2024年9月12日、OpenAIは新たなAIモデルシリーズ「OpenAI o1」を発表しました。AI業界において急速な技術進化が進むなか、OpenAI o1は特に複雑な推論タスクに強みを発揮する次世代のAIモデルとして注目を集めています。本記事では、OpenAI o1と従来のGPT-4oとの違いや、それぞれの特徴、o1の活用方法について解説します。
OpenAI o1とは
OpenAI o1は、これまでのGPTシリーズとは異なる構造を持つ新しいAIモデルで、複雑な問題解決と論理的思考力の向上を目的に開発されました。強化学習を通じて訓練されたこの大規模言語モデルは、応答する前に深く考えるプロセスを経て、長い内部思考の連鎖を形成してからユーザーに答えることが可能です。特に数学、科学、プログラミングといった分野で、人間の専門家レベルに匹敵するパフォーマンスを発揮します。
たとえば、全米数学オリンピック予選(AIME)で上位500位相当の成績を収めるなど、その能力の高さは既に実証されています。o1の登場により、研究支援、教育、ビジネス分析といった多岐にわたる分野で、新たな価値が生まれることが期待されています。
人間「OpenAI o1、正直微妙じゃね?」
— tanu (@tanukiponkich) September 15, 2024
o1「IQが20違うと会話が成立しない」 pic.twitter.com/Fd8KwtkeSo
また、OpenAI o1 previewは、AIモデルの中で非常に高いIQを示しており、平均IQが120を超えています。これは、一般的な人間のIQ(平均100)を大幅に上回り、上位10%の知能レベルに相当します。他のAIモデルや人間と比べても、特に複雑な推論や高度な問題解決能力において際立った性能を発揮しています。
OpenAI o1とo1-miniの2つのモデル
- o1-preview: 難解な推論タスクに特化した、科学、数学、プログラミング分野で強力なパフォーマンスを発揮するモデル。
- o1-mini: o1-previewよりも高速かつ低コストで、推論タスクに必要な計算リソースを削減することに最適化されたモデル。
OpenAI o1の特徴
- 複雑な推論タスクに特化
数学やプログラミング、物理学など、推論が重要なタスクにおいて、GPT-4oを大きく上回る性能を発揮します。 - 内部的な推論過程を観察可能
推論トークンを使用して、内部的な思考プロセスがAI内部で発生しており、従来のモデルでは確認できなかったAIの思考プロセスが、一部観察可能となりました。 - 全米数学オリンピック予選で上位500位の実力
o1はAIMEで93%の正答率を記録し、人間の優れた数学者と同等以上の実力を示しています。 - プログラミング世界大会で金メダルレベルの実力
o1は国際情報学オリンピック(IOI)において、上位10%に相当する金メダルレベルの成績を達成しています。 - 物理・生物・化学の問題で人間の博士レベルを超える精度
GPQA(Graduate-level Physical and Quantitative Assessment)では、物理学において94.2%という正答率を記録しました。 - 安全性の向上
o1は、新たな安全性学習手法を導入し、AIが意図的に誤用される可能性を減らしています。ジェイルブレイクテストではGPT-4oが100点中22点だったのに対し、o1-previewモデルは84点を獲得し、より高い安全性を実現しています。
なおOpenAI o1を使用するには、ChatGPTの有料プランであるChatGPT Plus(月額30ドル)やChatGPT Teamに加入することが求められます。
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- ジェイルブレイクテスト: AIが不適切なリクエストに応答するかを確認し、安全性を評価するテストで、o1-previewはGPT-4oよりも高い抵抗力を示す。
- 推論トークン: o1モデルが複雑な問題を解決するために内部的に追加で消費するリソースで、推論の精度と深さを向上させるために使用される。
- AIME: アメリカ数学オリンピックの予選試験で、数学的な問題解決力を評価するテスト。o1モデルはAIMEで高い正答率を記録し、上位500名の学生と同等の数学力を示している。
- GPQA: 物理学、化学、生物学の博士レベルの問題を集めたテストで、o1モデルはこれらの専門分野で高い正答率を達成し、人間の専門家を上回る性能を発揮している。
