕組み:新規発行と償還のプロセス
ソラナETFの運用は、透明性・流動性・規制対応を確保するために、厳密に定義されたステップに沿って実施されます。
以下に、新規発行(Creation)と償還(Redemption)の流れをそれぞれ説明します。
【新規発行(Creation)】
- 開始:認定参加者(AP:Authorized Participants)による発行手続き開始
ETFの新規発行は、通常、認定された大手金融機関が主導します。 - バスケット預託:ソラナをカストディアンに送付
APは、ETFの保管機関(カストディアン)にソラナを移転します。
カストディアンは、ETFの裏付け資産を安全に保管する役割を担います。 - ETFシェアの発行:ETFプロバイダーが新規シェアを発行
預託されたソラナに対し、ETFプロバイダーは新たなETFシェアをAPに発行します。 - 市場への導入:証券取引所での流通開始
発行されたETFシェアは、市場に上場され、トロント証券取引所(TSX)や、規制が認められればニューヨーク証券取引所(NYSE)などでも取引が可能となります。
【償還(Redemption)】
- 償還申請:APによるETFシェアの償還リクエスト
APが保有するETFシェアを償還する場合、ETFプロバイダーに対して償還請求を行います。 - ETFシェアの返却:市場からのシェア除去
APはETFシェアをプロバイダーに返却し、市場流通からこれらのシェアが取り除かれます。 - 資産の返還:保管資産としてのソラナがAPへ送付
対応するソラナが、カストディアンからAPへと返還されます。 - 決済完了:ソラナの移転をもって償還プロセスが完了
これにより、ETFと裏付け資産のバランスが保たれた形で償還が完了します。
この新規発行および償還の仕組みは、ETFの価格が基礎資産であるソラナの純資産価値(NAV)に近い水準で維持されるよう機能しています。
その理由は、市場の需給状況に応じて、認定参加者(AP)がETFシェアを新たに発行または償還できる柔軟性が確保されているためです。
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ソラナETFの種類
ビットコインやイーサリアムのETFと同様に、ソラナETFにも複数のタイプが存在します。
- ソラナ現物ETF(Spot ETF)
ソラナの価格動向に連動する、従来型のETFです。実際のSOL(ソラナ)を保有する形で運用されます。 - ソラナ先物ETF(Futures ETF)
SOLの現物ではなく、ソラナの先物契約に投資する形式のETFです。規制当局の承認を得やすい傾向にあるとされています。
ソラナETF・ETNに関与する主要プレーヤー
現在、ETFまたはETNの形でソラナへのエクスポージャーを提供している主要企業は以下の通りです:
3iQ Digital Asset Management(カナダ)
- 商品名: QSOL(ETF)
- 取引所: トロント証券取引所(TSX)
- 概要: 北米初のソラナETF。ソラナの価格に連動し、ステーキング報酬も得られる仕組み。
VanEck(ドイツ)
- 商品名: VanEck Solana ETN(VSOL)
- 取引所: ドイツ取引所(Deutsche Börse)
- 概要: ソラナ現物を担保とする物理的裏付け型のETN。担保付き債務証券(CDO)構造。年間総経費率(TER)は1.50%。

WisdomTree(ジャージー)
- 商品名: WisdomTree Physical Solana(SOLW)(ETN)
- 取引所: Euronext Paris、XETRA、SIX Swiss Exchangeなど欧州主要市場
- 概要: ソラナを現物で裏付けとするETN。TERは年率0.50%。長期投資向け。
21Shares(スイス)
- 商品名: 21Shares Solana Staking ETP(ASOL)
- 取引所: SIX Swiss Exchange
- 概要: ソラナの価格に連動しつつ、ステーキング報酬も得られるETP。ユーザーがステーキングを管理する必要はない。年間TERは2.50%。

これだけではありません。現在、複数の資産運用会社がソラナETFの申請を米証券取引委員会(SEC)に提出しており、今後の承認プロセスが注目されています。
VanEck
- 申請名: VanEck Solana ETF
- 概要: VanEckは「VanEck Solana Trust」としてS-1申請書をSECに提出済み。
米国初のソラナETFの実現を目指しています。
21Shares
- 申請名: 21Shares Core Solana ETF
- 概要: VanEckの動きに続き、「21Shares Core Solana ETF」の名称で申請を提出
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GrayscaleのソラナETFとは?
