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分散型金融(DeFi)×AIエージェントの新領域「DeFAI」とは?

26 mins
更新 Shota Oba

ヘッドライン

  • DeFAIはAIを活用し、DeFiの複雑さを解消することで、リアルタイム市場分析や自動取引、パーソナライズド戦略を提供し、より多くのユーザーが利用しやすい金融サービスを目指します
  • AIエージェントが市場データを分析し、最適な売買戦略を実行することで、リスク管理やポートフォリオ最適化を自動化し、効率的な資産運用を可能にします
  • 透明性やセキュリティリスク、規制対応が課題として挙げられ、オープンソース化や監査の強化が求められますが、金融業界に大きな変革をもたらす可能性があります

AIエージェントへの注目が高まる中、2025年に分散型金融(DeFi)と人工知能(AI)の融合である「DeFAI」が、金融業界に新たな波を起こしています。DeFAIは、AIの力を活用してDeFiの複雑さを解消し、リアルタイムのインサイトや自動化された取引、パーソナライズされた戦略を提供することで、より多くのユーザーにDeFiへのアクセスを広げることを目指しています。しかし、その一方で、透明性やセキュリティといった課題も存在します。

そこで本稿ではDeFi×AIエージェントの革新技術として25年注目のDeFAIの概要、展望などについて初心者にもわかりやすく解説します。

DeFi(分散型金融)とは?

DeFi(Decentralized Finance、分散型金融)とは、銀行や企業などの中央管理者が存在せず、ブロックチェーン上で自律的に運営される金融サービスのことを指します。スマートコントラクトと呼ばれるプログラムによって取引が自動的に実行されるため、利用者は自身の資産を完全に管理しながら金融サービスを利用できる点が特徴です。現在では3,000以上のプロジェクトやプロトコルが存在する広大なエコシステムへと成長しました。

DeFiの主な特徴は以下の3つです。

  1. 中央管理者がいない分散型金融システム
    取引や資産の管理を特定の企業や機関に依存せず、ブロックチェーン上で分散的に運営されるため、システムの透明性や耐検閲性が高いことが特徴です。
  2. コンポーサビリティ(構成可能性)
    DeFiプロトコル同士が相互に連携し、新たな金融サービスを組み合わせて提供できる柔軟性があります。これにより、複数のサービスを組み合わせて最適な運用が可能になります。
  3. ウォレットを接続するだけで利用できる手軽さ
    従来の銀行口座開設のような審査や手続きが不要で、仮想通貨ウォレットを接続するだけで誰でも利用できる点がDeFiの利便性を高めています。

Statistaによると、2025年までに、世界のDeFi市場の収益は3億7,690万ドルに達すると予測されています。DeFi市場のユーザー1人当たりの平均収益は7.0ドルと見込まれています。国別の収益では、アメリカが7,199万ドルで最大規模となり、世界のDeFi市場をリードすると予測されています。また、2025年にはDeFi市場のユーザー数が5,356万人に達し、ユーザー普及率は0.69%に上昇すると見込まれています。

アメリカは、堅固な規制枠組みと革新的なブロックチェーンプロジェクトの展開により、世界のDeFi市場を主導していくと考えられています。

関連記事:DeFi(分散型金融)の始め方

DeFAIとは?

DeFAI(Decentralized Finance + AI)は、DeFiとAIを組み合わせた新しい金融システムです。従来のDeFiはスマートコントラクトを活用し、仲介なしの取引を可能にしましたが、操作が複雑で、多くの投資家にとってハードルが高いものでした。DeFAIはAIの分析力と自動化技術を活用し、取引の最適化やリスク管理を行うことで、より幅広いユーザーが利用しやすい金融サービスを提供します。

AIエージェントによる市場分析と自動取引

DeFAIの中核となるのは、AIエージェントによるリアルタイム市場分析と自動取引です。AIはオンチェーン・オフチェーンデータを分析し、最適な売買戦略を実行します。

  • 市場トレンドをリアルタイムで分析し、売買の最適タイミングを判断
  • 投資判断の自動化により、24時間稼働するスマートトレーディングシステムを構築
  • 市場変動に応じた柔軟な取引を実現し、短期的な価格変動にも対応

これにより、従来の手動取引の非効率性を排除し、よりスムーズな投資環境を実現します。

関連記事:暗号資産におけるAIエージェントとは?

