米国でのビットコインETFの承認や暗号資産価格の高騰するなど、市場の回復に伴い暗号資産業界が再び注目を集めています。日本政府も暗号資産の規制を整備し、活用を推進する姿勢を見せています。このような状況の中、暗号資産が日本の経済に追い風となる可能性について、その期待が集まっています。
そこで本記事では、暗号資産が日本経済にどのような影響を及ぼす可能性があるのかについて解説します。暗号資産に興味がある人、日本と暗号資産の関係性について知りたい人は、ぜひ最後までご覧ください。
暗号資産の歴史
暗号資産の歴史は、2008年にサトシ・ナカモト氏が発表した論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」から始まります。この論文では、中央集権的な管理を排除した、分散型のデジタル通貨の構想が示されました。
そして、2009年1月3日に、ビットコインが誕生します。ビットコインは、サトシ・ナカモト氏によって開発された、世界初の暗号資産です。ビットコインは、ブロックチェーンと呼ばれる技術によって、分散型で安全な取引を実現しています。
ビットコインの誕生後、暗号資産の市場は急速に拡大します。2011年には、イーサリアムが誕生。イーサリアムは、スマートコントラクトと呼ばれる機能を備えた、ブロックチェーンプラットフォームです。スマートコントラクトは、契約の条件をプログラム化することで、自動的に契約を実行できる仕組みのこと。
イーサリアムおよびスマートコントラクトの誕生により、暗号資産の用途は大きく広がります。DeFi(分散型金融)、NFT(非代替性トークン)、DApps(分散型アプリケーション)などの、新しいサービスや技術が次々と登場します。
これらの技術の登場により、暗号資産は、単なる通貨としての価値だけでなく、新たな金融サービスや経済の仕組みを実現する可能性として、注目を集めました。
日本は過去、暗号資産市場で重要な役割を果たしていた
暗号資産の歴史においては、過去、日本は重要な役割を果たしてきました。
2010年には、日本初の暗号資産取引所「マウントゴックス」が設立。当時、ビットコインなどの暗号資産は、まだ一般的ではありませんでしたが、マウントゴックスは、世界最大の暗号資産取引所となり、日本から世界に暗号資産が広まりました。また、日本国内でも暗号資産への関心が高まり、暗号資産取引所の設立が相次ぎました。
しかし、2014年2月、マウントゴックスは、約85万ビットコイン(当時の価格で約460億円)が盗難される事件が発生しました。この事件は、暗号資産業界に大きな衝撃を与え、その後マウントゴックスは経営破綻し事業を停止。
マウントゴックス事件後、日本政府は、暗号資産の規制を強化しました。2017年5月には、改正資金決済法が施行され、ビットコインは決済手段として国から認められましたが、暗号資産の取引所は登録制となり、金融庁の監督を受けることとされました。
ゴックス事件は、暗号資産に対する不信感を高める結果となりましたが、暗号資産の規制を強化するキッカケとなったことも事実です。世界に先駆けて暗号通貨が普及し、また大きな事件が発生したことから、世界的にみても法整備や暗号通貨規制が進んでいるといわれています。
日本で暗号資産が浸透しないとされる理由
日本の暗号資産に関する法制度は、世界でも先進的な水準にあります。2017年には、改正資金決済法が施行され、暗号資産が決済手段として認められ、暗号資産取引所は登録制となりました。このような法制度の整備にもかかわらず、日本では他国と比べて、暗号資産が浸透していません。
その理由としては「暗号資産の税制問題」が挙げられます。日本の暗号資産に関する法制度は、世界でも先進的な水準にあるものの、まだまだ改善点も残されており、現状は暗号通貨の取引で得た利益は総合課税の対象となり、他の所得と合わせて5%から45%の税率が適用されます。
暗号通貨で得た利益が大きい場合、他の所得と合わせて計算した総所得金額に応じて、高い税率が適用されることになり、日本の暗号通貨業界の進展を阻んでいるもっとも大きな要因にもなっています。ただし、この課税方法には論争があり、現在も自民党内で検討が進んでいます。ステーブルコイン分野に関しても、日本国内でのステーブルコイン発行が解禁されることで、国内外の企業間決済の効率化が進むことが期待されています。
これらの課題が解決されれば、日本でも暗号資産の普及が進んでいくといえるでしょう。
暗号資産がアジア最大の市場と言われる理由とは?
