次のスマートフォンは価格が上昇し、医療用スキャナーも同じ部品をめぐって競合する。しかしAIサーバーは両者を上回る入札を繰り広げる。いずれも同じメモリーチップを搭載し、1社がすべてに供給している。
その企業がマイクロン・テクノロジー(MU)である。3者が同じチップを争う理由は、AI向けメモリーの供給不足が市場構造を密かに変化させたためだ。
なぜ1枚のウエハーに3つの買い手がつくのか
まずAIサーバーを見てみたい。1台につき通常のコンピューターの10倍から20倍のメモリーを消費する。データセンターの規模拡大に伴い、 世界で生産されるメモリーの約70%を吸収している。
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3つのデバイスをつなぐ要因がここにある。AIが必要とする高帯域幅メモリーは、スマートフォンやスキャナーに使う一般的なDRAMと同じ生産ラインで製造されている。半導体メーカーは両者を同時にフル稼働させることはできない。
さらに悪いことに、高帯域幅向けウエハー1枚につき、標準品2枚分以上の生産能力を要する。つまりAIサーバー1台の製造ごとに、他の機器向けのメモリー供給が減る。
そのため他の分野への供給は減り続け、価格は上昇し続ける。同じ供給不足がデータセンターを潤し、スマートフォン価格を押し上げ、病院のスキャナーの納期を遅らせている。
スマートフォンがAIブームのツケを払っている
スマートフォンはデータセンターと同じメモリー群を使うため、影響をいち早く受けた。IDCによると、スマートフォンの平均販売価格は2026年に 過去最高の約523ドルに上昇、14%の値上がりを見込む。
メーカーは利益率維持のため、目に見える部分を削減している。カメラモジュールやディスプレイの仕様を下げたり、一部のベースモデルでは2020年以来の4GBメモリーに逆戻りした事例もある。
つまり、スマートフォンは値上がりし、性能もやや下がっている。その背景にはAIデータセンターの存在がある。
病院のスキャナーは簡単に待てない
医療用画像診断、ロボット、モニターなども同じDRAMやNANDを使う。マイクロンは組込事業を通じて 医療用画像診断システム向けにメモリーを供給している。
ここが最も厳しい状況だ。スマートフォン購入者は買い替えを延期できるが、病院がスキャナーを更新する場合、メモリー単体での入替は不可能。医療機器の部品は長期認証プロセスが義務付けられているためだ。
このため発注者は大規模クラウド事業者と比べ、価格交渉力はほほ皆無。発注規模が圧倒的に小さいため、より高値で購入するか、納期を待つかの二択になる。
AIサーバーがすべてを上回る入札を続ける
最優先で供給されるのがAIサーバー。高帯域幅メモリーはウエハー1枚あたりの利益が最も高い。マイクロンは世界で3社しかない供給企業の1つで、DRAM市場の約25%のシェアを持つ。出典:Counterpoint Research
2025年向け高帯域メモリーの完売は、需給タイトさの象徴だ。さらに同社はAnthropic AIとのメモリー最適化契約も締結した。
3つの需要者、そして縮小するウエハープール。すべてに供給する唯一のサプライヤーが、どの顧客が高値を提示しても価格決定権を握る。
集まる株式
こうした現状がマイクロン株の投資妙味につながる。同銘柄の投資家評価は「強い買い」となっており、カバレッジする証券アナリスト29人中28人が「買い」推奨だ。コンセンサスの目標株価は約1,569ドルで、現在の893ドルに対して約75%上回る水準となっている。
ウォール街の目標株価は大きく変動してきた。昨年9月の190ドルから、6月には2200ドルまで跳ね上がっている。TD CowenやKeyBancの直近の目標も1600ドルと高水準を維持する。
際立つのはバリュエーションである。718%の上昇を記録した年でも、マイクロン株は予想利益の約5倍という低水準で取引されている。これは、利益の伸びが株価の上昇を上回ったためである。
スマートマネーも同様の見方を取る。Nansenが追跡するハイパーリキッド無期限取引の中で、マイクロンは半導体銘柄として最大のネットロングポジションを持つ。39のウォレットに分散して約770万ドル相当となっている。
TSMCはロング・ショート比率がより高いが、ネットロング金額はマイクロンのごく一部に過ぎない。
マイクロン株下落が本質的な問題とは言えない理由
マイクロンは、同業のサンディスクが慎重な見通しを示したことを受け、木曜日の寄り付き前に約5%下落した。加えて、メモリー関連株全体が連れ安となった。ただし、この下落のフロー分析は「ラリーからの分配」と見なされている。これは天井形成ではなく、大幅上昇後の利益確定売りである。
重要なのはその文脈である。同株は年初来213%高となっている。6月高値から約26%下回る水準のため、今回の下落は調整局面であり、決定的な崩れとは言い切れない。
真のリスクは、メモリーが天井圏で価格設定されていると市場が判断することである。この懸念が最近の需給過剰への警戒につながっている。複数のアナリストが、サンディスクの決算発表から数時間以内に同業の目標株価を引き下げている。
それでも、半導体工場(ファブ)の建設には長年を要する。SKハイニックスは、供給不足が2030年以降も続く可能性を警告している。
不足が続く限り、スマートフォン、スキャナー、AIサーバーが同じ半導体チップを取り合い、マイクロンは3者全てに供給する構図が続く。競合の弱気な予測は、強気なマイクロン物語を覆さない。本当の試金石は9月29日に発表されるマイクロン自身の決算となる。









