「日本のWeb3は他国と比べて遅れを劣っているのだろうか?」そう思ったことのある人は少なくないだろう。2015年にマウントゴックス事件、17年にはコインチェック事件を経験した日本は現在、政府を巻き込みながらWeb3の推進に取り組んでいる。昨年のFTX事件発生時には、日本の規制環境によりFTXジャパンの資産が保護されていたことにより、業界でも規制環境の整った国として認知された。一方、日本は北朝鮮から2017年から22年までの間、全世界の暗号資産ハッキング被害総額の30%に相当する980億円がハッキングされるなど課題も山積している。日本のWeb3業界は世界から見てどのように見えているのだろうか?
日本最大級の国際Web3カンファレンス「WebX」が7月25・26日に開かれ、日本国内だけでなく世界各国のWeb3業界の要人が来日。その中で、Web3Foundationのバートランド・ペレスCEOも参加。同氏はMeta(旧フェイスブック)が主導していたブロックチェーンベースの決済システムであるDiem(旧Libra)の最高執行責任者を務めていた。21年より現職を務める。BeInCryptoJapanは、Web3.0の実現を目指し、ポルカドット(DOT)、KUSAMA(KSM)の推進を行う非営利団体Web3Foundationのバートランド・ペレスCEOに独占インタビューを行った。

Q . Web3Foundationについて教えていただけますか?
バートランド・ペレスと申します。Web3FoundationのCEOを務めています。同財団はスイスに位置しており、17年にイーサリアム(ETH)の共同創設者のギャビン・ウッド元CTOによって設立されました。我々財団の目的は、Web3の分野を成長さを支援することです。様々な支援を実施しており、特に、私たちがサポートしているブロックチェーン、ポルカドットのエコシステムの成長をサポートしています。
Q .日本は他国と比べて、暗号通貨の普及が難しい状況とも言えますが、日本のWeb3産業に対する印象は?
日本はマウントゴックス事件を通じて暗号通貨の大きな教訓を得ました。この事件は多くの影響をもたらした中で、特に規制の面での取り組みが目立っています。マウントゴックスを受けて、日本はその経験を活かし、規制環境を整備してきました。現在の規制の体制は、私の視点から見ると、非常に整ったものと感じます。規制当局は同じミスを繰り返さないよう努力しており、その姿勢は称賛に値します。
多くの人々にとって、マウントゴックス事件は痛烈な打撃でした。しかし、事件を契機に、従来暗号通貨に対して否定的だった人々の認識も変わりつつあります。日本の規制体制は、Web3の可能性を認識し、そのリスクを低減する方向で進化しています。日本は革新の国であり、Web3もその一部として受け入れられるべきです。特に、ゲーム業界やSonyのようなテクノロジー企業が存在する日本は、Web3の取り組みにおいても先進的な役割を果たす可能性があります。
しかし、明確な法的枠組みの不在はビジネスにおける大きなリスクとなり得ます。未来の規制状況が不透明なままでは、新技術への投資は控えられがちです。適切な規制が整えば、新しい技術分野での経済的機会が広がり、クリエイターやビジネスリーダーの可能性も拡大します。
スイスは、18年に初めて世界で明確な枠組みを確立した国でした。その結果として、Web3の多くのプロジェクトがスイスを拠点としています。人々は常に、スイスが課税率の低さのために選ばれると考えがれがちですが、実際のところ、それは全く事実ではありません。実際に最も重要なのは、規制の枠組みです。適当な枠組みを提供するのが、企業の設立者やクリエイターが、訴訟や規制上の問題に直面することなく、明確な範囲内の事業を運営可能にし、イノベーションや新しい企業の創出を大いに推進してるのです。
Q .ポルカドットはAstarとの関係は深いですが、Astarは日本の暗号資産業界で活躍しており、現在はトップのプロジェクトの1つとされています。Asterについて、いかがお考えですか?
