コムキャスト(CMCSA)株は下落を続ける一方、同業種は上昇傾向にある。同社の主な収益源は家庭向けインターネットとケーブルテレビであり、これらは縮小傾向にある事業。2社分割も状況の打開には繋がっていない。
このため、大胆な分割策も株価を押し上げる効果はなかった。株価は1株23.73ドル前後で推移しており、52週最安値付近にある。問題は市場ではなく、同社内部にある。
業界全体は上昇も、ケーブル事業に恩恵なし
恩恵は均等に及んでいない。コムキャストが属する通信サービス業界は過去半年で約1.4%上昇した。ただし、この上昇は最大手の AI関連大手であるアルファベットとメタに支えられたものであり、通信・ケーブル企業は含まれていない。
通信関連銘柄は取り残されている。コムキャスト株は過去1年で約30%下落。ケーブル大手のチャーター・コミュニケーションズも2026年に約33%下落している。
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このギャップはコムキャストの中核事業を浮き彫りにする。家庭向けインターネット部門は、ケーブル回線の代替となる5G固定無線サービスを提供するベライゾンやTモバイルに顧客を奪われ続けている。コムキャストはこの変化で劣勢に立たされている。
なぜコムキャストは2社に分割するのか
コムキャストは2つのまったく異なる事業を持つ。一方は家庭向けインターネットとケーブルテレビ事業。もう一方はNBCユニバーサルであり、NBC、Peacockの配信サービス、ユニバーサルのテーマパーク事業を展開している。
インターネットとテレビ事業は縮小中。顧客はケーブルを解約し、Tモバイルやベライゾンによるより安価な無線インターネットに乗り換えている。2事業が一体化していたことで、成長が鈍いインターネット事業が全体の株価を押し下げていた。そのためコムキャストは両事業を切り離し、それぞれスタンドアロン企業とする方針。単独の方が市場価値は高まると見込む。
実施はスピンオフ(分社化)。現株主は新設されるメディア企業の株式を受け取るが、現金のやりとりは発生せず、税制上も非課税となる。
しかし、2部門を組み替えただけでは、失った顧客が戻るわけではない。
分社化だけでは業績低迷は解消しない
分社化は構造を変えるだけで、業績を変えるものではない。コムキャストの接続部門であるブロードバンドおよび無線事業は主な収益源であり、直近四半期の調整後利益は約79億ドルだった。しかし、顧客流出に伴い、利益は前年同期から4%超減った。
一方、スピンオフ対象のメディア部門は逆の課題を抱える。直近四半期の売上高は119.4億ドルだったが、調整後利益はわずか3億3100万ドル。Peacock配信サービスは4億3200万ドルの赤字を計上した。つまり、分割は縮小するキャッシュカウと成長するが赤字の部門を分離するだけで、根本的な問題解決には至らない。2本立てにしてもブロードバンド顧客は増えず、配信事業の収支も改善しない。それぞれが以前と同じ課題を抱えて新会社に移るだけとなる。
ライトシェッド・パートナーズのアナリスト、リッチ・グリーンフィールド氏は、ニューヨーク・タイムズに対し、今回の動きは「失敗の認め」だったと述べている。投資家はニュース発表直後からこの見方を試す姿勢を見せた。
一時高騰も長続きせず
分割発表当初は期待感が広がった。コムキャスト株はギャップアップし、6月29日には一時19%高の27ドル近くまで上昇。分割による「隠れた価値」の顕在化を期待した買いが集まった。
ただし、この上昇は持続しなかった。株価はその後ほぼ全戻しとなり、7月1日には23.73ドルまで下落。当日比3.34%安を記録した。
この往復の動きは、市場の評価である。顧客も売上も増えない再編では、投資家に保有を続ける理由は乏しい。本当の試金石は、大口投資家が参入したかどうかにある。
大口資金は個人よりもはるかに株価を動かすが、フローデータを見る限り参入していない。チャイキン・マネー・フロー(CMF)で測定したコムキャストの資金フローは、機関投資家が支配しているかを示す指標だが、依然としてマイナス圏にあり、さらに低下傾向を示している。
つまり大口資金は、ニュース発表後も売りを継続した。新規の買い手が価格を支える動きは見られなかった。
一方、オプション取引参加者は強気だった。下落への賭けと上昇への賭けの比率を示すプット・コールレシオは0.43付近で推移し、コールがプットを上回っていた。ヘッジも限定的だった。
ただし、その楽観姿勢は、CMFの低下一途が示す通り、実際の買いには裏付けられていない。ウォール街も慎重だった。
ウォール街で評価が割れるコムキャスト
アナリストの反応は分かれた。ローゼンブラット証券はコムキャストを「買い」に格上げし、目標株価を31ドルに引き上げた。一方、ドイツ銀行は、より前向きな見方を示しつつも、目標株価を32ドルに引き下げた。
他の証券会社は慎重な姿勢を維持した。シティは買い推奨を維持したが、目標株価を35.50ドルから32ドルに引き下げた。モルガン・スタンレー、バークレイズ、スコシアバンク、JPモルガンは据え置きとなった。
CMCSAの目標株価は28ドルから36ドルで、いずれも現株価を上回る。それでもウォール街主要7社のうち4社は「買い」とはしなかった。関連記事
現時点では、今回の分割でコムキャストに生まれたのは新たな事業ではなく、新たな組織形態のみだ。ブロードバンドの顧客減少とメディア事業の損失に歯止めをかけない限り、AI関連で上昇するセクターに乗る理由は乏しい。









