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ソニーが開発するレイヤー2ブロックチェーン「Soneium」とは?

25 mins
更新 Shota Oba

ヘッドライン

  • ソニーはLayer2ブロックチェーン「Soneium」を通じ、Web2とWeb3を結びつける革新技術でゲームや金融など多分野への展開を試みています
  • SoneiumはOptimistic Rollup技術を採用し、高速取引と低コストを実現。テストネット「Minato」を基盤に、メインネット移行を計画中です
  • Samsungやアスターネットワークなど多くのパートナーと連携し、分散型エコシステム構築を推進。Web3普及の基盤を強化しています

日本の大手企業Sonyがついにブロックチェーン産業に本格参入しました。SonyはLayer 2ブロックチェーン「Soneium」を掲げ、Web3の可能性を大きく広げようとしています。高速なトランザクション処理や低コストの取引を実現する同技術は、ゲームや金融、エンターテインメントなど多岐にわたる分野で注目を集めています。さらに、Samsungをはじめとするグローバル企業との連携を通じて、Web2とWeb3を結びつける新しいエコシステムの構築が進行中しています。

本稿では、「Soneium」の革新性やその未来への可能性について初心者投資家にもわかりやすく掘り下げていきます。

ソニーが開発するレイヤー2ブロックチェーン「Soneium」とは?

Sonyが提供する新しいLayer2パブリックブロックチェーンであるSoneiumは、Web3テクノロジーを日常生活に組み込むことを目指しています。このプロジェクトは、分散型アプリケーション(dApps)の開発と利用を促進し、Web2とWeb3のギャップを埋める革新的な基盤を提供します。

SoneiumはEthereum Layer1の手数料構造を継承しており、EIP-1559に基づく動的な料金メカニズムを採用しています。これにより、ネットワークの混雑状況に応じて基本手数料が変動し、ユーザーは取引コストを最適化できます

またプロジェクト開発にあたり、韓国の大手電機メーカーSamsungも、Soneiumの共同開発会社であるWeb3スタートアップ「Startale Labs」への投資を通じて支援しています。同提携により、ソニーはゲーム、金融サービス、音楽、エンターテインメントなど、幅広いセグメントにおいてWeb3アプリケーションを展開する基盤を整えています。

アスターネットワークの創設者兼、Sony Block Solutions Labs Directorの渡辺創太氏はSoneiumに関して以下のように語っています:

Soneiumは世界をリードしこのビジョンを実現できる大きな可能性があると信じており、国や地域、業界の垣根を超えて、様々な開発者や企業の皆さんと協業していきたいと考えています

渡辺創太:アスターネットワークの創設者兼Sony Block Solutions Labs Director

EIP-1559は、Ethereumの手数料モデルを改良した提案で、動的な基本手数料(Base Fee)を導入し、バーン(焼却)機能を追加することで、ガス代の予測性向上とETHのデフレ傾向を促進します。

関連記事:ソニーのレイヤー2ブロックチェーンSoneiumがCoinbaseのベースネットワークに対抗

プロジェクトの背景と目的

インターネットは利便性をもたらす一方で、大量の情報と経済圏が特定の企業や組織に集中する中央集権化を引き起こしてきました。Web3は、この集中した力を分散化することで、より透明で公平なインターネット環境を構築することを目的としています。しかし、現状ではWeb3技術とサービスの利用者は一部のコアユーザーに限られており、広範な普及には至っていません。そこで同プロジェクトは以下の3つの主要目的を掲げています:

  1. Web2とWeb3の統合: 現在のインターネット技術の利便性を維持しつつ、Web3の特徴である分散性と透明性を組み合わせる。
  2. コスト効率とスケーラビリティ: EthereumのLayer1のセキュリティを活用しながら、Optimistic Rollup技術を採用してトランザクション処理速度を向上させ、手数料を削減。
  3. 創造性の最大化: 開発者やクリエイターにとって使いやすいプラットフォームを提供し、自由な創造と新しいビジネスモデルの構築を支援。

