日本最大級の国際Web3カンファレンス「WebX」が7月25・26日に開かれ、日本国内だけでなく世界各国のWeb3業界の要人が来日した。その中で、ワールドコインの開発責任者アカーシュ・サンギ氏も参加。BeInCryptoJapanは、世界最大の暗号資産取引所バイナンスに24日に上場され、その動向に注目を集めているワールドコインの開発責任者、アカーシュ・サンギ氏に独占インタビューを行った。
ChatGPT開発企業オープンAIのサム・アルトマンCEOが主導する暗号資産(仮想通貨)プロジェクト、WorldCoin(WLD)は24日、ローンチされ、最大暗号資産取引所バイナンスは同日、ワールドコインのネイティブトークンであるWLDを上場した。同プロジェクトの本人認証にはOrbという独自の球形の装置を使用する。Orbでは個人に固有の虹彩のパターンを認識し、ユーザーが「人間である」ことを認識することで仮想通貨WLDが分配される独自の仕組みを採用。5月にはシリーズCラウンドで下落相場では異例の1億1500万ドルの資金調達を完了していた。
Q . WorldcoinとWorld Appについて説明してください
Worldcoinは約4年前にサム・アルトマンによって立ち上げられたプロジェクトであり、彼は同社の共同創設者兼代表です。当初、彼はOpenAIで働きながら、言語モデルやAI技術の社会的普及により生まれる富をどのように分配するか、そしてインターネット上で「何がボット・AIで、何が人間なのかをどのように区別するか」という課題を考えていました。私たちが抱えている問題の一つは、「画像や写真が本物なのかAIによって生成されたものなのか」を判断することの困難であると言えます。この課題に取り組むために、プロジェクトは始まりました。
我々チームは時間をかけて研究行い、本物の人間とボットを区別するための手段として、生体認証のアイリススキャン装置、Orbsが必要という結論に至りました。
Worldcoinは基本的に3つの異なる部分、WorldID・WorldApp・WLDから成り立っています。WorldIDを登録しユーザーがOrbsで認証を行うと、トークンが発行されます。Orbsは、特定の国で利用可能で、アジアの一部の国では、ユーザーはOrbでのサインアップのインセンティブとしてWorldcoinトークンを受け取れます。ユーザーはWorldIDを取得しますが、Orbsでのサインアップ時には、我々はユーザーについての情報を一切取得しません。彼らの身元や外見については不明で、唯一知っていることは彼らが生存しており、1人1人が人間であるということだけです。
さらに、我々はノンカストディ型のEthereumウォレットであるWorld Appを作りました。これはWorldcoinプロトコルをサポートする最初の製品で、誰でも参加し、ウォレット・WorldIDを取得できます。今後はさまざまな製品やウォレットが登場しWorldcoin Foundationによって助成金やその他の手段を通じて支援されるでしょう。
WolrdCoinプロジェクトを始動するには、まずフラッグシップ体験のようなものを構築する必要がありました。そこで、私たちはWorldCoinトークンを開発し、これが24日にようやく上場、ローンチされました。このトークンは、今後数年間にこのプロトコルとアプリケーションが生み出す全てのユーティリティに対する顧客のインセンティブとなります。
現在、WorldCoinは全世界で約210万人のユーザーを有し、多くの地域で積極的に活動しています。今後数カ月から数年の間に、Orbsをさらに1,000台増やし、全体で2,000台まで成長させることを目指しています。
Q . なぜ7月24日に事前告知なしにWLDトークンローンチをしたのですか?
