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メタバースにとってWeb3が重要な理由とは?

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著者:
Shota Oba

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編集:
Shigeki Mori

21日 9月 2024年 08:45 JST
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近年、デジタル技術の急速な発展により、「メタバース」と「Web3」という2つのキーワードが注目されています。どちらも次世代のインターネットやデジタル社会を象徴する存在として、多くの業界で注目されていますが、その関係性や相違点は一般にはまだ明確でない部分も多いです。

本記事では、メタバースとWeb3の定義、それぞれの特徴、そして両者の関係性と実際の活用事例について詳しく解説します。

メタバースとは

定義と起源

メタバースは、仮想空間に構築された三次元の世界を指し、ユーザーはアバターを通じてその空間に参加し、他のユーザーとコミュニケーションを取ったり、エンターテインメントやビジネス活動を行うことができます。「メタバース」という言葉は、1992年にニール・スティーヴンスンの小説『スノウ・クラッシュ』で初めて登場し、その後のデジタル技術の進化とともに実現に向けた動きが加速しました。

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定義:

  • 「メタ(Meta)」:超越、超える
  • 「ユニバース(Universe)」:宇宙、世界

メタバースの種類

メタバースの種類特徴
ソーシャルメタバース主に交流やコミュニケーションを目的とした仮想空間。例:Second Life、Horizon Worlds
ゲームメタバースゲームプレイを中心とした仮想空間。例:Fortnite、Roblox、Minecraft
商業メタバースビジネスや商取引を目的とした仮想空間。例:Decentraland、The Sandbox
教育・学習メタバース教育やトレーニングに利用される仮想空間。例:VirBELA、Engage
産業メタバース製造業や設計などの産業向けに利用される仮想空間。例:NVIDIA Omniverse
医療メタバース医療シミュレーションやトレーニングを目的とした仮想空間。例:SimX

現在の事例と活用

メタバースの活用は、現在ゲーム、ビジネス、エンターテインメントを中心に急速に拡大しています。特に、2020年以降のリモートワーク普及が後押しし、多くの企業が仮想空間の可能性に注目しています。現在のメタバースの活用事例は、多岐にわたります。まず、2020年4月には「Fortnite」で仮想コンサートが開催され、エンターテインメントの新しい形として注目を集めました。続いて、2023年3月、日産自動車が米国特許商標庁に4件のWeb3関連商標を出願し、メタバース空間でのバーチャルグッズや自動車の販売を目指す動きが見られました。

2023年12月には、国内メタバースプラットフォーム「cluster」がG7知財庁長官級会談をメタバース上で実施し、デジタル領域における知的財産権の保護について議論されました。さらに、2024年3月には日立製作所と米NVIDIAが協力し、産業向けメタバースの開発を発表しました。電力プラントや鉄道の保守点検をデジタル上で再現し、産業分野におけるメタバース技術の活用が進んでいます。このように、メタバースはエンターテインメントから産業、知的財産の保護まで、さまざまな分野で活用が進んでいます。

関連記事:日立、NVIDIAとともにメタバース開発へ

Web3とは?

Web3は、インターネットの次世代の形態とされ、ブロックチェーン技術を基盤にして分散型のネットワークを提供します。これにより、データや資産が一部の巨大企業に依存することなく、個々のユーザーによって管理される仕組みが実現されます。

インターネットの進化(Web1.0からWeb3まで)

時代特徴
Web1.0一方向の情報提供(静的ウェブ)ホームページ、ポータルサイト
Web2.0双方向の情報共有(ユーザー生成コンテンツ)SNS、ブログ、YouTube
Web3分散型インターネット(ブロックチェーン)分散型アプリケーション、仮想通貨、NFT

Web3の特徴と目的

  • 分散化:データやサービスが中央集権的なサーバーではなく、ブロックチェーン上で管理される。
  • ユーザー主導:個人がデータの所有権を持ち、プライバシーやセキュリティが強化される。
  • スマートコントラクト:契約や取引が自動的に実行され、中間業者を排除。

目的:

Web3は、巨大テック企業によるデータ独占や個人情報の不適切な利用といったWeb2.0の課題を解決し、ユーザーが主導権を持つ新しいインターネットを構築することを目指しています。

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関連記事:Web3.0の始め方とメリット・将来性を解説

メタバースとWeb3の関係性|お互いが重要な理由

メタバースとWeb3は、それぞれ異なる目的を持ちながらも、密接に関連しています。メタバースは主に仮想空間での体験や交流を重視していますが、Web3はその基盤となる技術的なインフラを提供します。

相違点と共通点

相違点:

  • 目的の違い:メタバースは仮想空間での体験や交流を重視するのに対し、Web3はインターネットの構造やデータ管理の仕組みを変革することを目的としています。
  • 技術的基盤:メタバースはVR/ARなどの技術が中心で、Web3はブロックチェーン技術が核となっています。

共通点:

  • 分散性の追求:どちらも中央集権的な管理からの脱却を目指しており、ユーザー主体のエコシステムを構築。
  • デジタル経済の発展:仮想通貨やNFTを活用した新しい経済活動が共通して重要視されています。

デジタル資産の所有と取引

Web3の中心的な技術であるブロックチェーンは、メタバース内でのデジタル資産の透明性や所有権の保証に貢献しています。従来のオンラインゲームや仮想空間では、資産は中央集権的な管理が行われていましたが、Web3技術により次のような変革が起きています。

  • デジタル上での所有の証明:ブロックチェーンを用いることで、NFT(非代替性トークン)として資産の所有が証明され、唯一無二のデジタルアイテムが取引可能に。
  • 取引の自由化:ユーザーは仮想空間内でNFTとしてデジタル資産を売買し、リアルな経済活動が実現されます。

