ビットコイン採掘者が撤退、価格への影響は

  • ビットコインのハッシュレートは過去9か月で19%低下し、過去最長の下落となった。
  • マイニング難易度は、歴史上2度目となる前年比マイナスに転じた。
  • マイナーは、AI関連契約で700億ドル超を保有し、ビットコイン向けの設備を占有している。
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ビットコイン(BTC)の30日平均ハッシュレートが2025年11月以降、19%低下した。1108EH/sから898EH/sに下落。Glassnodeのデータによれば、9か月に及ぶ減少はネットワーク史上最長となっている。

この減少は、マイナーによる過去最大規模の資本移動と重なっている。公開企業マイナーは700億ドル超のAI契約を保有しており、転用されたキャパシティが元に戻る見通しはほぼない。

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9か月続く減少、ビットコインハッシュレートの記録を更新

ビットコインの現代史において、これに匹敵する下落は2度のみで、いずれも短期間で回復していた。Glassnodeのデータによれば、今回の下落はいまだ終息していない。

期間ハッシュレート推移低下幅期間要因
2021年5月~7月165 → 95 EH/s−42%約10週間中国のマイニング禁止
2024年4月~7月626 → 578 EH/s−8%約3か月半減期後の淘汰
2025年11月~2026年8月1108 → 898 EH/s−19%約9か月、継続中マージンスクイーズとAI転換

2021年の下落は、割合で見るとさらに大きかった。しかし、米国や中央アジアへの中国製機器の移設により、6か月以内に回復した。

2024年の下落は、半減期後に非効率な機器が淘汰されたことによるもの。新型機への入れ替えが1四半期以内に進み、キャパシティは補われた。

ビットコインの平均ハッシュレート(30日移動平均) 出典:Glassnode
ビットコインの平均ハッシュレート(30日移動平均) 出典:Glassnode

今回の下落は両面で性質が異なる。絶対値では約210EH/sの減少となり、2021年初頭のネットワーク全体のハッシュレートを上回る規模。さらに、30日平均では8月に向け底打ちの兆しも見られない。

苦境による影響はすでに顕在化している。かつて世界最大のマイニングプールだったPoolinは7月下旬に連邦破産法第11章の適用を申請した。

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マイニング難易度、史上2度目のマイナス推移

今回の減少で最も警戒すべきは深さではなく、その稀有さである。

LuxorのHashrate Indexによると、ネットワーク難易度は現在、1年前より1.1%低い水準となっている。前年同月比がマイナスとなるのは2021年8月(中国の禁止措置により−21.2%)以来初めて。

ビットコインの歴史で、年間ベースでゼロ未満となった例はわずか2回。グラフの2つの赤い領域はいずれもマイナー大量流出のタイミングを示す。

ビットコインネットワーク難易度の前年同月比変化 出典:Hashrate Index
ビットコインネットワーク難易度の前年同月比変化 出典:Hashrate Index

ただし、メカニズムは大きく異なる。2021年の下落は急激かつ一時的であり、マイニング機器自体は生き残り、単に設置場所を移しただけだった。

2026年の変化は規模こそ小さいが構造的。マイナーはかつてASICを稼働させていた電力能力を、12~20年のAIホスティング契約に切り替えている。BeInCryptoは、マイニング事業がエネルギーおよびインフラビジネスへ移行しているか分析したことがある。

難易度は2025年11月のピーク(約156兆)から19.9%低下し、126.23兆となった。ASIC時代において最大級の持続的縮小幅。

人気のXアカウントBitcoinArchiveは、2017年以降、ビットコインが生産コストを下回って取引された期間はわずか10日間と指摘している。同アカウントは、電気料金を1kWhあたり0.06ドルと仮定した場合、現在の生産コストを5万4939ドルと推計。難易度調整のマイナスは、生き残るマイナーの生産コスト低下につながる。

6万4000ドル台のBTC、マイナー流出がもたらす影響

本稿執筆時点でBTCは6万4078ドル付近で推移し、過去24時間で0.9%上昇。BeInCryptoの市場データによれば、2025年10月のピークからなお約49%下落している。この急落がマイナーの大量流出を招いた。

ハッシュプライスは1ペタハッシュあたり1日30~32ドルの水準で推移し、旧型機の損益分岐点を下回る。業界推計では、全機器の15~20%が赤字運用となっている。公開マイナーは第1四半期に移行資金調達のために3万2000BTC超を売却した。

AI関連契約は、キャパシティが戻らない理由を示している。Hut 8は契約済みAIポートフォリオで266億ドル、Core Scientificは約1.1GWの電力をCoreWeaveへリース。TeraWulfはAnthropicと20年契約を結び、その規模は約190億ドル。IRENやCipher Miningも、マイクロソフトやAWSとそれぞれ97億ドル、55億ドル規模の契約を結んでいる。

AIホスティングは、マイニングの3~25倍の収益性があるとされる。そのため、価格下落をきっかけとした循環要因と、AI事業への構造的転換が同時に進む結果となった。価格下落が流出を招いたが、長期契約の存在が歴史的な回復を阻んでいる。

すべての関係者が危機を感じているわけではない。コインベースのブライアン・アームストロングCEOは、エネルギー転換によってビットコイン価格が下落するとの懸念を一蹴している。

一方でチャマス・パリハピティヤ氏は、この流れをマイナーにとって構造的な変化と指摘する。ビットワイズ・ヨーロッパのアンドレ・ドラゴシュ調査責任者は、利益率が回復すればマイナーは方針転換を後悔する可能性がある、と述べている。

短期的な注目指標はディフィカルティチャートだ。前年比の推移が秋までマイナスを維持すれば、ビットコイン・ネットワークは初の持続的なセキュリティ予算縮小を記録することになる。2027年までに新たな採掘能力がAI流出分を補うか、ビットコインは次の上昇局面を薄いハッシュパワーで迎えることになる。


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