Grayscaleが提供するソラナETFに関する主な情報は以下の通りです。
- 商品構造: プライベート・トラスト(またはファンド型ETF)
- ティッカー: GSOL
- 取引市場: OTCマーケット(店頭市場)
- 概要: ソラナ(SOL)の現物を直接購入・保管することなく、価格変動へのエクスポージャーを提供
- 規制状況: 1940年投資会社法の適用を受けておらず、ETFと異なりSECの承認を必要としない
- 対象投資家: 当初は適格投資家向けに提供され、その後はセカンダリーマーケットでの取引が可能

現在、Grayscale以外にも、取引が開始されている、あるいは規制当局による承認待ちとなっている類似の金融商品がいくつか存在します。代表的なものは以下の通りです。
Bitwise Asset Management
- 商品名: Bitwise 10 Crypto Index Fund(BITW)
- 商品形態: ソラナを含む複数の暗号資産に分散投資できるプライベート・トラスト型ファンド
Osprey Funds
- 商品名: Osprey Solana Trust(OSOL)
- 商品形態: ソラナへのエクスポージャーを提供するプライベート・トラスト。現在はOTCQXマーケットで取引中
VanEck
- 申請名: VanEck Solana Trust(SECの承認待ち)
- 商品形態: 将来的にはETFとしての提供を想定しているものの、現時点ではトラスト形式で申請されている
以上が、現時点で展開または申請されているソラナ関連のETF・ETNの全体像です。
2024年8月7日、ブラジル証券取引委員会(CVM)は、世界で初めてソラナの現物型ETFを正式に承認しました。このソラナETFは、QRアセット・マネジメントが開発、Vortixが運用を担っており、CME CFソラナ・ドル基準レート(CME CF Solana Dollar Reference Rate)に連動する設計です。これにより、ソラナの価格は標準化され、信頼性の高い指標に基づいて算出されます。なお、本ETFは規制上の承認は取得済みであるものの、**ブラジルの主要証券取引所B3による最終承認を待つ「プレオペレーション段階」**にあります。
ソラナETFの主なメリット
ソラナETFへの投資には、以下のような利点があります。
- コストの抑制
- ウォレット設定、取引所の手数料、管理費などの負担が軽減され、総保有コストが比較的低いのも特徴です。
- 分散投資の実現
- 暗号資産市場におけるリスクを抑える手段として、ETFによる分散投資が可能です。
- 高い流動性
- 従来の暗号資産と異なり、証券取引所でリアルタイムに売買できるため、ポジションの出入りが容易です。
- 規制下での取引
- 規制された商品として提供されることで、投資家保護や透明性が担保されます。
- 一部ETF/ETNではステーキング報酬も付与
- ソラナのネットワーク特性を活かし、ステーキングによる収益を享受できる商品も存在します。
- アクセス性の向上
- ウォレットの開設や鍵管理といった煩雑な手続きなしで、ソラナへの投資が可能です。
ソラナETF誕生までの背景
ソラナは以前から注目されてきたブロックチェーンプロジェクトですが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。
特に2022年末のFTX破綻による連鎖的な影響の際には、ソラナは一時的に消滅寸前まで追い込まれ、SOL価格も一桁台にまで下落。
当時、多くの批判的な論調がソラナの終焉を予測しましたが、同プロジェクトはその危機を乗り越え、今日のETF議論へとつながる基盤を築いてきました。
ソラナは、元Qualcommのエンジニアであるアナトリー・ヤコヴェンコ氏(Anatoly Yakovenko)によって2017年に創設され、
その後、2020年3月にメインネットを正式にローンチしました。
