SBI VCトレードは2025年3月、国内の暗号資産取引所で初めて米ドル連動型ステーブルコイン「USDC(USDコイン)」の取り扱いを開始しました。SBI VCトレードが新たにUSDCの上場を果たしたことで、日本国内でもデジタル米ドルを直接扱える時代が幕を開けます。
本稿では、USDC上場の背景や影響、USDCの基本概要、国内取引所での購入方法、送金・決済・投資への活用例、今後の展望について包括的に解説します。
ステーブルコインの定義と仕組み

ステーブルコインは、法定通貨(フィアット)に価値をペッグ(連動)させ、その価格を安定的に保つよう設計された暗号資産です。米ドル、ユーロ、円などに1:1で連動しており、いつでも1枚のコインを1ドルとして交換することが可能です。これにより、価格変動が激しい暗号資産市場でも価値の保存手段として利用されます。
欧州中央銀行は、ステーブルコインを「既存の通貨の形態とは異なり、価格の変動を最小限に抑えるための安定化ツールに依存するデジタル価値単位」と定義しています。
SBIにUSDCが上場|背景と影響
- 法制度の整備と国内初の登録
日本では2023年6月に「改正資金決済法」が改正され、法定通貨価値と連動するステーブルコインは「電子決済手段」に分類されました。これに伴い、ステーブルコインの流通業務には新たな登録制度が必要となり、SBI VCトレードは国内第1号(登録番号00001)の「電子決済手段等取引業者」として2025年3月4日に登録を完了。この登録により、暗号資産交換業や第一種金融商品取引業と合わせて3つのライセンスを保有し、新たなサービス展開が可能になりました。 - Circle社との提携
SBI VCトレードの親会社であるSBIホールディングスは2023年11月、USDCを発行する米Circle社と包括的な業務提携に向けた基本合意を締結。これにより、技術面・法務面での協力体制が構築され、日本市場でのUSDC展開に向けた基盤が整いました。 - 2025年3月12日サービス開始(ベータ版)
登録完了の発表とともに、2025年3月12日よりSBI VCトレードでUSDCのサービス提供を開始。当初は利用者を限定したベータ版としてリリースされ、本格提供に向けた準備が進められています。国内の暗号資産ユーザーが直接USDCを売買・入出金できるのはこれが初めてで、デジタル上で1米ドルと等価の資産にアクセス可能になります。 - 他の取引所や企業への波及
他の国内取引所や金融機関にも影響が広がると見られ、Coincheckも2024年2月にCircle社との提携を発表、2025年中にもUSDCを上場する見込みです。また、JPYC社もCircle社から出資を受け、日本円建てステーブルコイン発行への動きが進んでいます。
SBI VCトレードでのUSDC上場は、日本初のステーブルコイン流通として歴史的な一歩であり、今後の市場拡大とステーブルコイン活用の促進に繋がると期待されています。
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USDCとは?(基本概要・発行元・仕組み)

- USDCの概要と発行元
USDC(USD Coin)は、米ドルと1:1の価値を維持することを目指したステーブルコインで、米国のフィンテック企業Circle社が発行しています。暗号資産取引所Coinbaseと共同設立した非営利組織「Centre」によって管理・運営され、2018年にサービスを開始しました。現在では、テザー(USDT)に次ぐ世界第2位の時価総額を持つステーブルコインです。 - 基本メカニズムと特徴
- 法定通貨担保型:USDCは、発行量と同等の米ドル資産を担保として保有し、1 USDC=1 USDの価値を維持しています。USDC発行時には1ドル相当の法定通貨が預けられ、償還時には1 USDCにつき1ドルが払い戻されます。
- 透明性の確保:Circle社は、現金や満期3か月以内の米国債などの安全資産で100%以上の準備資産を保有。さらに、BlackRock社運用のマネーマーケットファンドでも保有しています。これらの準備資産は、独立監査法人による毎月の証明レポートで開示され、資産の内訳も公開されています。この透明性により、市場での信頼性が確保されています。
- 米国規制下での運用
