かつてNFT取引市場でトップの座を誇っていたOpenSeaは、BlurやMagic Edenの台頭によりその地位を1度失いました。しかし、新たな機能を積極的に導入し、マーケットプレイスを全面的に刷新することで再起を図っています。
本記事では、OpenSeaの新機能や王座奪還の可能性、さらに同社が見据える未来についても詳しく解説します。
王座奪還に向けOpenSea 2.0をリリース予定
NFTマーケットプレイスのOpenSeaは2024年11月、同年12月に新プラットフォーム「OpenSea 2.0」をリリース予定だと明かしました。新プラットフォームは、技術、信頼性、速度、品質、そしてユーザー体験の向上を目的にゼロから再構築されており、デビン・フィンザーCEOによれば、より迅速で質の高い革新を図るためにチームを再編成し、新しい基盤で開発に専念しているとのことです。
We've been quietly cooking at @opensea
— Devin Finzer (dfinzer.eth) (@dfinzer) November 4, 2024
To really innovate, sometimes you have to take a step back and reimagine everything
So we built a new OpenSea from the ground up
Sails up in December ⛵️ https://t.co/HaU1bDm29S
新プラットフォームでは、ユーザーは公式ウェブサイトでWaitlistに登録することが可能です。OpenSea 2.0では、ユーザーが期待する独自トークンの発行や、独自のレイヤー2チェーンのローンチが示唆される一方、米国拠点の同社がエアドロップを行う可能性は低いと見られています。新機能としては、アカウント抽象化、NFTの所有元の共有、ミームコインの取引とミント、複数のブロックチェーンの統合、SocialFiとの連携などが予想され、ユーザーに幅広いオプションが提供される見込みです。またDappRaderによると、OpenSea 2.0には、OpenSea Proの機能が組み込まれており、Gemesis NFTコレクションが新プラットフォームで活用される可能性が高いとされてます。しかし、OpenSea Proは独立したサービスとしては存続しない見込みです。
- アカウント抽象化とは、スマートコントラクトアドレスをユーザーアカウントとして利用できる技術。同技術によって、スマートフォンのセキュリティモジュールに固有の暗号化キーを入れることで、複雑なシードフレーズを記録する必要がなくなる。このほかにもガス代の代払いが可能になるなど複数のメリットがある
Openseaがシェアを奪還
OpenSeaは、これまでに600万近いウォレットでの取引と、総取引量380億ドルに迫る実績を持ち、NFT市場の主要マーケットプレイスとしての地位を確立してきました。しかし、Magic EdenやBlur、OKX Marketplaceといった新たな競合が登場し、NFT取引がイーサリアムから複数のチェーンに広がる中、OpenSeaはその対応に遅れ、一時的にリードの座を失いました。それでも、2024年初頭には見事な取引量でランキング1位を取り戻しています。
DappRaderによると24年11月時点で、OpenSeaはNFT取引量とセールス数でトップを維持しており、過去30日間だけで100万点以上のNFTが売却され、取引量は2億1834万ドルに達しています。
OpenSeaの過去の失墜
OpenSeaは、2021年のNFTブームの際、月間取引量が50億ドルに達したものの、その後はNFT市場の冷え込みにより取引量と収益が大幅に減少しています。2024年10月には月間取引量が4600万ドルにまで落ち込み、過去最高取引量から99%減少しています。この状況に鑑み、OpenSeaは2023年11月に従業員の50%を解雇し、経営資源をOpenSea 2.0の開発に集中させる決断を下しました。フィンザー氏は既存の製品もサポートしつつ、新プラットフォームを公開テストし、ユーザーのフィードバックを反映させていく方針を示しています。
さらに、2024年8月には米国証券取引委員会(SEC)からウェルズ通知を受け、NFTが未登録の証券として取り扱われる可能性について警告を受けました。フィンザー氏は、SECのこの措置が業界のイノベーションにブレーキをかけると懸念を表明していました。
OpenSeaのシェア奪還に向けたこれまでの展開
これまでも同社は、競合他社の台頭を受けさまざまな戦略を展開してきました。OpenSeaは23年8月31日よりクリエイターのロイヤリティを実質的に撤廃する新規約を施行し、長年のクリエイター重視の方針からの大きな方針転換が見られました。さらに、同年4月にはプロトレーダー向けNFTアグリゲーター「オープンシー・プロ(OpenSea Pro)」のサービス提供を開始。一方で本稿執筆時点でOpenSea Proではポイントの獲得が可能だったが、現在はサイトから削除されています。
同年10月には、NFTマーケットプレイスのOpenSeaは、新たなクリエイター向けツール「OpenSea Studio」の提供を開始。同ツールは、クリエイターがノーコードでNFTプロジェクトの作成、管理、分析を行うことができ、創作活動に専念できる環境を提供することを目的としています。主な機能としては、NFTの自身のウォレットへのミント(発行)、OpenSea互換のブロックチェーン上でのNFT作成、クレジットカードやデビットカードでの決済などが含まれています。
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NFTオワコン化も影響か?
