元ゴールドマン・サックスのクレジット投資家であるKhing Oei氏は、市場がストラテジーのSTRC優先株の価格を誤っていると指摘する。同氏の試算では、その価値は約96ドルとなる。現在の取引価格は85ドル前後。
Oei氏は、ゴールドマン・サックスとヘッジファンドで25年間にわたりリスク債券の評価を担当した。最近の詳細なディスカッションで、自身のSTRC評価モデルを公開した。
ストラテジーのSTRC「利回り14%」の誤解
STRCは12%の配当を支払う。現在の割引後価格で割ると、利回りは14%を超える。この数値がよく引用されている。しかしOei氏によれば、それは誤り。
問題はここにある。この計算は、STRCが何があっても永続的に支払われることを前提としている。だがSTRCはそのような保証をしていない。満期はなく、額面100ドル(パー)を返済する義務もない。ストラテジーに支払能力がある間だけ配当を支払う。
この株は、6月のビットコイン急落時にパー値を25%下回って暴落した。このため、利回りが高く見えている。
「この経験から導き出される単純な本能は、『今年のクーポンをいまの価格で割って流れを評価してはならない』というものだ」とOei氏は自身の分析で記した。
そのため、Oei氏はSTRCを債券のように評価する。実際に支払われる現金だけを算定する。ストラテジーのダッシュボードによれば、ビットコイン(BTC)84万3775枚で540億ドル、現金30億ドルがある。まず負債と上位優先株で80億ドルが先に請求される。続いてSTRCの105億ドルとなる。
ビットコインが値上がりしなくても29年分の配当
上位請求権を差し引くと、優先株には502億ドルの裏付けが残る。配当総額は年間17億3000万ドルとなる。
ここで2つの注目点がある。ビットコイン価格が年間3.4%成長すれば、配当は永続化する。価格がこのまま横ばいでも、29年間は資金がもつ。
この29年分の支払いを12%の割引率で評価すると、STRCの価値は96.3ドルとなる。BeInCrypto編集部が計算を確認したが正当だった。
市場価格は85.29ドル。その価格では配当の期間は17年分しか反映されていない。Oei氏は、より安全とされるSTRFの利回りが10.4%にとどまることを理由に、市場の見方は悲観的すぎるとみている。
85ドルと96ドルの差は13%のミスプライシングにあたる。これは重要な意味を持つ。Oei氏の主張通りなら、買い手は14%の利回りを享受しつつ価格の上昇も見込める。一方、市場が正しければ、その割引は将来配当が止まるリスクの警告となる。
実際、Oei氏と同じ見方の投資家もいる。BitcoinTreasuriesの調査では、保有者の半数以上がパー割れ局面で買い増しを行ったという。
額面100ドルへの道筋
価格形成の多くはビットコイン相場が決める。Oei氏の試算では、ビットコインが8万ドルになればSTRCは100ドルに回復。一方、4万ドルだと58ドルまで下落する計算。
ストラテジーにも手はある。STRCは2025年7月に90ドル・9%配当で上場。その後、取締役会は利率を何度も引き上げ、現在は12%、価格をパー値に近づけている。
キャッシュも効果的。10億ドルを調達して予備資金とすれば、4ポイントほど価値が増すとOei氏は試算する。自社株買いも効果が大きい。85ドルで買い戻せば、96ドル相当の価値を得られるため5ポイント分増える。
このミスプライシング自体も、企業にとって最も割安な手段となる。現金残高の積み増しは、ある調査部門が「ビットコイン冬の転換策」と呼んだ展開に合致する。
ただし、注意点もある。Oei氏は欧州のビットコイントレジャリー運営者であり、こうした株式の信頼が高まれば恩恵を受ける側である。懐疑的な意見もなお根強い。エコノミストのピーター・シフ氏は2万ドルへの暴落を予測。他にも、ストラテジーによる640億ドル規模の賭けが失敗した場合、最終的に誰が負担するのかという疑問も出ている。
ここで問われるのは単純な疑問である。資産570億ドルを有する企業が、17億3000万ドルの配当金支払いを巡ってこれほどまでに疑念を抱かれるべきかという点だ。ビットコインの次の動向が、この問いへの答えを大きく左右する。








