テザーのUSDTは、1,840億ドル規模のデジタルドルであり、初めてビットコイン上で発行されてから10年以上を経て、今月再びビットコインに戻る。新バージョンはプライバシー性の高い決済を約束し、多くの取引情報をビットコインの公開台帳に記録しない。
USDTは米ドルにペッグされた最大のステーブルコインである。ワシントンがすでに発行済みのUSDTをテザーが監督できるか問う中で、再上陸する形となった。
USDTがビットコインに戻ることで保有者に変化はあるか
現時点では、変化はない。テザーは2025年の発表で、今回の対応をビットコインでのサポート拡大と位置付けた。トロンとイーサリアム上のコインは現状維持。
「USDT on Bitcoin. It’s coming home(USDTがビットコインに復帰する)」とテザーのパオロ・アルドイノCEOが投稿した。
アルドイノCEOは2025年に、取引所とウォレット向けにプライベートな送金、BTCとUSDTのスワップ、ビットコイン担保の貸付の提供を目標に掲げた。
「ビットコインには、本当にネイティブかつ軽量で、プライバシー性・スケーラビリティを備えたステーブルコインが必要だ」と当時アルドイノCEOは述べている。
USDTはトロンやイーサリアムから撤退するのか
その兆候はない。現在、USDTの約920億ドルはトロン上にあり、流通量の約半数を占めるとDefiLlamaは示す。イーサリアム上にはさらに740億ドルが存在する。2つのネットワークで流通量の90%超を担っている。
テザーの2025年発表には、これらのネットワークからのUSDT撤退について言及はない。発表タイトルでも「ビットコインのサポート拡大」と説明されている。
ただ過去には対応ネットワークを廃止した例もある。2025年9月には、USDTが最初に発行されたビットコインベースのOmniを含む5つの旧ネットワークでサポートを終了した。
今回のローンチはUtexo社が担う。テザー主導の資金調達ラウンドで750万ドルを調達した。Utexo共同創業者のヴィクトル・イグナチウク氏は、Utexoが同コイン発行の商業ライセンスを保有することを今週明らかにした。
基盤技術はRGBであり、ビットコイン上でUSDTのようなトークンを発行できる。決済情報は送信者と受信者の間で完結し、ビットコインにはごく小さなデジタル指紋のみが残る。
トロンやイーサリアムを置き換えるのではなく、ビットコイン版はそれらを活用する。RGBプロトコル協会によれば、Utexoのブリッジ機能がネットワーク間のUSDT移動を担い、主にイーサリアムとトロンからUSDTを受け入れる。
利用者にとっては、米ドルにペッグした同一トークンである。違うのは流通するネットワークのみ。
取引所はすでにUSDT送金時にトロンやイーサリアムなどネットワークの選択を求めている。ネットワーク選択の誤りは該当資産の喪失につながる場合がある。
テザーはプライベートなUSDTを凍結できるか
凍結はテザーが批判に応える主な手法になっている。米上院議員が、イランが制裁回避にテザーのUSDTを利用していると指摘した際、テザーは5億5,000万ドルの凍結実績を示した。
トロンやイーサリアム上では、すべてのUSDT送金が公開記録に残る。調査当局が資金の流れを追跡できる。
RGB版ではその大半が不可視となる。テザーの発表では、凍結方法について具体的な説明はない。
Utexoはコンプライアンス対策として、ブロックチェーン追跡企業Crystal Intelligenceを起用したとRGBプロトコル協会が伝えている。イグナチウク氏自身はプライバシー性を過度に強調しない姿勢を示す。
「RGB…は基本的にはトークン標準で、プライバシー機能もあるが、それはあくまで副次的な特徴に過ぎない」とイグナチウク氏の言葉を引用し、RGBが伝えた。
ローンチ時期も、かつてUtexoが現実的とした9月中旬から後ろ倒しとなった。
一方、Utexoは米モルガン・スタンレーとビットコイン上USDTを協議した。ビットコインの高速決済ネットワーク「ライトニング」対応はローンチ後となる。ウォレットや取引所が対応を始めなければ、USDTビットコイン版は実際の送金先を持たない。