USDCは、米国の法律や金融規制に準拠して運営されています。Circle社は、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)からの許可を得ており、送金業ライセンスも取得済みです。AML(マネーロンダリング防止)やKYC(顧客確認)などの対策も徹底されており、USDCは世界で最も規制されたステーブルコインの一つとされています。 - 複数のブロックチェーンに対応
当初はイーサリアム(ERC-20トークン)として発行されましたが、現在ではSolana、Polygon、Avalanche、TRONなど10以上のブロックチェーンで利用可能です。用途に応じてブロックチェーンを選択でき、送金手数料や処理速度の面でも柔軟に対応できます。また、ブロックチェーン上の取引履歴が公開されており、リアルタイムでの流通量確認が可能です。 - 高い流動性と受容度
USDCは時価総額約580億ドルを持ち、暗号資産市場でも流動性の高い通貨として認知されています。Binance、Coinbase、Krakenなどの大手取引所でUSDC建ての取引ペアが提供され、他の暗号資産や法定通貨との交換が容易です。また、DeFi(分散型金融)分野でも主要な決済・担保手段として利用され、レンディングや流動性プールの基軸通貨にもなっています。
このように、USDCは「ドルに裏付けられたデジタル通貨」として高い信頼性と利便性を持ち、暗号資産初心者でも安心して利用できるステーブルコインです。今後、日本国内でUSDCを利用するには、SBI VCトレードなどの国内取引所での購入が可能です。
USDCの成長概要と普及
- 2018年10月:Coinbaseに初上場。
- 2018年11月:Binanceにも上場し、急速に流動性を確保。
- 2020年:DeFiの成長とともにUSDCの需要が急増し、年間で500%成長。
- 2024年:MiCA規制への準拠により、欧州市場での信頼性を確立。
- 2025年2月:ドバイ金融サービス機関(DFSA)がUSDCとEURCを公式に認可。
USDCの実際の使い方(送金・決済・投資での具体的な活用方法)

ここでは、個人投資家や企業が実際にUSDCをどのように利用できるのか、具体的なシチュエーションに基づいて紹介します。初心者でも分かりやすいよう、手順と注意点も合わせて解説します。
1. USDCの送金方法:迅速で低コストな国際送金を実現
USDCは、個人間送金や国際送金の手段として非常に有効です。特に従来の銀行送金に比べて、スピードとコストの面で圧倒的な利便性を誇ります。
■ 個人間送金の例
例えば、友人や家族にUSDCを送金する場合は、次のような手順で行います。
ステップ1:送金先のウォレットを確認
- 送金先の相手が持つUSDCウォレットのアドレスと対応するブロックチェーンネットワーク(EthereumやSolanaなど)を確認します。
ステップ2:USDCの購入
- SBI VCトレードでUSDCを購入します。円を入金し、USDC/JPYの取引ペアで購入するだけでOKです。
ステップ3:ウォレットから送金
- 購入したUSDCを、自身が利用するウォレット(メタマスクなど)に送金します。
- ウォレットにUSDCが反映されたら、「送信」ボタンから送金先のアドレスを入力し、送金額を指定します。
ステップ4:送金を実行
- 手数料(ガス代)を確認して、送金を実行します。ネットワークによっては数十円〜数百円で済むことが多いです。
ステップ5:相手側の受け取り確認
- 数秒から数分で相手のウォレットにUSDCが着金します。ブロックチェーンのエクスプローラーで送金状況を確認することも可能です。
ポイント
- 送金前にはアドレスのミスを防ぐため、少額のテスト送金を行うのが安全です。
- ガス代が高い場合は、ネットワークを変えるのも選択肢(SolanaやPolygonなど)。
■ 国際送金の具体例
企業が海外取引先に代金を支払う場合、従来はSWIFTを通じた銀行送金で3~5営業日かかり、手数料も数千円〜数万円でした。しかし、USDCを使えば次のようにスピーディで安価な送金が実現します。
- SBI VCトレードでUSDCを購入
- 送金する金額分のUSDCを購入します。例えば、1万ドル分のUSDCを購入。
- 取引先にUSDCで送金
- 取引先が持つUSDCウォレットのアドレスに対して、購入したUSDCを送金。
- Ethereumネットワークであれば5~10分以内に着金することが多いです。
- 受け取り側の現地通貨換金