GPT-4oとの主な違い
精度の高さ
OpenAIの検証結果によると、国際数学オリンピック予選試験(上記画像左グラフ)でGPT-4oはわずか13%の正答率だったのに対し、OpenAI o1は83%の正答率を達成しました。また、o1はCodeforces(上記画像中グラフ)の競技プログラミングで89%のスコアを獲得しており、コーディングや数学の分野でも大幅に向上しています。さらに、テストの結果、このモデルは物理学、化学、生物学の難解なベンチマークタスクにおいて、博士課程の学生と同等の成果を達成しています。
一方でo1は、GPT-4oと比較して、推論が重要な分野で優れている一方、言語処理を重視する分野ではGPT-4oが好まれるという結果が出ています。特に、数学や科学技術などのSTEMタスクに強みを発揮する一方で、幅広い言語タスクではGPT-4oが依然として優勢です。この結果は、o1シリーズの用途を決定する際に重要で、複雑な推論が必要な場面での利用が最適です。
機能の違い
OpenAI o1は現在のところ、Web閲覧やファイル・画像のアップロード機能を備えていませんが、今後これらの機能が追加される予定です。GPT-4oは画像入力やファイルアップロードなどの一般的な機能に対応しているため、日常的な使用では引き続き優れた選択肢です。一方、o1は複雑な問題に特化した高度な推論力を必要とする場面で活躍します。
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o1-previewとo1-miniの違い
o1-previewとo1-miniの違いは、パフォーマンス、コスト効率、そして最適化にあります。両モデルともにSTEM(科学、技術、工学、数学)分野の推論タスクに強みを持っていますが、o1-miniは特にコスト効率を追求したモデルです。例えば、Codeforcesというプログラミング競技でo1-miniは1650のEloスコアを達成し、これはo1-previewの1258やGPT-4oの900を上回る結果です。また、HumanEvalテストでは、o1-miniとo1-previewの両方が92.4%の正確性を示しました。
一方、サイバーセキュリティCTF(Capture the Flag)の課題では、o1-previewが43.0%の正答率で、o1-miniの28.7%を上回る結果となりました。o1-miniはSTEM領域に特化しており、コストはo1-previewよりも80%安価で、より高速な応答が可能です。しかし、世界知識が必要なタスクにおいては、o1-previewに劣る場合があります。以下に両モデルの比較表を提供します:
特性 | o1-preview | o1-mini |
---|---|---|
1. 目的と最適化 | 高度な推論能力を必要とする複雑なタスク、特に科学、技術、コーディング、数学など幅広い分野での問題解決に最適化。 | STEM(科学、技術、工学、数学)分野における推論タスクに特化し、専門知識を要する場面で最適な性能を発揮。 |
2. 性能 | 幅広い知識と高度な推論能力を持ち、特に複雑な理系課題に対して優れた処理能力を発揮。 | STEM分野に特化したタスクで優れたパフォーマンスを発揮し、o1-previewに匹敵する場合もあるが、STEM以外の知識では劣る。 |
3. コストと効率 | 高精度な推論を行うため、処理時間が長く、コストも高いが、最も正確な結果を提供する。 | o1-previewよりもコストが80%安く、応答速度も3~5倍高速。コスト効率の高い選択肢。 |
4. トークン消費 | より深く複雑な問題を解決するため、推論トークンを多く消費し、長いプロセスを経て結論を出す。 | 短時間での推論が可能で、推論トークンの消費量が軽い。時間効率とコストを重視するタスクに適している。 |
5. 使用例 | 科学的データ解析、長期的な研究シミュレーション、ビジネスの高度な予測モデルの作成など、複雑な推論タスクに最適。 | コーディング、物理や数学の問題解決、特定のアルゴリズム設計など、広範な知識を必要としない推論タスクに最適。 |
6. アクセス | ChatGPT PlusやTeamユーザーが利用可能で、API Tier 5の開発者向けにも提供。高度な研究やプロフェッショナル向けのツールとして利用される。 | ChatGPT PlusやTeamユーザー、API Tier 5開発者が利用可能。将来的には無料ユーザーにも提供される予定。短時間で結果を必要とする実務向けのツールとして使用される。 |