Layer2とは何か

Layer2は、既存のLayer1ブロックチェーン(例えばEthereum)の上に構築され、スケーラビリティや取引速度、コスト効率を向上させるためのプロトコルです。Layer 1が基盤となるセキュリティと分散性を提供する一方、Layer2はトランザクションを効率的に処理する役割を果たします。

Layer2の主な特徴

  1. スケーラビリティの向上: Layer2はオフチェーンでのトランザクション処理を可能にし、Layer1の負荷を軽減します。
  2. 低コスト取引: Layer1でのトランザクションよりもガス料金を大幅に削減。
  3. 迅速な取引速度: トランザクションの処理時間が短縮され、リアルタイムでの応答が可能。

SoneiumはこのLayer2技術を活用し、Optimistic Rollupを採用することで、これらの利点を最大限に引き出しています。

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Optimistic RollupとOP Stack

出典:L2Beat

Optimistic Rollupは、Ethereumのセキュリティを維持しつつ、トランザクションの効率化を実現するLayer 2ソリューションです。Optimismは、L2チェーンとしてはTVLランキングで3位に位置しており、現在1位のArbitrumとは依然として大きな差があります。しかし、Optimismが提供するオープンソースのLayer 2開発フレームワーク「OP Stack」により、Optimismエコシステム全体として見ると状況は異なります。2位のBaseや5位のBlastなど、OP Stackを基盤とした他のチェーンのTVLも合算されるため、Arbitrumを大きく上回る勢力を形成しています。

Optimistic Rollupの仕組み

Optimistic Rollupは、トランザクションデータをバッチ処理し、それをEthereum Layer 1にまとめて投稿します。この仕組みにより、以下の利点があります:

  1. ガス料金の削減: バッチ処理によって個々のトランザクションごとにガス料金を支払う必要がなくなります。
  2. 高速処理: トランザクションはオフチェーンで実行されるため、処理速度が向上します。
  3. セキュリティの確保: データの整合性はEthereum Layer 1で検証され、不正なトランザクションは排除されます。

OP Stack・Superchainエコシステムとは

出典:thirdweb

OP Stackは、Optimistic Rollupを実現するためのモジュール式フレームワークで、開発者が簡単にLayer 2ソリューションを構築できるツールを提供します。Soneiumは、このOP Stackを採用し、スケーラブルで開発者フレンドリーなプラットフォームを構築しています。OptimismのSuperchainエコシステムでは、OP Stackを基盤としたLayer2ブロックチェーンネットワーク間の相互接続性を強化しています。これにより、セキュリティや通信層の共有が可能となり、スケーラビリティが向上するとされています。

アスターネットワークとSoneiumのOP Stack採用、そして統合へ

アスターネットワーク(ASTR)は、元々Polygon CDKを採用していましたが、OP Stackの信頼性と互換性を評価し、Soneiumのエコシステムへの統合を決定しました。この移行は、以下の理由によります:

  1. 相互運用性の向上: OP Stackは他のLayer 2ソリューションとの互換性が高く、より広範なエコシステムを形成可能。
  2. 信頼性の強化: OP Stackは、開発者にとって使いやすく、エラー率が低いことで知られています。
  3. コミュニティの拡大: アスターとSoneiumの連携により、両方のコミュニティが統合され、ユーザー基盤が拡大。

アスターとSoneiumの移行について

Soneiumのローンチに伴いアスター側はアスターzkEVMをSoneium側に移行することを正式に発表しました。同移行は段階的に行われていきます。これによりアスターの開発者たちは新しい環境での開発を推奨する形となります。この移行には数ヶ月から1年程度の時間を要すると見込まれており、移行期間中も、ユーザーのアセットが失われることはないとされています。

ユーザーへの影響と移行のサポート

移行に際しては、以下のようなサポートを提供します:

  • 流動性の移転支援:NFTやトークンの移行をサポート。
  • 開発者への推奨:新規開発者にはSoneium上での開発を推奨。
  • アドレス再配布:NFTの場合、同じアドレスに新たに配布。