アジアは暗号資産の最大の市場と言われています。
その理由は大きく分けて以下の2つが挙げられます。
- 経済成長
前提としてアジアは、世界経済において急速な成長を遂げている地域です。平均年齢が若く、また世界人口の約60%を占めるアジアは、Web3や暗号資産などのテクノロジーの導入に最適な地域といえるでしょう。中国は世界最大の経済国であり、また、インドやベトナムなどの国々も経済成長を続けています。これらの途上国では、若年層を中心に暗号資産投資に対する意識が高まっており、投資も活発に行われています - 政府からの支援
一部のアジア諸国では、政府が暗号資産の普及や発展を支援しています。例えば、韓国は2022年に暗号資産の取引所の登録制度を導入、暗号資産の取引や投資をより安全に行うための環境を整えました。また、日本でも、政府がブロックチェーン技術やWeb3の導入を含むデジタル変革を「Web3国家戦略」と位置づけ、国内の経済成長やイノベーションを促進するための取り組みをスタートさせています
以上の理由により、アジアは暗号資産の最大の市場となっています。今後も、アジアでの暗号資産の普及や発展は続くと予想されます。しかし、現状は日本国内の暗号資産ユーザはー他国と比べると、少ない傾向にあります。
日本の暗号資産保有率
日本の暗号資産保有率は、2021年の調査では1.7%と、3年前の調査から0.5%ポイント上昇したと野村総合研究所が発表しています。
2021年調査では、回答者の1.7%が暗号資産を保有していた。3年前調査の1.1%からは+0.5%ポイントとなり、有意な上昇が観測された。投信保有率の+1.9%ポイントには及ばないが、保有率の増加率では4資産で最も大きい1.5倍(=1.7%/1.1%)となった。
野村総合研究所:「生活者1万人アンケート」調査結果に見る消費者の暗号資産保有行動
国別成人の暗号資産所有者割合は、下記の通りです。
- ベトナム 29%
- インド 23%
- オーストラリア 23%
- インドネシア 22%
- フィリピン 22%
- ナイジェリア 21%
- マレーシア 20%
- ロシア 20%
- ガーナ 17%
- 香港 16%
日本のビットコイン保有者数
日本の人口から推計すると、2021年時点で暗号資産を保有している人は約180万人とみられており、そのうち、暗号資産を所有していると返答した日本人のうち、暗号資産所有者の52%がビットコインを所有、2番目に人気のあるコインは31.5%のリップルで、3位はイーサリアムで12.4%となっています。
参考記事:国別の暗号資産所有率ランキング、3位オーストラリア、2位インド、1位は?
日本の主要な暗号資産プロジェクト
日本の主要な暗号資産プロジェクトについて解説します。
- Astar Network
- Oasys
日本の主要な暗号資産プロジェクト①:Astar Network
アスターネットワークとは、ポルカドットのパラチェーンとして開発された、分散型アプリケーションを構築するためのプラットフォームであり、日本発のパブリックブロックチェーン。日本発のL1パブリックブロックチェーンとして国内外から期待されています。日本を代表する暗号資産プロジェクトといえるでしょう。
また、アスターネットワークは、Polygon Labsと協業しEthereumレイヤー2である「Astar zkEVM Powered by Polygon」も開始。EVM互換よりも高い水準のEVM等価性を実現しており、EthereumやPolygonなどの既存のコントラクトをコードの変更なしに使用することができます。また、Ethereumのセキュリティを維持しつつ、L2の高速処理と低ガス代による高いUXを可能にしました。
今後は、世界中のWeb3プロジェクトと協業しWeb3マスアダプションのためのサービスが提供されることが発表されています。
現在アスターネットワークは、Web3プロダクト開発のためのプラットフォームとして、日本市場で顕著なシェアを占めており、これからは韓国及びグローバル市場への拡大を進めていくとされています。そして2024年1月27日には、韓国のWeb3.0特化コンサルティング企業『DeSpread』と提携発表。このパートナーシップを通じて、今後は、韓国・日本などの東アジアが中心となり、アジア主導のWeb3の普及を目指すことを発表しました。
日本の主要な暗号資産プロジェクト②:Oasys
Oasys(オアシス)は、2022年2月に設立された、日本発のゲーム特化ブロックチェーンプロジェクト。コンセプトとして「Blockchain for The Games」を掲げ、ゲーム開発者やプレイヤーのニーズに応えるブロックチェーンプラットフォームの開発を目指しているプロジェクトです。
プロジェクトの中心企業はシンガポール拠点の「Oasys Pte. Ltd.」ですが、ブロックチェーン技術のエキスパートを中心に、業界大手のゲーム企業やブロックチェーンテクノロジー企業との協業のもと、企画・開発が進められており、GameFi業界の発展とともに、さらに需要が高まっていくことが期待されている暗号資産プロジェクトです。
またOasysは、2024年1月25日に、Web3の総合コンサルティングファームである株式会社Pacific Metaと、中華圏進出に向けたパートナーシップを締結。この提携により、Oasysは、中華圏市場におけるゲームコンテンツの普及を推進していく動きが加速されます。Oasysは、中華圏市場をブロックチェーンゲームの新たな成長市場と捉えていると主張。2023年の中華圏のゲーム市場規模は前年比14%以上増の6兆円超と過去最高を記録しており、中国語ユーザー数も6億人と、一大ゲーム圏としての地位を確立しています。
そのほかにも、Oasysが発行するトークン「$OAS」も本稿執筆時点で、すでに国内4取引所に上場されており、着実に国内での認知度も高めています。今後は大手海外取引所での上場も予定しているとされており、上場された場合は海外マネーの流入によって、さらなる価格上昇が期待されます。
まとめ:暗号資産が日本経済を後押しする可能性も高い
本記事では、暗号資産は日本の経済に追い風となるかという視点で、暗号資産の歴史から国内動向、代表的なプロジェクトを通して解説してきました。暗号資産は、中央集権的な管理や制御を排除した、分散型の金融システムです。これにより、従来の金融機関や政府に依存することなく、誰もが金融サービスを利用できるようになる可能性をもっています。
日本国内では急速に法整備の改正が進められており、2024年度以降に大きな動きがある可能性が高く、注目が集まっています。日本はWeb3の相性も良く、暗号資産の税制が是正されれば、暗号資産が日本経済を後押しする可能性も高いでしょう。今後の暗号資産業界と、日本の取り組みに注目です。日本経済を後押しする新たな原動力となる可能性を秘めています。
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