リスク管理とポートフォリオ最適化

DeFAIでは、AIが市場の変動を監視しながら、リスクを抑えつつ最適なポートフォリオを構築します。

  • 価格変動リスクを最小限に抑えるため、リアルタイムで資産の配分を調整
  • ユーザーの投資スタイルに応じた最適な資産運用を実施
  • 流動性供給やレンディング戦略を活用し、利回りを最大化

関連記事:DeFiレンディング・プロトコルにおけるリスクの特定と探索

こうした機能により、ユーザーは市場の急激な変動にも対応しながら安定したリターンを得ることができます。

マルチチェーン対応と直感的なインターフェース

DeFAIは、ビットコインやイーサリアム、ソラナなど複数のブロックチェーンに対応し、クロスチェーンでの資産管理を可能にします。これにより、異なるネットワーク間の運用をシームレスに行えます。

また、AIを活用した直感的なユーザーインターフェースにより、DeFi初心者でも簡単に利用できる設計になっています。ワンクリックでの取引や自動運用の設定が可能で、従来のDeFiのような複雑な操作を必要としません。

AI主導のパーソナライズド金融サービス

DeFAIのAIは、ユーザーの取引履歴や資産状況を分析し、最適な投資戦略を提案します。

  • ユーザーごとに最適化された投資戦略を提供
  • 市場の変動に応じたリアルタイムのポートフォリオ調整
  • 過去の取引データをもとに、AIが個別の投資方針を構築

このように、AIの自動学習機能を活用することで、個々のニーズに適した金融サービスを実現します。

AIとスマートコントラクトの連携

DeFAIは、AIとスマートコントラクトを連携させることで、より高度な自動化を実現しています。

技術役割
AIエージェント市場分析・取引執行・リスク管理
スマートコントラクト自動決済・ルールベースの資産管理
オフチェーンデータ分析経済指標・ソーシャルメディアの分析
ブロックチェーンオラクル外部データのブロックチェーンへの供給

AIは市場分析とトレーディングの最適化を担当し、スマートコントラクトは安全な取引処理を担うことで、効率的で透明性の高い金融取引を実現します。

暗号資産アナリストのHitesh.ethは、この新興市場が今後数カ月で10倍に拡大すると予想しています。また、時価総額が100億ドルに達する見込みがあるとも指摘しています。現在、「Griffain」「Orbit」「AIXBT」などのプロジェクトがこの分野をリードしており、今後の技術革新によってさらなる成長が期待されています。DeFAI支持者のダニエル氏はDeFAIのもたらす影響について以下のように語っています:

高度なAIツールを活用してユーザー体験を簡素化し、意思決定を効率化することで、DeFAIは参入障壁を下げ、真に自律的でユーザーフレンドリーな金融インタラクションを可能にすることを目指しています

ダニエル

関連記事:DeFAIが2025年の大きな話題になる理由=専門家

DeFAIの収益モデルと経済圏の拡大

DeFAIは、従来のDeFiよりも高度な自動化とパーソナライズ化を実現することで、収益モデルにも革新をもたらしています。特に、AIエージェントの活用による利益の最大化が注目されています。DeFAIの代表的な収益モデルとして、以下の3つが挙げられます。

  1. 自律型トレーディングボットの提供
    • ユーザーがAIエージェントを購入・レンタルし、自動売買を行うことで利益を得る。
    • AIは市場データを分析し、裁定取引やボラティリティ戦略を最適化する。
  2. AI駆動のリスク管理プラットフォーム
    • DeFAIプラットフォームは、機関投資家向けにAIによるリスク管理ツールを提供。
    • 例えば、AIがスマートコントラクトのリスクを評価し、適切なカバー戦略を提案する。
  3. リアルワールドアセット(RWA)のトークン化
    • AIが不動産や株式などのリアルアセットをトークン化し、流動性を高める。
    • これにより、分散型市場でも安定した収益を得ることが可能になる。

関連記事:現物資産(RWA)トークン化とは?

