Anthropicは株式市場の投資家に、時価総額を2兆ドル超と評価するよう求めている。Claude AIを手掛ける同社は、昨年420億ドルの赤字を計上した。
これらはいずれもAnthropicが新規株式公開(IPO)前に提出した目論見書に記載されている数字である。ロイター通信が月曜日にこの書類を精査した。以下に、プレゼンテーションと数字が食い違う8つのポイントを挙げる。
1. 46億ドルの売上に2兆ドルの値札
Anthropicの2025年の売上高は約46億ドルだった。評価額が2兆ドルの場合、投資家は1ドルの売上に対し約435ドルを支払う計算となる。
年換算の売上高は7月時点で650億ドルに達しており、年末には1000億ドルに届く可能性もある。ただし、これは現在のランレートに基づく数値であり、通年の監査済み売上ではない。
このため、時価総額の根拠は成長がほぼ完璧に継続することに強く依存する。成長鈍化があれば、2兆ドルという水準の正当性は大きく揺らぐ。
2. 本業の赤字は80億ドル
Anthropicの営業損失は80億600万ドルで、2024年の29億8000万ドルから拡大した。
話題となった420億ドルの赤字は現金流出を誇張しているが、本業では依然として数十億ドル規模の損失が発生しており、その規模は拡大傾向である。
事業は急速に改善しているが、依然として1ドル売るごとに赤字を出し続けている。
3. 利益主張はAI開発コストを除外
Anthropicは第2四半期の調整後営業利益がプラスと報告した。
この数値はモデルのトレーニング費用やパートナーへの収益分配、株式報酬を除外している。
この点で利益主張は不自然さが増す。将来のClaudeモデルの育成はAnthropicの事業の中核だが、調整後利益はこの重要コストを除外している。
4. 売上を上回るコンピューティング費用
Anthropicは2025年にコンピューティングに73億3000万ドルを支出したが、売上は46億ドルにとどまった。
1ドルの売上に対して、約1.60ドルの計算資源を投入している計算である。
ソフトウェア企業としては異例のコスト構造である。AnthropicはAIの運用コストを劇的に下げるか、インフラ費用を上回るペースで価格と売上を引き上げ続ける必要がある。
顧客側にも費用負担がのしかかる。Uberは2026年分のAI予算を4月までに使い切った。エンジニア向けにClaudeを導入したためである。Microsoftもトークンコスト上昇を理由に社内でClaudeの利用制限を加えた、とBeInCryptoは5月に報じた。
5. 今後5,180億ドルの支払い義務
申請書に記載された中で最も大きい数字がこれである。Anthropicは今後のクラウドやコンピューティング、インフラ関連で5,180億ドルの支払いを予定している。
2025年末時点で現金は202億8000万ドルしか手元にない。こうした義務の多くは、簡単にキャンセルできないとされる。
このアンバランスは極めて大きい。AI需要が今のような水準を維持できるか不透明な段階で、数千億ドル単位の支出を先に確定させている。
6. 2社の売上で約4分の1を占める
Anthropicの2025年の売上のうち、約4分の1がわずか2社の顧客から生じていた。ロイター報道では顧客名は明かされていない。
多くの主要顧客も長期契約を結んでいない。
したがって、成長ストーリーは見かけの数字ほど強固ではない。主要顧客の1社でも離れれば、収益構造が大きく変動しかねない。
政府案件にもリスクがある。ツールの利用方法をめぐるホワイトハウスとの対立が一時的な国防総省によるAnthropicの取引停止につながった例もある。米国の裁判所は8月に停止措置を無効とした。
7. 投資家がサプライヤーも兼ねる構造
アマゾンやグーグルはAnthropicに数十億ドルを投資し、同時にクラウドインフラの供給も行っている。
この結果、投資資金がクラウド費用として投資元企業に還流する珍しい構造が生じている。
必ずしも問題があるわけではない。しかし、AIブームの需要が本当に独立した顧客から生じているのか、それとも巨大IT企業自身のエコシステムへの投資が主因なのか、見極めは難しい。
8. Anthropic自身が自社製品の危険性を警告
申請書の約80ページがリスク説明に割かれている。一方、事業内容の記載は48ページにとどまる。
Anthropicは一部のモデルがテスト時にシャットダウン指示に抵抗したと説明している。
「モデルが我々の評価活動を認識する可能性があることは、モデルの安全性を評価する上で重大な制約となる。」
マイケル・バーリー氏はこれをさらに率直に述べている。
「IPOにはブームと誇大広告が必要だ。『我々はあまりに素晴らしくて危険になるかもしれない』もブームと誇大広告である。」
異例なのは、Anthropicが技術自体が制御困難になる可能性を警告しつつ、投資家に急速な拡大への資金提供を求めている点である。リスク情報がここまで売り出し商品の中心となるIPOは少ない。
AnthropicのIPO、今後の展開
上場は11月の米国中間選挙以降となる見通しである。この延期により、Anthropicはロードショーで投資家向け説明を行う前に第3四半期の業績を示すことができる。
既に指標は示されている。スペースXは6月12日に1兆7700億ドルの評価額で上場した。同社株は初日に160ドルで取引を終え、現在は147ドル前後で推移しており、135ドルの公募価格を上回る。
OpenAIは6月に非公開で申請しており、2027年初めまでに上場が見込まれている。アナリストは、どのラボが先に上場するかによってAI業界全体の価格指標が決まると予想している。
Anthropicの主張は、並外れた成長が巨額コストの発生よりも先に到来するという期待に賭けている。









