へデラ(HBAR)は、高速・低コスト・高セキュリティを特徴とする分散型ネットワークです。従来のブロックチェーンとは異なり、独自のハッシュグラフ技術を採用し、効率的なトランザクション処理を実現しています。GoogleやIBMなど主要企業がガバナンスに参加し、信頼性の高い運営を維持している点も特徴です。また、日本の暗号資産取引所にも上場しており取引が可能です。
本稿では、ヘデラの技術的特徴やユースケース、ETFの進展、今後の可能性などについて初心者投資家にもわかりやすく解説します。
ヘデラ(HBAR)とは?
ヘデラは、分散型アプリケーション(dApps)の構築および運用のためのオープンソースのプルーフ・オブ・ステーク(PoS)型の分散型ネットワークです。従来のブロックチェーンとは異なり、独自の「ハッシュグラフ(Hashgraph)」アルゴリズムを採用し、高速・低コスト・高セキュリティなトランザクション処理を実現しています。
ヘデラの主な特徴
ヘデラの特徴は以下の通りです。
- スピードとスケーラビリティ
- 1秒間に10,000件以上のトランザクションを処理可能
- 分散型アプリのパフォーマンス向上
- エネルギー効率
- カーボンネガティブ(CO2排出ゼロ以下)
- ビットコインやイーサリアムよりも環境負荷が低い
- セキュリティ
- **アシンクロナス・ビザンチン耐障害性(aBFT)**による高セキュリティ
- ブロックチェーンと異なり、フォーク(分岐)が発生しない
- 低手数料
- トランザクション手数料は0.0001ドル(約0.015円)
- 送金やスマートコントラクトの実行コストが安価
- ガバナンス
- 世界の主要企業39社がヘデラ・ガバニング・カウンシル(Hedera Governing Council)**を構成
- Google、IBM、ボーイング、LGなどの大企業が参画
- ネットワークの運営を民主的に管理
へデラが注目される理由
ETFの申請
カナリー・キャピタルは、2023年10月に認定投資家向けのHBARトラストを立ち上げました。これにより、機関投資家がヘデラに直接投資できる仕組みが整い、今後のETF申請の基盤が築かれました。
その後、2024年に入り、カナリー・キャピタルはHBARスポットETFの申請をSEC(米証券取引委員会)に提出しました。このETFは、HBARを直接保有する形態で設計されており、デリバティブや先物取引を使用しない点が特徴です。また、株主はHBARそのものではなく、現金での収益を受け取る仕組みとなっています。
さらに、ナスダックは2025年2月16日、カナリー・キャピタルのライトコインETFの取引開始に向けたフォーム19b-4をSECに提出しました。これは、同社がS-1登録フォームを修正した直後の動きであり、SECからの前向きなフィードバックを受けている可能性を示唆しています。この流れから、HBARスポットETFの承認も進展する可能性が高いと見られています。
関連記事:ナスダック、カナリーキャピタルのライトコインETFを上場申請
eVoteでの活用の可能性
世界経済フォーラム(WEF)および国連(UN)のメンバーであるShawn氏によると、トランプ大統領と新設の政府効率局(DOGE)が、ブロックチェーンを活用した連邦レベルの投票・身元確認システムの導入を検討しているそうです。
Shawn氏はSNS「X」で、このシステムがX、カルダノ、ハイパーレジャー、ヘデラと協力して開発される可能性があると示唆しました。また、新たな法案では、全米の州に「eVote」プラットフォームの導入を義務付ける予定で、選挙の透明性向上を目的としているとのことです。トランプ氏は2028年の選挙での不正防止に強い関心を示しており、このシステムの導入を推進しているとされています。
これまでもへデラは米政府と積極的に議論を交わしており、2023年4月にはヘデラはホワイトハウス主催の「民主主義サミット」において、ブロックチェーン技術が民主主義をどのように強化できるかを議論するラウンドテーブルを主催することを約束しました。さらに、ヘデラのチーフポリシーオフィサーであるニルミニ・ルービン氏は、2023年4月27日に米国下院農業委員会のデジタル資産に関する公聴会で証言し、デジタル資産の規制上のギャップについて議論しました。
関連記事:カナリーキャピタル、初のHBAR ETFをSECに申請
ハッシュグラフ(Hashgraph)の技術的特徴
ヘデラは従来のブロックチェーンの代替技術として「ハッシュグラフ(Hashgraph)」を採用しています。これは、「ゴシップ・アバウト・ゴシップ(Gossip about Gossip)」と「バーチャル・ボーティング(Virtual Voting)」という手法を利用する合意形成アルゴリズムです。