- 受け取り側は、自国の暗号資産取引所でUSDCを現地通貨に換金します。
メリット
- 送金時間が数分〜数時間で完了。
- 手数料は数百円程度に抑えられる。
- 国際送金の手数料の削減だけでなく、為替リスクも最小限に抑えられます。
このように、USDCの送金は個人だけでなく、企業の国際取引にもメリットをもたらします。実際にステーブルコインの社会実装が実現すれば年間1000兆円規模の企業間決済の効率化につながると見込まれています。
関連記事:ステーブルコイン時価総額、史上最高の1680億ドルに到達:主な成長要因が明らかに
2. USDCの決済方法:オンラインショッピングやサービスでの利用
USDCは、オンライン決済にも利用可能です。特に海外ECサイトや海外のサービスを利用する際には、便利な決済手段となります。
■ 海外ECサイトでのUSDC決済
例えば、アメリカのオンラインショップで商品を購入する際にUSDCで決済できます。手順は以下の通りです。
- ECサイトで支払い方法として「USDC」を選択
- 近年ではUSDCを受け付けるサイトが増えています。
- 指定のウォレットアドレスを入力
- 支払い先のUSDCアドレスが表示されるので、自分のウォレットからそのアドレスに指定金額を送信。
- ネットワークの選択と送金
- ガス代の安いネットワークを選択すれば、低コストで支払いが完了します。
注意点
- 支払い先のネットワークに合わせる必要があります。
- ネットワークミスを防ぐためにも、事前確認は必須です。
3. USDCの決済方法:DeFiでのレンディング
レンディングサービスを活用すれば、USDCを貸し出して利息を得ることができます。代表的なサービスには、AaveやCompoundなどがあります。
- 手順
- USDCを自分のウォレットに入れる。
- AaveなどのDeFiプラットフォームに接続。
- USDCをプールに預け入れる。
- 預けた期間に応じて利息(APY)が付与される。
- 利回りの目安
2025年時点で、USDCの年利はおおよそ2〜5%程度。銀行預金の利率が0.01%前後であることを考えると、非常に高利回りであることが分かります。
注意点
- DeFiにはハッキングリスクがあるため、実績のあるプラットフォームを利用すること。
- 利用する前にスマートコントラクトのリスクなどを理解すること。
4. USDCの決済方法:ステーキングサービスの活用
多くの暗号資産取引所(例:Bybit、Binanceなど)では、USDCを預けることで利息を得る「ステーキング」商品が提供されています。
- 方法
- USDCを取引所のステーキング口座に預けるだけ。
- 預け入れ期間が長いほど、利息が高くなる傾向があります。
メリット
- 預けるだけでOK、簡単に始められる。
- 年利3%以上が期待できる商品もあり。
注意点
ハッキングリスクや出金制限のリスクは考慮すべきです。
関連記事:暗号資産ステーキングの始め方
■ その他の使い方
利用シーン 具体的な使い方 NFTの購入・売却 OpenSeaなどのNFTマーケットプレイスで、USDCを使ってNFTの購入・販売が可能。価値の安定性が強み。 クラウドファンディングや寄付 国際的なクラウドファンディングや寄付活動で、USDCによるスピーディな送金が可能。 ステーブルコインのスワップ DeFiプラットフォームでUSDCとUSDTやDAIなどのステーブルコインを交換。為替コストの削減に役立つ。 決済プラットフォームとの連携 今後、PayPalやVisaでのUSDC利用が拡大し、海外ECサイトでの支払いがより便利に。 ビジネスでの給与支払い 海外拠点の従業員への給与支払いにUSDCを利用。銀行送金よりも迅速でコストも安価。 トークンセールでの支払い IEOやIDOなどのトークンセールで、米ドル建て価格に対しUSDCでの支払いが便利。 保険金の即時支払い ブロックチェーン保険プロジェクトで、USDCによる即時の保険金支払いが可能。 ゲーム内通貨としての利用 ブロックチェーンゲーム内で、アイテム購入や報酬受け取りにUSDCを利用。国際的な取引にも活用。 ウォレットの分散保管 複数のウォレットでUSDCを分散保管し、セキュリティリスクを低減。 為替リスクヘッジ 円安リスクを回避するため、USDCに資産を移動し、資産価値の安定を確保。 国内取引所でのUSDC購入方法

対応取引所(2025年3月時点)