主要なDeFAIプロジェクト

出典:DWFベンチャーズ

暗号資産およびWeb3領域に特化したベンチャーキャピタルおよび投資会社のDWFベンチャーズによると、DeFAIのプロジェクトは、DeFiの課題を解決するために、次の4つのカテゴリーに分けられます。それぞれが異なる側面からDeFiの利便性と効率性を向上させ、より多くのユーザーに開かれた金融環境を実現することを目指しています。

1. 抽象化(Abstraction)

抽象化プロジェクトは、DeFiの仕組みをシンプルにし、技術的な知識を持たないユーザーでも利用しやすくすることを目的としています。具体的には、テキストコマンドでの取引実行や、複数のブロックチェーンをまたぐ複雑な手続きをAIが自動処理する機能が含まれます。

この技術によって、ユーザーは次の2つのステップだけでDeFiの利用が可能になります。

  • 自身の投資スタイルやニーズに基づいて、最適な取引機会を特定
  • AIエージェントが、必要な手続きをすべて単一のコマンドで自動実行

この分野で注目されるプロジェクトのひとつがHey Anonです。研究ツールや自動実行機能に加え、開発者が自身のDeFiプロトコルをAIエージェントのエコシステムに直接統合できるフレームワークを提供しています。同社はDWF LabsのAI Agent Fundから資金提供を受けています。

また、Griffainは、特定のトークンを迅速に購入する「スナイピング」機能など、より専門的な取引を簡単に実行できるエージェントを開発し、ユーザーの負担を大幅に軽減しています。

関連記事:2025年注目のAIエージェント銘柄5選

2. 分析(Analysis)

分析系プロジェクトは、膨大なオンチェーンデータを収集・解析し、ユーザーに有益な市場トレンドや投資機会を提供します。

これらのプロジェクトは、複数の情報ソースからデータを統合し、AIを活用してDeFi市場や特定のトークンの動向を特定します。ユーザーは、プロジェクトの技術的指標、ファンダメンタルズ、さらには市場のセンチメント分析をAIエージェントを通じて簡単に確認できます。多くのエージェントは、X上でも情報を発信し、リアルタイムの市場分析を提供しています。

代表的なプロジェクトとして、Aixbtが挙げられます。独自の大規模言語モデル(LLM)フレームワーク、データインデクサー、分析アルゴリズムを組み合わせ、高精度な市場予測を実現しています。

また、Acolytは「エージェントスワーム」と呼ばれるシステムを採用し、複数のAIエージェントが協力してデータ解析を行います。将来的にはプライベートデータセットを活用した高度な市場分析も可能になる見込みです。

3. 最適化(Optimisation)

最適化系プロジェクトは、AIを活用してポートフォリオのリターンを最大化し、投資判断の自動化をサポートします。

このカテゴリに属するプロジェクトは、過去のデータを活用したバックテスト済みの戦略をもとに、ユーザー資産を最適に配置します。さらに、一部のエージェントはユーザーが独自の投資戦略を設計できるようにすることで、カスタマイズ性を強化しています。

Sturdy FinanceのSN10(Opentensorサブネット)は、ユーザーの預け入れ資産を最も収益性の高い貸付プールへ自動的に振り分け、効率的な運用を可能にします。

また、AxalのAutopilotは、ポートフォリオのリバランスや利回りの自動回収を行い、リスクを抑えつつ、収益の最大化を目指します。この機能により、感情に左右されず、安定した資産運用が可能になります。

4. インフラ(Infrastructure)

インフラ系プロジェクトは、DeFAIエコシステム全体を支える技術基盤を構築し、AIエージェントが効率的に機能するための環境を提供します。

このカテゴリには、AIモデルのトレーニングや推論、データ管理、セキュリティ対策、さらにはエージェント間の調整機能を提供するプロジェクトが含まれます。

BrahmaのConsoleKitは、資産管理やオペレーションの安全性を向上させるため、事前シミュレーション機能やカスタマイズ可能なスマートアカウントを提供し、取引の透明性を高めています。

また、Omo Protocolは、複数のAIエージェントを協調させるオーケストレーションレイヤーを開発し、より複雑な戦略や高度なインタラクションを可能にしています。これにより、エージェント同士が連携し、より洗練されたDeFi運用が実現されます。