比較項目 | ブロックチェーン | ハッシュグラフ |
---|---|---|
データ処理方式 | 直線的なブロック構造 | ツリー状に全取引が統合 |
フォーク発生の可能性 | あり(競合ブロックが発生) | なし(すべてのデータが統合) |
トランザクション速度 | 7〜100TPS(Bitcoin, Ethereum) | 10,000TPS以上 |
コンセンサス方式 | PoW, PoS, DPoS | aBFT(アシンクロナス・ビザンチン耐障害性) |
エネルギー消費 | 高い(PoW) | 低い(PoS+aBFT) |
この技術により、ヘデラは高速かつ低コストでトランザクション処理が可能となり、既存のブロックチェーンの問題点を克服しています。
ハッシュグラフの仕組み
ハッシュグラフでは、トランザクションがブロックとして処理されるのではなく、ノード間で伝播される「イベント」として扱われるため、以下のようなメリットがあります。
- 取引データがすべて記録される
- ブロックチェーンでは無駄なブロックが破棄されるが、ハッシュグラフではすべての取引が統合される
- トランザクション処理が高速
- 1万TPS以上の処理が可能(イーサリアムの100倍以上)
- フォークが発生しない
- すべての取引が1つの連続したデータストリームとして管理される
ハッシュグラフは、Dr.リーマン・ベアード氏によって発明され、ヘデラの中核技術として採用されています。
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ヘデラのネットワークサービス
ヘデラは、dAppsの開発と運用を促進するために、3の主要なサービスを提供しています。それぞれ、スマートコントラクト、コンセンサス、トークンの管理を最適化するためのものであり、さまざまな分野で活用されています。
スマートコントラクトサービス
ヘデラのスマートコントラクトサービスは、イーサリアム仮想マシン(EVM)互換の環境を提供し、Solidityを用いたスマートコントラクトの実行を可能にしています。この環境はEthereumよりも最適化されており、高速かつ低コストでの運用が可能です。
このサービスの主な特長として、以下の点が挙げられます。
- 1秒あたりの処理能力が高く、大量のトランザクションを同時に処理できる
- ガス料金の最適化が行われており、Ethereumと比べて取引コストが低い
- カーボンネガティブの技術を採用し、エネルギー消費を大幅に抑制している
この技術により、NFTマーケットプレイスや分散型金融(DeFi)、分散型自律組織(DAO)といった分野での利用が進んでいます。
コンセンサスサービス
ヘデラのコンセンサスサービスは、ネットワーク上のすべてのトランザクションに対して改ざん不可能なタイムスタンプを付与する仕組みを提供しています。この機能により、データの透明性と整合性が確保され、特に企業や金融機関にとって重要な役割を果たしています。
主な利用分野として、以下のものがあります。
- 銀行や証券取引所における監査ログの記録と管理
- 広告業界でのクリック数や広告閲覧数の追跡と改ざん防止
- サプライチェーン管理における出荷、輸送、受領履歴の記録
特に、データの正確性が求められる分野において、コンセンサスサービスの導入が進んでいます。
トークンサービス
ヘデラのトークンサービスは、企業や開発者が独自のトークンを発行し、管理するための機能を提供しています。取引速度が速く、手数料が安価であることが大きな利点です。
このサービスには、以下の特徴があります。
- 1秒間に最大1万件のトークン取引を処理可能
- 取引手数料が低く、大量のトランザクションを処理する場合でも経済的
- ERC-20、ERC-721、ERC-1155などの規格と互換性があり、NFTの発行や管理が容易
トークンサービスは、ステーブルコイン、セキュリティトークン、NFTの発行に活用されており、既存のブロックチェーンと比較して、より効率的な運用が可能となっています。
HBARのトークノミクス
供給量と循環供給量
HBARは、供給量が固定されており、新規発行は一切行われません。この仕組みにより、インフレによる価値の低下を防ぎ、長期的な安定を維持することが可能です。
- 総供給量:50,000,000,000 HBAR(500億HBAR)
- 循環供給量(2024年5月時点):全体の70%
- 未流通供給量:30%(ヘデラ・ガバナンス評議会が管理)
HBARの流通量は、事前に設定された配分スケジュールに従い段階的に市場に放出されるため、急激な供給増加による価値の低下(インフレリスク)を抑えています。