数々の困難がありながらも、ソラナのコアチームはプロジェクトを維持し続けました。2023年から2024年にかけて、SOL価格の上昇とTVL(Total Value Locked:総預かり資産)の拡大を通じて、ネットワークの実用性に対する市場の信頼は大きく回復しました。この回復は価格面だけでなく、実際の採用状況や市場認識の改善にも支えられたものです。

現時点でソラナETFは米国証券取引委員会(SEC)の正式承認を受けていません。しかし、トロント証券取引所やドイツ取引所(Deutsche Börse)など国際市場での上場が進む中で、ETF化に向けた期待は高まり続けています。以下は、ソラナETFの注目度を押し上げている主な要因です。
- 技術的優位性とミームコイン市場の活況
高速・低コストの取引を可能にするソラナの特性は、ミームコインの発行・取引との親和性が高く、独自のエコシステム形成を後押ししています。 - 機関投資家の関心の高まり
たとえば、カナダの3iQが展開するソラナETFは、そうした機関投資家ニーズの具体的な現れとも言えます。 - ポジティブな価格予測
著名アナリストらの間では、近い将来SOLが500ドルを突破する可能性も示唆されており、これがETF需要の下支えとなっています。 - 大手企業との戦略的提携
Circleとの提携により、ソラナのエコシステムに2億5000万ドル相当のUSDCが導入され、流動性が飛躍的に向上。これは機関レベルの信頼感の証左でもあります。 - エコシステムの継続的拡張
ソラナ上では、現在400以上のプロジェクトが活発に稼働しており、ネットワーク全体の成長を支えています。
関連記事:仮想通貨Sui(SUI)とソラナ(SOL)はどっちが優れている?
こうした複合的な要因が、ソラナETFをめぐるポジティブな市場機運を生み出しています。
2024年6月下旬には、ソラナETFの初となる正式な申請が提出されており、市場関係者の間では「ETH ETFに続いて、ソラナETFも9月に登場する可能性が高い」との見方も広がっています。
市場の上昇を見るのが本当に嬉しい。ETH ETFが間もなく登場し、ソラナETFもその直後に続くだろう。9月に備えよう
— @TheCryptoLark|XThe standard approval process for Solana ETFs: BeInCrypto ソラナETFに伴うリスク
ソラナETFも例外ではなく、一定のリスクを伴います。特に重要なリスク要因として、以下が挙げられます。
- 競争リスク
- 他のブロックチェーン系ETFとの競争による相対的魅力の低下。
- 規制リスク
- 仮想通貨市場に対する各国の政策や世論の変化による影響。
- 市場のボラティリティ
- ソラナの現物・先物価格の変動がETFに直接反映される可能性。
- 技術的リスク
- ネットワーク停止やアップグレード失敗などのテクニカルな問題。
- 流動性リスク
- 市場参加者が限られる場合、売買の自由度が制限される可能性。
- カストディリスク
- 資産保管を担う管理者(カストディアン)がハッキング等の被害を受けるリスク。
ソラナETFとイーサリアムETFの比較
特徴 ソラナETF イーサリアムETF 主な目的 ソラナ(SOL)の価格変動およびステーキング収益の追跡 イーサリアム(ETH)の価格と、将来的なステーキング収益へのエクスポージャー 規制状況 一部はSEC申請中。Grayscaleのようにプライベートトラスト形式も存在 一部はすでにSEC承認済。新規ETFも承認待ち 市場での採用状況 高速処理・ミームコイン・DeFi関連で注目度が急上昇 スマートコントラクトやDeFi分野で広く普及 裏付け資産 ソラナ現物または先物契約 イーサリアム現物または先物契約 パフォーマンス要因 高スループット・低手数料が魅力 Ethereum 2.0によるスケーラビリティ改善が進行中 リスク要因 市場変動、規制、技術的リスク 市場変動、規制、移行リスク(ETH 2.0) 投資家層 技術革新に興味のある積極的な投資家向け 成熟したブロックチェーンの安定性を重視する投資家向け ※本比較はあくまでETFに関する相違点に焦点を当てており、ブロックチェーンとしてのソラナとイーサリアムの全体比較ではありません。