DeFAIの将来展望

現在のDeFAIはまだ発展途上ですが、将来的にはAIを活用したより高度な金融エコシステムの構築が進むと予測されています。

1. AIエージェントの進化

  • DeFAIエージェントは単純な自動取引を超え、複数のステップを伴う金融戦略を自律的に実行するようになります。
  • 「24時間365日運用可能なAIファンドマネージャー」の誕生により、一般投資家でも高度な取引戦略を実行可能になると期待されています。

2. DeFiの大衆化

  • AIを活用した直感的なUX(ユーザーエクスペリエンス)の向上により、DeFi初心者でも簡単に利用できる環境が整う可能性があります。
  • 例えば、AIによる「音声コマンド取引」や「自動ポートフォリオ最適化」が一般的になるかもしれません。

3. 伝統金融との統合

  • DeFAIが発展すれば、企業の財務管理や決済システムにもAIエージェントが導入される可能性があります。
  • これにより、従来の銀行システムとDeFiが融合し、新たな金融インフラが構築されるでしょう。

DeFAIの課題と規制

DeFAIは、AIとブロックチェーン技術を活用して金融取引を効率化するという大きな可能性を持つ一方で、いくつかの重大な課題に直面しています。特に、透明性の確保・セキュリティリスク・規制対応の3つが大きな論点となっています。

1. 透明性の確保

DeFAIでは、AIエージェントがリアルタイムで市場分析や取引判断を行いますが、その意思決定プロセスがブラックボックス化するリスクが指摘されています。投資家がAIの判断根拠を理解できなければ、意図しない損失を被る可能性があります。そのため、以下の取り組みが求められています。

  • オープンソース化:AIのアルゴリズムを公開し、第三者が監査できる体制を整える。
  • ガバナンスの強化分散型自律組織(DAO)を導入し、コミュニティ主導でAIの意思決定プロセスを監視する。
  • 監査レポートの義務化:プロジェクトごとに定期的な監査を実施し、透明性を確保する。

2. セキュリティリスク

DeFAIは、AIエージェントがスマートコントラクトを管理するため、以下のような新たなセキュリティリスクが発生します。

  • AIエージェントのハッキング:攻撃者がAIのアルゴリズムを改ざんし、不正な取引を行うリスクがある。
  • データ操作攻撃:市場の価格データや取引情報を操作し、AIエージェントを誤った判断に誘導する手法が考えられる。
  • スマートコントラクトの脆弱性:従来のDeFiと同様に、コントラクトのバグを悪用した資金流出事件が発生する可能性がある。

こうしたリスクを軽減するためには、以下の対策が必要です。

  • AIモデルの検証プロセスを強化
  • セキュリティ監査を受けたスマートコントラクトの使用
  • オンチェーン監視ツールの導入(リアルタイム異常検知)

3. 規制対応

DeFAIの成長に伴い、各国の規制当局はこの新しい市場に対する監視を強化しています。特に、AML(マネーロンダリング防止)とKYC(本人確認)の導入が求められる場面が増えています。

  • AIエージェントが運用する金融取引における責任の所在
  • マネーロンダリング対策として、KYCをどのように適用するか
  • AIの意思決定が不透明な場合、規制当局がどのように介入できるか

現在、欧州や米国ではAIを活用した金融サービスに対する法整備が進められています。今後、DeFAIプロジェクトはこうした規制に適応するための仕組みを構築していく必要があります。

まとめ:2025年のDeFAIの躍進に注目

DeFAIは、DeFiとAIの融合により、金融業界に新たなパラダイムシフトをもたらす可能性を秘めています。透明性やセキュリティといった課題はあるものの、これらの問題が解決されれば、DeFAIは伝統的な銀行業を過去の遺物にするほどのスピードと自動化、アクセシビリティを提供するかもしれません。今後もDeFAIの進化から目が離せません。

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Shota Oba
国際関係の大学在籍中に国内ブロックチェーンメディアでのインターンを経て、2つの海外暗号資産取引所にてインターントレーニング生として従事。現在は、ジャーナリストとしてテクニカル、ファンダメンタル分析を問わずに日本暗号資産市場を中心に分析を行う。暗号資産取引は2021年より行っており、経済・社会情勢にも興味を持つ。
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