また、Layer 2のネットワーク運営はシークエンサーによって行われます。ソニーの場合、運営はソニーグループとスターテールによるジョイントベンチャー「Sony Block Solutions Labs」が担当します。一方で、アスターGKEVMの運営はこれまでアスターファウンデーションが担っていましたが、こちらも段階的に閉鎖していく予定です。

今後のアスターとSoneiumの関係

アスターZKEVMからSoneiumへの移行は「アスター・エボリューション」の一環として進行しています。この移行プロセスは「フェーズ1」と呼ばれ、2024年から開始されました。さらに、「フェーズ2」は2025年中に発表予定です。

ASTRは、Soneium上で以下のようなユーティリティを持つ形に進化します:

  • ガス代の支払い:Soneium上で、Ethereum(ETH)ではなくASTRを使用してガス代を支払うことが可能に。
  • dappsとの連携:Soneium上のdappsプラットフォームでASTRを活用。

また、Soneiumのシークエンサー運営による収益(トランザクションレベルの利益)は、スターテールとのジョイントベンチャーにより適切に分配されます。これにより、Soneiumとアスターのネットワークは安定性を向上させ、さらなる発展が期待されています。

関連記事:CircleのUSDCがSuiとSoneiumでローンチ=流動性とクロスチェーン送金を強化

Soneiumの具体的なユースケース

Soneiumは、以下のような分野で活用されることが期待されています。

1. ゲーム分野

  • NFTの統合: プレイヤーはゲーム内アイテムをNFTとして取引可能。
  • リアルタイム取引: 高速なトランザクション処理でシームレスなゲーム体験を実現。

2. エンターテイメントとメディア

  • 著作権保護: 音楽や映像の権利をトークン化
  • クリエイター支援: 中間業者を排除し、直接的な収益分配を実現。

3. サプライチェーン管理

  • 透明性の向上: 商品の追跡や検証を効率化。
  • 不正防止: ブロックチェーン上でのデータ改ざんを防止。

4. 金融サービス

  • 分散型金融(DeFi): 低コストで信頼性の高い金融取引を実現。
  • クロスボーダー送金: 安価で迅速な国際送金をサポート。

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Minatoテストネット

出典:Soneium

テストネットであるMinatoは、Soneiumの技術的な基盤を試験する場として設計されました。本稿執筆時点で日別のトランザクション数は48万7000件を超えています。さらに、ユニークアドレスは24年12月時点で1000万アドレスに到達しました。

Minatoの主な特徴

  1. オープンな開発環境: 開発者とクリエイターが自由にアプリケーションを構築可能。
  2. リスクフリーの環境: 試験用トークンを使用することで、安全にテストを実施可能。
  3. フィードバックの収集: ユーザーからの意見を反映し、システムを改善。

初期成果

  • ユーザー数: 初期段階での登録者数の増加。
  • トランザクション数: 高速なトランザクション処理を実現。
  • ガス料金: Layer 1に比べて大幅に削減。

関連記事:暗号資産におけるメインネットとは?

Minatoテストネットの特徴

1. シンプルな接続手順

Minatoは、以下の主要ウォレットと簡単に接続できます:

  • MetaMask: ブラウザ拡張機能を使って数クリックでネットワークを切り替え可能。
  • WalletConnect: モバイルデバイスを使った接続も対応。

開発者やユーザーは公式ドキュメントを参照し、手軽に利用を開始できます。

2. データ分析ツール

MinatoはBlockscoutと連携し、以下の情報を確認可能なブロックチェーンエクスプローラーを提供しています:

  • トランザクション履歴: 詳細な取引内容やステータスの表示。
  • ガス料金の分析: 平均ガス価格や使用率などのデータをリアルタイムで提供。
  • ネットワーク指標: ユーザー数やトランザクション数などの成長データを可視化。