外部から見れば突然のことに見えるかもしれないが、内部的には違うんです。会社がすでに4年間存在していると考えれば、突然のことではないですよね?このプロジェクトには多くの努力と多くの人々が関わっています。チームは100人以上のメンバーから成り、皆がローンチに向けて日夜一生懸命に働き、全てがスムーズに進行していること我々自身が身をもって認識しています。ユーザーがトークンにアクセスでき、シームレスな顧客体験を通してOrbで登録できるようにするための仕事は、突然に成し遂げられたものではないんです。我々が静かに、大きな発表をせずにプロジェクトを進めてきたから、外部からは突然に見えるかもしれないですね。プロジェクトがローンチされた今、我々Tools for Humanityのメンバーとしての仕事は、WorldCoinのユーザー数を増やし、ハードウェアおよびソフトウェア製品を作り、認知を拡大させることとなっています。
Q .BeInCryptoは先日、WorldCoinのトークノミクスについての記事を公開しましたが、トークノミクスのプロセスについて教えてください
まずは、分割の仕組みを説明します。我々のプロジェクトの分割方法は非常にシンプルで、多くの暗号通貨プロジェクトの中でも優れたトークノミクス設計の1つです。
トークノミクスの分割は基本的には75対25で行われています。75%はコミュニティー、すなわちユーザー、コミュニティー、エコシステムのパートナー、などのために用意されています。これらは、我々がエアドロップを行う全ての人々のための分割分になります。発行されたトークンがどれほど早くロック解除されるかは、我々がどれほど迅速に人々のネットワークを認証できるかに直接関係します。それに対し、残りの25%の部分は我々がチームと投資家のエクイティと呼ぶもので、プロジェクトの資金調達のために使われます。
このプロジェクトは大規模で費用がかかるため、我々は一部の資産などを売却して資金を調達しなければなりませんでした。ハードウェア、R&D、研究など、プロジェクトには様々な経費が発生します。それらの資金は、基本的に運営資金として使用されます。
今後我々は世界中のOrbsとユーザーを増やしていきます。それによって、我々はより多くのトークン供給を得ることができ、それが長期的な運営につながるでしょう。
Q .虹彩をスキャンする本人認証方法が議論を呼んでいますが、虹彩が認識された後データは残りますか?
その認識は間違っていて、WorldcoinのIDISスキャンプロセスの仕組みについては、詳細なブログ記事やホワイトペーパーで説明しています。ここでは、ユニークなコードがどのように確認され、データの保存や削除がユーザーの同意に基づいて行われるかが詳述されています。SNSやメディアではよく、「全ての情報がいつでも公になる」と言われますが、実際はそうではないのです。
我々は、読者にブログ記事やホワイトペーパーを一読し、技術的な詳細を理解していただくことを強く推奨します。OrbではZKP(ゼロ知識証明)やその他の複数暗号技術を駆使して、完全にプライバシーが保たれ、IDISコードから個々の生体認証画像などのプライベート情報を逆算することができないようにしています。このような事実確認を自身でしていただくためにも、我々は常に人々にブログ記事を読むことを推奨しており、具体的な文献を公開しています。混乱を避けるために、これらの情報を確認してもらえればと思います。
Q .日本は暗号資産・Web3に関してアジアでも独自の市場と言えるが、日本市場をどのように捉えており、何を期待していますか?
実はこれが私自身、初めての日本訪問なんです。2カ月前、私たちはEthereum Tokyo に当社チームを派遣しました。その結果、日本の人々が暗号通貨や新たなプラットフォーム、新技術が提供する機会に興味を大きく示していることがわかりました。開発者コミュニティが非常に活発であり、様々なプロジェクトやアプリケーションの可能性について探求する意欲があることに感銘を受け、我々はローンチが行われた今週に10個のOrbsを持って日本に渡航すると決めました。
我々のウォレットアプリはオーブがまだ存在しない時点で既に多くの人々にダウンロードされ、日本では約15,000人のユーザーがWorldcoinアプリをダウンロードしています。ここ数日間の私の肌感から言って、日本は間違いなく素晴らしい市場です。先見の明を持ち、新たな経験に対する熱意があり、モチベーションが高い人々が集まっています。これらの経験から言えば、日本市場は我々にとって非常に重要なものとなるでしょう。我々は、規制承認の取得や現地チームの採用を進め、日本でのビジネスの拡大を図る方法を模索します。日本市場は世界の他の市場とは大きく異なりますので、異なるアプローチを取る必要があります。しかし、一旦そのプロセスが始まれば、日本市場はWorldcoinにとって全世界で最も興味深い市場の1つとなると確信しています。
WorldCoinの今後の動向に注目が集まる
イーサリアムの創設者であるVitalik Buterin氏を含む多くの人々が、プライバシー、アクセシビリティ、中央集権化、セキュリティなどの重要な問題点を指摘。同氏はプロトコルが実際に機能するまでには数年かかる可能性があると述べている。英国の情報委員会(ICO)も、プライバシーやセキュリティの懸念を表明し、調査を行う予定だ。ケニアでは2日、公共の安全性と金融取引の信頼性に関する懸念から、Worldcoinの運営を一時停止している。さらにWorldCoinは同日、ロイター通信に対し、Orbsによる虹彩スキャンと身元確認技術を他の組織にも利用させることを目指していると語った。
インタビュー・文:Shota Oba
写真:Shota Oba
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