ソラナ現物ETFと先物ETFの違い
現物ETFと先物ETFは混同されやすいですが、以下の表にそれぞれの違いをまとめました。
特徴 ソラナ現物ETF ソラナ先物ETF 裏付け資産 ソラナ(SOL)の実物保有 ソラナを対象とした先物契約 価格連動性 実際のソラナ価格を追跡 将来の価格(先物価格)に連動 エクスポージャー ソラナの現物市場への直接的な投資 将来的な価格変動への投資機会を提供 投資戦略 長期保有を前提とした資産運用に適する 短期取引や投機目的の投資家向け ボラティリティ 実物保有により相対的に低い 先物・レバレッジの影響で高くなりがち 主なリスク 市場変動、規制、保管リスク 市場変動、規制、ロールオーバーやレバレッジリスク 流動性 実資産に基づくため高い傾向 先物市場の状況に依存するため変動あり コスト構造 実物保有により比較的低コスト 先物契約の更新・ロールオーバーによる追加コストあり ソラナETF vs. ビットコインETF
ソラナETFとビットコインETFには、いくつか明確な違いがあります。まず、ビットコインETFは米国で初めて承認された暗号資産ETFであり、市場における知名度と信頼性が高い点が特徴です。一方で、ソラナETFは一部商品にステーキング機能を組み込んでおり、ビットコインETFにはない収益機会を提供しています。
また、投資家層にも違いが見られます。ソラナETFは、革新的な技術や急成長中のエコシステムに関心のある投資家に適しているのに対し、ビットコインETFは、資産の安定性や分散投資の一環としての利用を重視する投資家に好まれる傾向があります。とはいえ、両ETFとも、伝統的な金融市場の投資家にとって暗号資産へのアクセス手段として設計されている点は共通しています。
なお、ブラックロックはビットコイン現物ETFを展開している一方で、ソラナETF分野への参入にも意欲を示しています。
同社は、暗号資産市場におけるプレゼンスを拡大すべく、ソラナを含む新たな投資商品に取り組む姿勢を見せています。ソラナETFの今後の展望とは?
ソラナETFの将来は、2024年11月の米大統領選挙の行方に大きく左右されると見られています。しかし、本稿で紹介した通り、VanEck、21Shares、BlackRockといった主要プレイヤーがすでにETF申請を行っている、または申請を予定していることから、現物型ソラナETFの承認も決して遠い未来の話ではないと期待されています。なお、現物ETFの審査プロセスには最大240日(約8か月)を要する可能性があり、SEC(米証券取引委員会)の判断には一定の時間を要することが想定されています。
ETFであれ現物であれ、すべての投資にはリスクが伴います。仮にソラナETFが承認された場合でも、ETFを通じて投資するのか、それともSOLそのものを購入するのか、自身の投資スタイルに応じた選択が求められます。どのような手段を取るにせよ、包括的なリスク管理戦略を持つことが不可欠です。そして何より、生活に支障をきたすリスクのある資金での投資は絶対に避けるべきであるという基本を忘れてはなりません。
※本記事は情報提供のみを目的としており、金融または投資に関する助言を行うものではありません。投資判断にあたっては、必ずご自身で十分な調査を行うか、専門家にご相談の上でご判断ください。
よくある質問
ソラナETFとは?
ソラナETFは他のETFとどう違うのか?
ソラナETFに投資するメリットは?
ソラナETFにリスクはあるのか?
ソラナETFはXRP ETFより先に登場するのか?
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