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【独占記事】 JPYC岡部典孝代表独占インタビュー【後編】:日本円ステーブルコインが切り開く新たな金融の在り方

15 mins
更新 Shota Oba

JPYCとは?

JPYCには、会社としてのJPYCとステーブルコインとしてのJPYCが2つある。同社は2019年11月に設立され、21年1月から日本で最も早く、イーサリアム上を含む6つ以上のチェーンでステーブルコインとしてJPYCを発行。プリペイド規定で発行していたが、USDC運営会社のサークルからの出資を受け、22年バージョン2にグレードアップ。サークルが投資した初の会社で、ドルやユーロのステーブルコインと同じ企画で日本円のステーブルコインを同一企画にし、最終的に世界中のステーブルコインを同じ企画にし、「どれか1つのステーブルコインを持っていれば全世界で使える」世界を目指している。

Q .パンケーキスワップでの仮想通貨やSTEPNのNFTが日本円で直接クレジットカードから買えたり、日本円での購入に参入する企業も見られますが、この現状をどう捉えていますか?

基本的に、日本の居住者に対して海外の方法での勧誘は難しいという立場です。我々は、ステーブルコインなどを勧誘するべきであると考え、日本の許認可を持っているところがその本来あるべき姿だと思っています。日本国内でも、ライセンスを取得し、USDCやJPYCを堂々と販売していくというのが我々のスタンスです。

これまで、なぜ海外のサービスが日本の方に利用されていたかと言えば、日本のコストが高く、数量も多いためでした。例えば、カードで商品を買いたい時に、海外では3%の手数料がかかるのに対し、日本でも同じ5%の手数料がかかるならば、人々は外国の方を選ぶでしょう。

しかし、我々が実現したい世界は、USDCなどと同じ企画で、コストを下げ、日本の規制に準拠しているサービスです。手数料はほとんどかからず、例えば0.1%といった形で、適切に日本の皆さんに提供する予定です。その3%払って海外のサービスを使う人は、多分出てこないと考えています。そのため、コスト優位性は非常に重要で、規格を統一することが必要だと認識しています。

Q .今後、ユーザーによるさまざまな円建てステーブルコインでのDeFiの運用が想定されますが、DeFi自体にまだ明確な法律規制はありません。DeFiに対してどのように対応していくお考えでしょうか?

JPYCなどが今後さらに運用される際の見解についてですが、取り扱っていく方針として、大きく2つの道があると考えています。1つ目は、今までのように利用者が自己責任、自己運用の範囲でDeFiにステーキングするなどの方法です。これ自体は現時点で法律上規制されていない状態です。2つ目の世界としては、国内でKYCした人に限定して、国内事業者がDeFiのサービスを提供するという未来もあり得ると考えています。我々は、後者の未来がより有力だと感じており、公式に国内の方々にサービスを提供することが良いと考えています。今まで自己責任でDeFiを検証して預ける際に、ラグなどの問題があったことから、安心して利用できる形で、許認可を得た事業者がKYCした人たちの間でソフトウェアとしてDeFiを使う、そのような世界観が広まる可能性もあると考えており、我々はその方向を推進しています。

Q .調査によれば、仮想通貨ユーザー2000人のうち、ステーブルコインを保有しているのは約25%のみが保有。ホワイトペーパーを読むユーザーは20%前後にとどまる結果に。どのようにステーブルコインの仕組みを理解しもらいマスアダプションに繋げていくお考えでしょうか??

金融庁の方針に基づいて、ステーブルコインはおすすめできるものとおすすめできないものに明確に分けられていると感じます。比較的おすすめできるステーブルコインは電子決済手段っていう新しい用語を使って100パーセント保護され、法定通貨に戻せる領域として定義されています。一方で、DAIなどの裏付けやアルゴリズム方のステーブルコインに関しては暗号資産に分類しており、それぞれのステーブルコインについて、ホワイトペーパーを読まないと判断できない部分もあります。

ほとんどの人々が銀行預金の口座を持っている。一方で、その仕組みを理解していないケースが多いです。しかし、その中で安心して使用している状況があります。同様に、金融庁が分類している安全なステーブルコイン、いわゆる電子決済手段としてのステーブルコインに関しては、基本的に危険がなく、潰れたとしても返ってくるという仕組みなので、普及していくと考えられています。

逆に、ホワイトペーパーを読まないといけないとなると厳しいなと思います。そういった意味ではステーブルコインを取引する業種と暗号資産交換業者は違う業態となるでしょう。我々はステーブルコインの取引所を外貨両替のような形、銀行がやっている業務に近いものとして位置付けており、安全なステーブルコインは深く理解しなくても安心して使えるというイメージで広めていきたいと思っています。さらに、銀行よりも潰れた時の担保される度合いが高いと考え、シリコンバレーバンクのような形で潰れる可能性もあるため、ちゃんと国が認可している発行体に預けている、という部分を打ち出していきたいと考えていますし、安心して使っていただけるというイメージを広めていきたいです。

Q .ユーザーがペイペイかどのキャッシュレス決済の競合他社との差別化をしていくためにどのような広告等の思索を考えていますでしょうか?