OpenAI o1とGPT-4oの使い分け方
OpenAIは「o1モデルはGPT-4oに代わるものではなく、用途に応じて使い分けるべき」としています。
分野 | o1-preview | o1-mini | ChatGPT-4o |
---|---|---|---|
研究開発 | ・複雑な数理モデリング ・高度な科学シミュレーション ・専門分野に特化した分析 | ・STEM領域での高速な計算処理 ・科学技術関連の軽量タスクに最適 | ・学際的な研究のサポート ・文献レビュー ・提案書の作成 |
ビジネス応用 | ・財務モデリング ・リスク分析の最適化 ・技術的問題解決の支援 | ・短時間でのリスク評価や市場分析 ・コスト効率の高い計算処理 | ・顧客サポートの自動化 ・マーケティング戦略の策定 ・多言語対応 |
教育分野 | ・STEM分野での高度な問題解決 ・難易度の高い数学/物理のチュータリング | ・基本的な数学/科学の問題に特化した高速な解答 | ・幅広い学科の質問応答 ・エッセイのフィードバック ・語学学習の支援 |
プログラミング | ・複雑なアルゴリズムの設計 ・競技プログラミング問題の解決 | ・短時間でのコード修正やデバッグ ・簡易なコード生成 | ・幅広いプログラミング言語の理解 ・シンプルなプログラムの自動生成 |
創造的タスク | ・高度な技術ドキュメントの作成 ・科学的レポートの生成 | ・科学的エッセイやレポートの概要作成 ・プレゼンテーション資料作成支援 | ・クリエイティブな文章やコンテンツの生成 ・小説や詩の作成支援 |
セキュリティ | ・複雑なセキュリティリスクの分析 ・高度な暗号化技術の最適化 | ・簡易なセキュリティ診断 ・基本的なリスク管理 | ・一般的なセキュリティリスクの提示 ・簡易なセキュリティレポート生成 |
- o1-preview: 複雑な推論タスクや科学的問題に最適。広範な一般知識を用いるため、難しい問題を段階的に解決します。
- o1-mini: 数学やコーディング、科学分野でのタスクに特化し、より高速な応答を実現しますが、世界知識はGPT-4oに劣ります。
- GPT-4o: 画像認識や高速応答が求められるタスク、関数呼び出しなど、幅広い知識が必要な一般的なタスクに適しています。
OpenAI o1の料金とAPI利用
モデル | 入力コスト(1Mトークンあたり) | 出力コスト(1Mトークンあたり) |
---|---|---|
o1-preview | $15.00 | $60.00 |
o1-mini | $3.00 | $12.00 |
GPT-4o | $5.00 | $15.00 |
GPT-4o-mini | $0.150 | $0.600 |
o1はAPIで利用可能ですが、料金はGPT-4oに比べて高価です。特に複雑なタスクや高度な推論が必要な場合にのみ、o1の利用が推奨されます。
OpenAI o1の使い方と注意点
利用手順
- ChatGPTのサイトにアクセスし、モデル選択で「o1-preview」または「o1-mini」を選択します(有料ユーザーのみアクセス可能)。
- モデルを切り替えることで、それぞれの特徴を生かしたタスクに対応可能です。
プロンプトのコツ
- シンプルな指示で十分です。複雑な指示は逆効果になる場合があるため、シンプルに「この数式を解いてください」といった簡潔なプロンプトが最適です。
- 情報を整理し、明確に区切るために引用符や区切り記号を使用しましょう。
利用制限について
- o1-preview: 週に50メッセージまで。
- o1-mini: 1日に50メッセージまでの利用制限が適用されています。
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まとめ:OpenAI o1の本格リリースによりAIの使い分けが可能に
o1には今後、Web閲覧や画像・ファイルアップロードの機能が追加される予定です。また、GPTシリーズとの統合による新たなAIシステムの登場が期待されています。無料版のo1-miniが一般ユーザーにも提供される計画がされており、さらなる普及が見込まれています。OpenAI o1は、複雑な推論や高度な問題解決に特化したモデルであり、数学やプログラミングなどで特に強力なパフォーマンスを発揮します。GPT-4oとの使い分けを意識することで、より効果的にAIを活用できるでしょう。
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