3. テスト用トークンの利用

Minatoは、実際の資産を使用せずにテストを行うための環境を提供しています。これにより、リスクを最小限に抑えながらアプリケーションを試験できます。

4. 早期ユーザー体験

Minatoに接続することで、ユーザーは新しいアプリケーションをいち早く試し、意見を開発者に提供することができます。このプロセスは、製品の品質向上に役立ちます。

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Soneiumのこれまでの主なパートナーとその役割

デジタルノマド
  1. アスターネットワーク
    アスターネットワークは、スマートコントラクトのマルチチェーン対応を特徴とするプラットフォームで、Soneiumのエコシステムに重要な役割を果たしています。特に、アスターはソニュームの基盤技術であるOPスタックを採用し、以下を実現しています
    • 相互運用性の向上: 他のレイヤー2プロトコルやブロックチェーンとの連携を可能にする
    • コミュニティの統合: Soneiumとの提携により、ユーザー基盤を拡大し、アスターコミュニティを新たなWeb3プロジェクトに導入
  2. チェーンリンク
    分散型オラクルプラットフォームであるチェーンリンクは、Soneiumにリアルタイムデータを提供します。主な役割は以下の通りです
    • データの正確性: DeFiやNFTマーケットプレイスの価格情報を正確かつ迅速に提供
    • セキュリティの向上: 分散型のデータ提供により、信頼性を担保
  3. アルケミー
    アルケミーは、ブロックチェーン開発ツールを提供する企業であり、SoneiumのdApps開発環境を支援しています
    • APIとダッシュボード: 開発者が迅速にプロジェクトを構築できるツールを提供
    • スケーラビリティ: 高度なインフラで開発プロセスを効率化
  4. サークル
    USDコインUSDCを開発したサークルは、Soneiumの取引環境を大幅に改善します
    • 安定性: USDCの統合により、取引の信頼性と透明性を確保
    • 国際的な利用: グローバルな金融取引のハードルを下げる
  5. ザ・グラフ
    データインデックスプロバイダーとして、ザグラフは以下の役割を担っています
    • 迅速なデータ検索: dApps開発者が必要なデータを効率的に取得可能
    • 開発者サポート: 高度なデータ分析機能を提供
  6. Pythネットワーク
    Pythネットワークは、高精度な市場データを提供する分散型オラクルネットワークで、Soneiumに以下の貢献をしています
    • リアルタイム価格フィード: DeFiアプリケーションや分散型取引所での利用
    • グローバル対応: 複数のブロックチェーンでの互換性を持つデータサービスを提供

Soneiumの今後の展望

メインネットへの移行

Soneiumは現在のMinatoテストネットを基盤に、以下の段階を踏む予定です:

  1. フィードバックを基にした改良: テストネットで得られた知見を基に、メインネットに向けた機能改善。
  2. ユーザーと開発者の拡大: 初期ユーザー層と開発者コミュニティをさらに拡大し、エコシステムの活性化を図る。
  3. 新たなユースケースの開発: エンターテイメントや金融以外の分野、例えば教育や医療分野への展開。

長期的な影響

  • ゲーム産業への浸透: NFTを活用した新たなゲームエコシステムの構築。
  • 分散型エンターテイメント: クリエイターが直接収益を得られる新しいモデルの確立。
  • Web3技術の普及: 既存のWeb2サービスを進化させ、分散型インターネットの普及を促進。

まとめ:Sonyが手掛けるブロックチェーンプロジェクトに今後も注目

Soneiumは、Layer2ブロックチェーンとしてEthereumのスケーラビリティ問題を解決するだけでなく、多岐にわたるユースケースを通じてWeb3の未来を切り開いています。その技術的基盤であるOP StackやOptimistic Rollupの採用は、効率的かつスケーラブルな環境を実現し、多くの開発者や企業にとって理想的なプラットフォームの提供を試みています。

さらに、パートナーシップを通じて強化されたエコシステムは、既存のブロックチェーン技術の枠を超えた新たな可能性を示唆しています。Soneiumはその技術革新とSonyのリソースを活用し、Web3の普及を加速させ、次世代のデジタル体験を提供するでしょう。

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Shota Oba
国際関係の大学在籍中に国内ブロックチェーンメディアでのインターンを経て、2つの海外暗号資産取引所にてインターントレーニング生として従事。現在は、ジャーナリストとしてテクニカル、ファンダメンタル分析を問わずに日本暗号資産市場を中心に分析を行う。暗号資産取引は2021年より行っており、経済・社会情勢にも興味を持つ。
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