我々はAstarの取り組みを高く評価しています。Astarが採用しているアプローチは、この分野での成功のための素晴らしいモデルとして見ています。我々は基盤、インフラ、研究、助成金といったサポートを提供する一方、具体的な地域や国における事業の発展については、創業者やクリエイターに委ねています。Astarのようなプロジェクトは、我々が提供するツールを適切に活用し、特定の地域でどう展開するかを実証しています。彼らは日本の市場を深く洞察し、その特性を有効に活用しています。
創業者やクリエイターたちは、彼ら自身の地域や国の特定のニーズや文化、法的背景を最もよく理解しています。その知識を基に、彼らが築く事業はその地域に最も適した形となります。我々がAstarのプロジェクトに対して感じる誇りは、彼らが日本市場において実現していることに対するものです。我々の目指すところは、世界中でこのような成功事例を増やしていくこと。それこそが真のイノベーションを生む土壌となるからです。
我々の真の願いは、強固なコミュニティの形成です。コミュニティの一員一人ひとりが、その成長に貢献する役割を果たしています。Astarはその素晴らしい実例として挙げられ、彼らの存在により、日本のエコシステムが拡大し、大手企業との連携も増えてきました。このエコシステムの成長こそ、我々が目指す方向性であり、最も持続可能な形での発展の方法だと信じています。
Q .近い将来、ポルカドットの日本ローカライズを進める予定はありますか?
具体的な答えはまだ出せませんが、我々は現在、規制の分野での積極的な関与を検討しています。規制対応や、大学との連携をはじめとした現地での教育活動の推進のため、さらなる投資やプレゼンスが求められる場合、我々は迅速に対応します。我々が構築してきたエコシステムの成長を継続するために、これは不可欠です。
具体的な時期や方法については、今はまだ明言できませんが、日本がWeb3の成長における主要な国の1つであることに、我々は確信を持っています。
Q .香港やシンガポールも暗号資産の採用を積極的に行っています。これらの国と比較して、どのように差別化すべきか、また暗号資産の採用をどのように進めるべきだと考えますか?
国ごとの特性は異なるものですね。差別化する必要はないと思いますが、競争力を維持しつつ適切に進展させることが重要です。これは単に規制環境が良い国だけが成功するというシナリオを意味するものではありません。
短期的な視点での競争思考は持続性に欠けると考えます。各国は独自の歴史、政治的背景、成長戦略を有しています。それを踏まえた上で、私が重要だと感じるのは、各国がどのように自国の特性や歴史に合わせて、才能を引き留め、発展を後押しするような規制や法的環境を築いていくかということです。
たとえば、日本の優れた開発者が、国内の規制の制約からサービスを提供するのが難しく、シンガポールへと移住するのは避けたい状況です。彼らには日本での継続的な活躍と発展に向けた貢献を期待しています。当然、どこでの活動が適切かは国ごとに異なるでしょう。日本は世界の大きな経済勢力の1つであり、シンガポールとは異なる独自の条件や視点を持っています。それゆえ、各国の独特な文脈を尊重しつつ進めることが重要だと考えます。
半減期に向けてどのような動きをするかが正念場となる日本市場
日本の暗号資産業界は事業推進のため政府とともに積極的に規制フレームワークの改革に取り組んでいる。6月1日の改正資金決済法施行により、日本円や米ドル等の法定通貨を裏付けに持つステーブルコインが日本でも発行・流通が可能になり、同日にはマネーロンダリング対策の強化を目指し、犯罪収益移転防止法(トラベルルール)を施行していた。加えて、税制改革やレバレッジ取引の規制改正にも取り組んでおり、日本ブロックチェーン協会(JBA)は7月28日、日本暗号資産ビジネス協会は(JVCA)は31日、税制検討部会を中心とし、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)とともに同31日に暗号資産(仮想通貨)に関する税制改正要望を政府に提出していた。なお、暗号資産(仮想通貨)取引所ビットバンクが7月12日に公開した「Web3に関する認知度アンケート調査」によれば、日本のWeb3への認知度は約3割に留まっている。
インタビュー・文:Shota Oba
写真:Web3 Foundation
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