OpenSeaの低迷は単なるプラットフォームによって引き起こされたものではないかもしれません。NFTは2021年に世界的な盛り上がりを見せましたが、22年から23年にかけて暗号資産市場が低迷する中で「オワコン」とみなされる傾向になりました。BeInCryptoが23年9月に報じたデータによれば、NFTプロジェクトの約96%がすでに活気を失い、保有者の43%が現在損失を抱えている状況です。NFT保有者の平均損失率は44.5%に達し、一般的なNFTの寿命はわずか1.14年とされています。特に2023年にはNFTプロジェクトの約3分の1が消滅し、これまでで最も高い失敗率を記録しました。
コインゲッコーの24年第3四半期のレポートによると、2024年Q3では依然としてNFT市場全体で取引量が大幅に減少し、主要なマーケットプレイスが影響を受けました。Q2の取引量が31億ドルだったのに対し、Q3では12億ドルと、実に61.3%もの減少が見られました。特にイーサリアムでは、6月の取引量が3.23億ドルから9月には1.14億ドルに落ち込み、支配率も45%から35%に低下しました。Bitcoin NFTもピークから取引量が90%減少したものの、Ordinalsの取引シェアは依然としてソラナを上回り、25.2%を維持しています。
また同社の8月の調査によれば、暗号資産市場へ参加者の54.1%、つまり過半数以上が、NFTが近いうちに復活するとは考えていないと明かしました。特に、29.5%の回答者が「NFTが現在のサイクルで復活する」という意見に強く反対しており、NFTに対してやや弱気な24.7%を上回りました。これらのデータを参照すると、市場環境全体がOpenSeaの人気低迷に起因したことは否定できないでしょう。
Open Seaの見解
OpenSeaのデビン・フィンザー共同創設者兼CEOは、BeInCryptoとの独占インタビューで、NFT市場の現状と将来についてのビジョンを語りました。NFTが「オワコン」と囁かれる中、フィンザー氏は成長の余地を強調し、特にゲーミングと物理的価値のあるNFTへの注目が高まっていると指摘しました。
OpenSeaでは、つねに新しいユースケースが登場しています。OpenSeaをあらゆるタイプのNFTの拠点とすることは、コレクターの次の波を取り込むために極めて重要です
OpenSea共同設立者兼CEOのデビン・フィンザー氏
フィンザー氏はユーザー100万人増加に向けた戦略として、新規参入者のオンボーディング体験を簡素化することを掲げています。具体的には、メールアドレスのみでアカウント作成が可能となり、ウォレット作成や法定通貨での決済も簡単に行えるように改善しました。同氏はさらに、ゲーム業界がNFT採用を促進し、ゲーマーの摩擦のないオンボーディング体験が重要になると予測しています。
Off The Grid is now the Most Popular F2P game on @EpicGames!
— Off The Grid (@playoffthegrid) October 11, 2024
🦾 Join the mayhem: https://t.co/hMwIudqM9Y pic.twitter.com/Sqltl4mr3P
実際にNFTゲームへの注目は高まっており、NFTを活用したバトルロイヤルゲーム「Off The Grid(OTG)」は24年10月、人気ゲーム配信プラットフォーム「Epic Games Store」の無料ゲームカテゴリで人気ランキング第一位を獲得しました。
OpenSeaと競合他社の比較
OpenSeaがこれまで、Blur、Magic Eden、OKX NFT Marketplaceに市場シェアを奪われている理由は、手数料構造、ユーザーインセンティブ、および対応しているブロックチェーンの違いが影響していると考えられます。
プラットフォーム | 手数料構造 | ユーザーインセンティブ | 対応ブロックチェーン |
---|---|---|---|
OpenSea | 2.5%の取引手数料 | 特別なインセンティブなし | イーサリアム、ポリゴン、ソラナなど |
Blur | 0%の取引手数料 | BLURトークンのエアドロップ | イーサリアム |
Magic Eden | 2%の取引手数料 | Magic Eden Rewardsプログラム、低手数料、迅速な取引 | ソラナ、イーサリアム、ポリゴン、ビットコインなど |
OKX NFT Marketplace | 1.5%の取引手数料 | OKBトークンのリワード、特定キャンペーンによる手数料割引 | イーサリアム、ソラナ、BNB Chain、OKTCなど |
手数料構造の違い
OpenSeaは通常2.5%の取引手数料を課していますが、Blurは手数料ゼロ、OKX NFT Marketplaceは1.5%の手数料で提供しています。OKXはさらに特定のキャンペーンで手数料割引を行うことがあり、コスト面での魅力を高めています。OpenSeaも一時的に手数料をゼロにしたものの、競合の低コストのメリットには追いつけていません。
ユーザーインセンティブの違い
BlurはBLURトークンのエアドロップによってユーザーにリワードを提供しており、Magic Edenもリワードプログラムを実施しています。OKX NFT MarketplaceもOKBトークンのリワードやキャンペーンによる手数料割引を提供しており、取引量を増やすインセンティブが整っています。一方、OpenSeaはこうしたインセンティブを欠いており、報酬を求めるユーザーが他のプラットフォームへ流出する要因となっています。
対応ブロックチェーンの違い
Magic Edenのビットコイン対応やOKX NFT Marketplaceの多様なチェーンをサポートは、ユーザーに多様な選択肢を提供しています。一方、OpenSeaは主要ブロックチェーンのサポートが一歩遅れがちで、ユーザーにとって選択肢が限られている状況となっていました。
これらの要因が複合的に影響し、OpenSeaはBlur、Magic Eden、OKX NFT Marketplaceといった競合に対し、市場シェアを徐々に奪われていたと考察できます。
ミームコイン導入により人気回復を狙うか?