みなさんが使えば安全かどうかということにはあまり気にせずに使っているというのは実感しています。例えばデパートの商品券などは、デパートが潰れたら帰ってこないこともあるのに、それでも普及しています。そのため、法律上100パーセント倒産隔離される方向であれば安全性は十分だと感じています。今後の打ち出していかなければいけないポイントとしては、利便性と効率性の2つが挙げられます。

利便性は使えるお店が多いことが重要ですが、すでに存在するサービスにはなかなか敵わないと考えているため、効率性に焦点を当てようと考えています。効率性という点では、ユーザーにとっては負担がないため難しい部分もありますが、手数料が安くなるという効率性は十分に打ち出せると考えています。

もちろん、効率性を重視しているのですが、PayPayなどを使う時にユーザーが負担していないのに対して、ユーザーにとっての効率性をどう打ち出すかはなかなか難しいと思っています。一方で、今あのカフェでインタビューを受けていますが、キャッシュレスで決済するとお店側は、まだやっぱり2、3パーセントぐらい手数料が取られるわけですね。

JPYCを使えば手数料が安くなるという効率性に関しては十分に打ち出せると思うので、そういうところから使える店が増えていって、これは鶏卵問題ですが、使えるところが増えていくと、どんどん買いたいという人が増えていくわけです。最終的には効率性が良ければ普及していくと思っています。短期的にはこのステーブルコインでないと買うのが大変なもの、買えないものっていうところからまず普及していくと思っていて、NFTなどが代表例かなと思っています。

Q . 現在の日本円の価値の低迷などに直面していますが、外国人ユーザーがJPYCを含むステーブルコインを外貨資産の一つとして保有するような未来はありうるのでしょうか?

日本人が外貨預金をする際には、手数料がかかることが一般的で、利率の割には利益が少ないことがあるため、そのような需要の一部はUSDなどの他の方法で持つ方向に変わるかもしれません。現在の日本の金利が低いため、外国人が日本のステーブルコインを持つ意欲は強くないかもしれませんが、将来的に金利が上がれば、外国人が日本のステーブルコインを安定資産として持つ可能性はあり得るでしょう。外国人が日本で口座を作ることや、外国の銀行で日本円建て預金をすることはハードルが高いため、USBCとJPYCをほとんど両替手数料なしでやり取りできる世界が実現すれば、外国人にとって必要になるでしょう。また、日本人にとってもこのUSBCを簡単に持てることは、外貨預金の需要を満たす新しい方法になると思います。

グローバルの展開も視野に入る日本円ステーブルコイン

6月1日の改正資金決済法施行により、日本円や米ドル等の法定通貨を裏付けに持つステーブルコインが日本でも発行・流通が可能になり、ステーブルコインの導入と需要が高まっている。1日にサービスが開始されたバイナンスジャパンの千野代表はWebXの開催セッションにて、「自社の日本円ステーブルコインに対して非常に高い関心を持っている。エコシステムを使いやすくするためにステーブルコインの発行は不可欠だ」バイナンス上での日本円ステーブルコイン発行の可能性を示唆。

米サークル社ジェレミー・アレールCEOは7月6日、CoinDesk Japanのインタビューで日本でのステーブルコイン発行の可能性を示唆した。同インタビューによれば、サークル社は現在、日本のステーブルコイン需要について調査を行っている。同氏は法定通貨連動型ステーブルコインの極めて有用だとの立場を明らかにした。ドルとユーロのステーブルコインが既に存在する一方、貿易や外国為替で頻繁に使われる通貨には潜在的魅力があると認識している。その観点から、円連動型ステーブルコインは新たなチャンスと位置づけている。

インタビュー・文:Shota Oba
写真:Shota Oba

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Shota Oba
国際関係の大学在籍中に国内ブロックチェーンメディアでのインターンを経て、2つの海外暗号資産取引所にてインターントレーニング生として従事。現在は、ジャーナリストとしてテクニカル、ファンダメンタル分析を問わずに日本暗号資産市場を中心に分析を行う。暗号資産取引は2021年より行っており、経済・社会情勢にも興味を持つ。
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