次の表は、Web3技術を取り入れたメタバースプラットフォームの例です。

プラットフォーム特徴使用技術
Decentraland仮想空間での土地や建物をNFTとして売買可能。ユーザーが所有権を持つ。NFT
The Sandboxユーザーが作成したコンテンツや土地の所有権をNFTで管理し、自由に取引可能。NFT
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分散型インフラと透明性

Web3のもう1つの重要な貢献は、分散型のネットワークインフラです。従来、メタバースの運営は企業によって中央集権的に行われていましたが、Web3技術を活用することで、次のような透明性とユーザー参加が実現します。

  • データの透明性:ブロックチェーン上の取引や所有履歴は、公開されており誰でも確認できるため、不正や詐欺が防止されます。
  • ユーザー主導のガバナンスDAO(自律分散型組織)が導入され、ユーザーがメタバースの運営方針や機能追加に参加できる仕組みが整備されています。

トークンエコノミーと仮想経済活動

Web3技術により、メタバース内での経済活動が現実世界と結びつきます。トークンエコノミーが導入されることで、ユーザーは仮想空間内で次のような取引を行い、リアルな利益を得ることが可能です。

  • ゲーム内資産のトークン化:ユーザーが取得したアイテムや土地をトークン化し、それを売買や投資に活用できます。
  • 仮想通貨とリアルな利益:メタバース内で得た資産は、暗号資産として取引され、現実の通貨に換金できます。例えば、Axie Infinityでは、ユーザーがゲームをプレイして稼いだトークンを現実の通貨に換金することが可能です。

DAOによるガバナンス

DAOはWeb3技術を活用して、分散型のガバナンスを実現しています。これにより、仮想空間の運営や意思決定にユーザーが積極的に関与できるようになります。

  • 投票権:DAOを通じて、ユーザーはメタバースの運営に関する重要な決定に投票で参加することができます。
  • 透明性:意思決定プロセスはすべてブロックチェーン上に記録されるため、ガバナンスは非常に透明性が高くなります。

関連記事:Web3とメタバースの相性がいい理由と将来性について

課題と将来性

メタバースとWeb3にはまだ多くの課題が存在します。技術的には、インフラの整備やブロックチェーンのスケーラビリティの向上が求められます。また、法的な規制やセキュリティの問題も大きな課題です。たとえば、仮想通貨やNFTに関する法整備が進んでいない地域も多く、ユーザーの保護や税制の整備が必要です。

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技術的・社会的な課題

  • 技術的ハードル
    • デバイスの普及:高価なVR機器や高性能PCが必要。
    • 通信環境の整備:大容量データを扱うための高速インターネットが不可欠。
  • 社会的課題
    • デジタルデバイドの拡大:技術へのアクセス格差が生じる可能性。
    • 規制と法整備:仮想空間内での取引や行為に対する法的枠組みが未整備。

安全性とプライバシーの問題

  • 個人情報の保護:仮想空間内での行動データが第三者に利用されるリスク。
  • サイバー犯罪の増加:詐欺やハッキングなど、新たな犯罪手法の出現。
  • 倫理的な課題:仮想空間内でのハラスメントや違法行為への対応。

今後の展望と影響

  • 技術革新の加速:AIや5G、さらには6Gの普及により、より高度なメタバースが実現。
  • ビジネスチャンスの拡大:新しいマーケットや職業の誕生。
  • 社会構造の変化:教育、医療、行政など、多岐にわたる分野での活用が期待。

しかし、これらの課題を克服すれば、メタバースとWeb3は経済活動や社会構造に大きな影響を与える可能性があります。例えば、新しいマーケットやビジネスモデルの創出、教育や医療分野での仮想空間を活用した遠隔サービスの提供など、さまざまな分野での応用が期待されています。

メタバースの市場規模予測

世界経済フォーラムが24年3月に発表したレポートによると、産業用メタバースは2030年までに全世界で1000億ドルの市場規模に達すると予測されています。同レポートによると産業用メタバースは、産業価値連鎖を通じて変革技術をシームレスに組み込むことで身体的な世界がデジタルの対応物を通じて制約を受けなくなり、機動性、適応性、リアルタイムの相互運用性を参加者に提供するとしています。これには人工知能(AI)、Web3とブロックチェーンなどの統合が伴います。

さらに総務省24年2月のレポートによると、米国やEUではメタバースの普及に向けてプライバシー保護や子どもの安全を強化する法規制が進められており、メタバースにも適用される可能性があります。韓国や中国では、政府主導でメタバース産業の発展を促進する計画が策定されています。

また令和5年版情報通信白書によれば、日本のメタバース市場は令和8年度には1兆42億円まで拡大すると予測されています。総務省の事務局資料によると、令和12年度には国内メタバースのユーザー数が1750万人まで増加するとみられています。

関連記事:元東方神起ユチョン、日本デビュー記者会見をメタバースで生中継へ

まとめ:メタバースとWeb3の関連性は今後も高まる可能性が高い

メタバースとWeb3は、それぞれが独自の技術的背景を持ちながらも、互いに補完し合う関係にあります。メタバースは、ユーザーに新しい仮想体験を提供し、Web3はその基盤を技術的に支える役割を果たします。両者が融合することで、新たなデジタル経済や社会が形成されつつあり、これによりユーザー主導の新しいインターネット社会が実現される可能性が高まっています。

しかし、その一方で、技術的・法的な課題は残っており、これらの問題を解決するためには、技術者や開発者だけでなく、社会全体での理解と協力が不可欠です。今後も、これらの技術がどのように進化し、私たちの生活やビジネスに影響を与えるのか、注視していくことが重要です。

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