OpenSea 2.0ではPump.funの成功を受け、トークンローンチパッドの導入が検討されている可能性があると報じられています。これにより、ミームコインのようなNFT以外の資産も取り扱うことができるようになるかもしれません。その場合は大きな収益回復が見込めるかもしれません。Pump.funではローンチわずか10ヶ月で1億2000万ドルの収益を獲得しています。その背景には簡単に市場の注目を集めるミームコインを作成できる点にあります。
ミームコインは、特に若年層の間で伝統的な金融システムへの反発とともに「公平性」や「透明性」を重視した投資先として市場で注目されています。バイナンスリサーチの24年11月のレポートによると24年時点で、ミームコイン購入者の94%が40歳未満であり、暗号資産市場の若年層を中心にした動きが継続的に広がっています。
ミームコイン市場は急成長を続けており、資金の流入速度も非常に速いものとなっています。具体例として、2024年までに新規ミームコインの75%以上が誕生し、2024年に発売されたプロジェクトの75%を占めました。しかし、その高いリスクも指摘されており、約97%のミームコインが短命で消滅している現状からも、持続的な価値を提供するためにはさらなる差別化が必要です。
実際、2022年以降ミームコインの合計時価総額は、Total 3(BTC、ETH、ステーブルコインを除く仮想通貨全体の時価総額)に対する割合として約4%から2024年には11%へと、ほぼ3倍に増加しました。ただし、2021年の水準にはまだ届いていません。
第3四半期においてもミームコインが市場を牽引
コインゲッコーの24年第3四半期のレポートによると、2024年Q3の暗号資産市場で、ミームコインが最も注目されたカテゴリとなり、全体のトラフィックシェアのうち17.05%を占めました。ミームコイン関連カテゴリ全体のシェアは31.8%に達し、投資家の間で強い関心を集め続けています。特にソラナエコシステム内のミームコインも人気を集め、個別で11.41%のシェアを持つなど、暗号資産市場で存在感を発揮しています。
同社によると、このミームコイン人気は2024年上半期と同様の傾向であり、価格の上昇と話題性により投資家の注目が集まっています。また、ソラナやベースといった人気ブロックチェーンエコシステムが、ミームコインと関連したプロジェクトを含むことで、合計22.1%の市場シェアを獲得し、ミームコイン人気の一因となっています。これらの背景を加味すると、OpenSeaのローンチパッドの導入は同社の人気回復の一助となるかもしれません。
関連記事:バイナンスリサーチ、24年のミームコインブームを分析
まとめ:今後のOpenSeaの動向に注目
OpenSeaは、かつてNFT取引市場の王者でしたが、BlurやMagic Edenなどの競合台頭によってその地位を一時失いました。しかし、2024年12月にリリース予定の新プラットフォーム「OpenSea 2.0」で、同社は再びシェア奪還を獲得しつつあります。OpenSea 2.0は技術や速度、ユーザー体験を大幅に向上させ、ユーザーのニーズに応える新機能を積極的に導入する予定です。また、手数料やユーザーインセンティブの面でも競合との差を埋める狙いがあり、ミームコインなどのトークンローンチパッドの導入も視野に入れています。NFT市場が低迷する中で、OpenSeaは再起を図り、NFT業界における影響力を取り戻せるのか今後の動向に注目です。
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