ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官は27日、上院審議中の暗号資産関連法案によって詐欺被害者が救済手段を失うと警告した。一方、コインベースは同法案の早期成立を求めている。
ジェームズ司法長官は月曜日に上院の調査委員会へ意見書を提出した。暗号資産の規制強化を求めており、規制緩和には反対の立場。
ニューヨーク州はなぜ暗号資産監督法案に反対するのか
本法案は「デジタル資産市場明確化法」と呼ばれる。暗号資産のルール策定権限の大半を連邦商品先物取引委員会(CFTC)に移す内容。
同時に州による投資家保護法に優先適用されることとなる。この点をジェームズ司法長官は容認できないとする。
同氏の事務所は、2000万人のニューヨーク州民向けに有価証券・商品取引を監督中。この権限を奪えば、詐欺被害者から最も身近な監督官庁を奪うことになると主張する。
下院は2025年7月に法案をすでに可決。票決は294対134だった。本法案は5月に上院の主要委員会も通過している。
暗号資産詐欺による損失はどれほど深刻か
深刻で、しかも悪化傾向。証言書には4つの統計データが引用されている。
| 出典 | 2025年の損失額 | 2024年からの増加率 |
|---|---|---|
| FBIインターネット犯罪苦情センター | 114億ドル | 22%増 |
| FTCコンシューマー・センティネル・ネットワーク | 17億8000万ドル | 25.6%増 |
| TRM Labs 不正取引量推計 | 1580億ドル | 約145%増 |
| ニューヨーク州の苦情件数 | 5年間で約5億ドル | 3年間でほぼ3倍 |
FBIによれば、被害者1人あたりの平均損失は6万2604ドル。暗号資産関連の苦情は1年で21%増加した。
ジェームズ司法長官は実例も挙げている。ハイチ系教会の祈りのグループを悪用した詐欺、Facebook広告でロシア語話者を誘い、資金をベトナムに流した事案など。
暗号資産犯罪の摘発は誰が担っているか
この点こそ主張の核心であり、数値は偏っている。
米国の警察機関の99%は州・地方当局が占める。刑事事件の99.5%、逮捕件数の98.8%も州・地方が対応。
連邦当局が処理するのは約1.2%にとどまる。
一方、ワシントンは監督を後退させている。司法省は2025年4月、利用者の行動を理由にプラットフォームを訴追しない方針を通知。暗号資産の執行チームも解散した。
SECは2025年に1000件超の調査を終了し、暗号資産関連で7件の訴訟を取り下げ。これらのうち5件では裁判所がすでに違反を認定していた。
倫理規定は本当に機能するのか
最も重要な指摘は、この点にある。
本法案は、大統領や連邦高官が独自の暗号資産を発行することを禁じている。支持者らはこれを「倫理対策」と位置付けている。
しかしジェームズ司法長官が精査したところ、現職大統領は既存の暗号資産ビジネスをブラインド・トラスト(匿名信託)に移せば規制を逃れられる。また、その効力は成立から1年後に始まる。
同氏はより厳しい規定を求める考え。公職にある者は、自ら収益を得る業界を規制してはならないとし、違反時は利益の返還と1回ごとに5万ドルの罰金を科す案を提示する。
本案ではワールドリバティ・ファイナンシャルが発行するステーブルコイン「USD1」の87%はバイナンス保有とされる。同社は大統領一家が創業。フォーブスやニューヨークタイムズがこうした資産保有を報じている。
他に誰が法案に反対しているのか
民主党だけではない。全米保安官協会も一部反対へ回った。
全米保安官協会は5月13日に上院へ文書を提出。書簡では第604条に焦点を当てた。
この条文ではミキサーなどのツールを資金移動事業者規制の対象外とする。ミキサーは暗号資産の取引履歴を分散・難読化する技術。
保安官協会は暗号資産規制自体には賛成。ただし、キャサリン・コルテス・マスト上院議員が提案するより限定的な法案を望む立場。
州証券規制当局も5月に反対声明。全国組織が否決を要請した。
コインベースはなぜ迅速な採決を求めるのか
コインベースの主張は全く異なる。問題は不正ではなく中国だという立場。
ファリヤール・シルザド氏がチーフ・ポリシー・オフィサー。同氏はFoxビジネスで、次世代の金融システムは今まさに構築されつつあると語った。
最大の投資をしているのは中国だとし、「ルールを作るのはワシントンか北京か」が最大の論点とした。
シルザド氏は、この法案が銀行にもたらす効果にも期待感を示している。全体の一節で、銀行が暗号資産に関わった際に法的な不意打ちを受けないよう保護する規定が設けられている。
同氏は上院指導部と協議したと語る。最速で8月3日に採決が行われるとの見通しを示した。
ウォール街では意見が分かれている。ゴールドマン・サックスのデイビッド・ソロモンCEOは、欠点の多い法案だとしながらも支持を表明した。一方、JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは反対の立場。
今後の展開は
現時点で票数は足りていない。ジョン・スーン上院院内総務は、7月23日に必要票が不足していると述べた。そのため、同法案は8月休会前の可決は難しい情勢となっている。
論点は3つが残っている。倫理規定、セクション604の例外措置、そしてステーブルコインの利払いの仕組み。
過去の経緯は、両陣営に希望を残している。2025年にもGENIUS法案は同様に足踏みしたが、最終的に成立した。ただし、当時の法案は州による詐欺訴訟を放棄させる内容は含んでいなかった。
今後、注視すべき点は3つ。コルテス・マスト修正案の採決、1年延期措置を削除する動き、そして民主党内で最初に造反する議員。
ジェームズ氏は過去5年にわたり、暗号資産企業から資金を取り戻す活動を続けている。これまでにジェネシスを含む大手プラットフォームを摘発し、同社は20億ドルを支払った。ジェミニは顧客に5000万ドルを返金した。
現在、同氏は議会に対し、こうした権限を維持するよう求めている。








