暗号資産(仮想通貨)トラッキングサイトコインゲッコーは24日、レポート「中央銀行デジタル通貨(CBDC)の進展:先行国とその進捗状況」を公表した。同レポートでは世界でのCBDCの開発・進捗状況を比較している。
各国のCBDCの開発スピードに関しては、発展途上経済が先進経済よりもCBDCにおいて速い進展を見せている。Atlantic CouncilのCBDC Trackerによれば、CBDCを立ち上げ、または試験段階にある国は現在11ヶ国あり、バハマ、ジャマイカ、ナイジェリア、アンギラ、そして東カリブ通貨同盟(ECCU)が含まれるが、これらはすべて発展途上国とされている。一方で、先進経済において試験段階まで達しているのは8つの国のみであり、その中には実証段階にある国は1つもない。
バハマ、ジャマイカ、ナイジェリアは、それぞれ20年、21年、22年に完全なCBDCをローンチした最初の国。世界で最初のCBDCは、20年10月に立ち上げられたバハマのSand Dollar。ウルグアイは、17年にCBDCの大規模な試験を最初に行った国であり、中国は14年にCBDC研究を開始した最初のG20国である。ただし、両国とも現在はCBDC開発の試験段階にある。試験の後期段階にある中国では、デジタル人民元、またはe-CNYがある。中国市民は、政府のe-CNYアプリをダウンロードし、1:1の比率で人民元とe-CNYを交換で可能。6月時点で、CBDCを使った取引は1.8兆人民元に達し、昨年8月の1000億人民元から大幅に増加している。
他にも積極的にCBDCを試験している主要経済としては、韓国、日本、カナダがある。韓国の中央銀行は、年内にCBDCを一般向けに公開テストを行う予定であり、カナダのProject Jasperは、このほどシンガポールのProject Ubinと提携し、越境テストを探るとしている。EUのデジタルユーロプロジェクトもまだ初期調査段階にあり、10月までに結論を出すことを目指している。ロシア中央銀行は15日から、ロシア版CBDCとなるデジタルルーブルの試験運用を開始していた。日本銀行は小売決済でのCBDC使用を目的とした実験を進めており、エンドユーザー間の取引手続きを調べるテスト環境を作るため、7月から業務委託先の選定に取り掛かっている。
日本円CBDCが創り出す未来は?
グローバルWeb3カンファレンスWebXでSBI副島金融経済研究所研究主幹はCBDCなどのデジタル通貨の「プログラマビリティ」の重要性を強調。「プログラマビリティ」 とは通貨をプログラムで制御可能にすることである。一方でこれには二面生を含んでおり、効率性を重視しすぎると中央集権化の加速などの問題が起きるため、「お金」のデジタル化にはリスクも伴うと指摘。さらに、同氏らはステーブルコインとCBDCの区別の重要性を説き、日銀のCBDCがカバーしきれない会社間の取引や電子決済の手数料削減など、ステーブルコインが補完できる領域に存在意義があるとしていた。
ステーブルコインとCBDCの想定される使い分けに関して、日本円ステーブルコインJPYC を発行する岡部代表はBeInCryptoのインタビューに対して、「日本円のCBDCはパブリックチェーンでは実装されず、基本的にプライベートな範疇となる。対照的にJPYCは誰でも使え、店舗や一般の消費者も利用できる。特にパブリックチェーンでの利用が可能な点で、独自の価値を持つと考えている。パブリックチェーンを介しているため、世界中との接続が可能。日本のCBDCを直接ビットコインや他の仮想通貨に変換するのは難しいが、外国の資産にアクセスする際、JPYCを通じてUSDCに変換し、外国の資産に変換できる。加えて、外国の資産を日本に持ち帰りたい場合、USDCからJPYCを経由し、CBDCに戻すことができる。このように、JPYCは資産の移転を助ける役割を担う」と語った。
暗号資産関連会社も日本円CBCDに関わっており、渡辺創太氏がCEOを務めるスターテイルラボや暗号資産取引所コインチェック、ブロックチェーンの相互接続用ミドルウェア開発を行うDatachainなどは20日、日本銀行主導のCBDCフォーラムのメンバーに選出されていた。このほかにもリップル(XRP)やマスターカードなどのフィンテック企業らがCBDCの導入に向け積極的に活動している。
CBDCと暗号通貨の違いは?
CBDCは中央銀行が発行するデジタル法定通貨で、分散型台帳技術を利用して開発されることが多い。この技術は、参加者が共通の台帳を共有することを可能にするもので、ブロックチェーンがその代表例だ。暗号資産も同じ技術を用いるが、中央機関を必要とせず、コンセンサスアルゴリズムという特定のルールで合意形成を行う。
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