取引所名 USDC対応状況 備考・動向 SBI VCトレード ◎ 対応(2025年3月~) 国内初のUSDC取扱い開始 Coincheck △ 準備中(2024年提携発表) 2025年中に上場予定 GMOコイン・bitFlyer 他 × 未対応 今後の動向に注目 現在、日本国内でUSDCを正式に購入できるのは SBI VCトレードのみです。これまでは、国内取引所でビットコインなどを購入し、海外取引所へ送金してUSDCに交換する手順が必要でしたが、SBI VCトレードのサービス開始により 日本円から直接USDCを取得できるようになりました。
また、CoincheckもCircle社と提携しており、2025年中のUSDC上場が見込まれています。今後、他の取引所でも法整備に沿った形でステーブルコインの取扱いが進む可能性があります。
SBI VCトレードでのUSDC購入手順
- 口座開設と本人確認(KYC)
- SBI VCトレードの公式サイトで口座を開設
- 氏名・住所を登録し、本人確認書類を提出(オンラインで完結)
- 日本円の入金
- 取引所口座に円を入金(銀行振込、住信SBIネット銀行の即時決済対応)
- 振込後、数分~当日中に残高が反映
- USDCの購入
- 取引画面でUSDC/JPYの取引ペアを選択
- 成行注文(即購入) または 指値注文(希望価格で予約) が可能
- 1 USDC ≒ 1 USD のレートで購入
- USDCの保管・送金
- 購入したUSDCは取引所アカウントで管理
- 必要に応じて外部ウォレット(例:MetaMask)へ送金可能
- 送金時にはネットワーク手数料が発生
- 円への換金(必要に応じて)
- USDCを売却し、日本円に交換
- 取引所口座の円残高を銀行口座へ出金
SBI VCトレードでのUSDC取引の利便性
- 日本円 ⇄ USDC の直接交換が可能
- 入出金対応(ウォレット送金・銀行振込)
- DeFiや海外決済など外部サービスで活用可能
SBI VCトレードのUSDC取扱い開始により、国内ユーザーはよりスムーズにステーブルコインを利用できる環境が整いました。今後、他の国内取引所でも対応が進むことが期待されます。初めてUSDCなど暗号資産を購入する際は、少額から試し、送金テストを行うことを推奨します。また、取引所での管理だけでなく、自分のウォレットで保管する場合は秘密鍵の管理に注意しましょう。
USDCの使用に関するリスクとは?

USDCは高い透明性と規制順守で信頼性が高いとされますが、利用にはいくつかのリスクがあります。主なリスクを簡潔に解説します。
- 1. 発行体の信用リスク
- USDCはCircle社が発行していますが、万が一Circle社が経営破綻した場合、USDCの価値維持に影響が出る可能性があります。2023年には、預け入れ先銀行の破綻によってUSDCのペグが一時崩れた事例もあります。
- 2. システム・テクノロジーリスク
- USDCはブロックチェーン上で運用されるため、スマートコントラクトの不具合やハッキングリスクが存在します。また、ネットワーク混雑時には送金遅延や手数料の高騰が発生することもあります。
- 3. 価格ペグ崩壊リスク
- USDCは1ドルの価値を維持していますが、市場の混乱や信用不安が起きた場合には、ペグが一時的に崩れるリスクがあります。過去にはUSDTが信用不安で0.95ドルまで下落した事例もあります。
- 4. 中央集権リスク
- USDCは中央集権的に管理され、Circle社は規制当局の要請に応じてアドレスの凍結が可能です。誤って資産が凍結されるリスクもゼロではありません。
- 5. カストディリスク
- 取引所にUSDCを預けている場合、その取引所が破綻すれば資産を引き出せなくなるリスクがあります。セルフカストディ(自己管理)によってリスクを軽減できますが、秘密鍵の紛失には注意が必要です。
まとめ:

USDCが国内で上場を果たしたことは、日本におけるステーブルコイン活用の幕開けとなる重要な出来事です。初心者の方はまずUSDCの仕組みを理解し、小額の取引や送金から体験してみると良いでしょう。その安定した価値と使い勝手の良さに驚くはずです。中級者の方は、DeFi運用や他のステーブルコインとの比較を通じて、より賢い資産運用に活かせるでしょう。
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