トークン配分
HBARの初期配分は、エコシステム成長と開発支援を最優先とする戦略で設計されています。
カテゴリ | 配分割合 | 主な用途 |
---|---|---|
エコシステム開発 & オープンソース開発 | 36.5% | ネットワークの成長促進、開発助成金、パートナーシップ拡大 |
購入契約 | 25.4% | 企業や機関投資家向けのトークン供給 |
ネットワークガバナンス & 運営 | 16.2% | インフラ維持、運営費用、評議会の活動資金 |
未割り当て供給 | 14.1% | 将来的な利用のための保留資産 |
初期開発コスト & ライセンス | 7.7% | ネットワーク初期開発、研究開発費用 |
同配分はヘデラ・ガバナンス評議会によって管理されており、透明性のある運用が行われています。
HBARの主な用途
HBARは、ヘデラ・ネットワーク全体の基盤となる通貨として、さまざまな用途で活用されています。
取引手数料
- ネットワーク上のすべての取引にHBARが使用される。
- 取引手数料は固定されており、コストが予測しやすい(1トランザクション=0.0001USD)。
- 1秒あたり最大1万件の高速処理が可能。
ネットワークサービス
- Hederaコンセンサスサービス(HCS):タイムスタンプ記録、改ざん防止。
- Hederaトークンサービス(HTS):ERC-20互換のトークン発行、管理。
ステーキングとセキュリティ
- HBARのステーキングにより、ネットワークのセキュリティが強化される。
- ステーカー(HBARを預けるユーザー)は、トークン報酬を受け取ることが可能。
- ネットワークノードが分散されることで、耐攻撃性が向上。
ガバナンス
- 将来的にはHBAR保有者がネットワークの意思決定に参加できる可能性がある。
- 現在はヘデラ・ガバナンス評議会が管理し、分散型運営を推進。
HBARのインフレ・デフレメカニズム
HBARは、完全固定供給のため、インフレの発生を防止する仕組みとなっています。
- インフレ防止策
- 新規発行なし(最大供給量が決まっている)。
- 事前設定されたスケジュールで流通量を管理。
- デフレ対策
- トランザクション手数料の一部は消費され、市場のHBAR量を調整。
- ユースケース拡大に伴い、需要が増加する仕組み。
ステーキングの段階的導入
ヘデラは、ネットワークの安全性と分散性を高めるため、ステーキングをフェーズごとに実装しています。
フェーズ | 実施状況 | 内容 |
---|---|---|
フェーズ1 | 完了 | ステーキングの技術実装(報酬なし) |
フェーズ2 | 完了 | 取引所・ウォレット統合、ノード参加の拡大 |
フェーズ3 | 完了 | ステーキング報酬の開始(評議会承認済) |
フェーズ4 | 予定 | ステークの可視化、ノードの可用性に応じた報酬設計 |
ヘデラのステーキングは、流動性を確保しつつネットワークの健全性を維持する設計となっています。
関連記事:暗号資産ステーキングの始め方
Hederaガバナンス
HBARの運営は、中央集権的な管理を避けるため、最大39のグローバル企業が参加する評議会によって管理されています。
- 参加企業(一部)
- IBM
- Boeing
- LG Electronics
- Shinhan Bank
- 特徴
- すべてのメンバーは平等な投票権を持つ。
- 企業単独の影響力を排除し、公平な意思決定を行う。
- 各メンバーは定期的に交代し、権力の集中を防ぐ。
同ガバナンスモデルは、従来のブロックチェーンプロジェクトと異なり、企業とユーザーのバランスを取る構造となっています。
HBARの投資インセンティブ
ヘデラは、開発者・投資家・エコシステム全体の成長を促進するため、以下のインセンティブを提供しています。
- 開発者向けインセンティブ
- Hederaネットワーク上でのプロジェクト支援のための助成金制度。
- ステーキング報酬
- ステーキングを行うことで、ネットワークの安全性向上とトークン報酬の獲得が可能。
- エコシステム支援助成金
- Hederaプラットフォームの発展を促進するプロジェクトへの資金提供。
関連記事:暗号資産におけるトークノミクスとは?初心者投資家にもわかりやすいように解説
HBARの価格予測(2025年〜2035年)
HBARの価格予測は、参考資料のデータを基に、今後10年間の価格動向を以下のように予測しています。
年 | 最高価格(USD) | 最低価格(USD) |
---|---|---|
2024 | 0.2696 | 0.0998 |
2025 | 0.4187 | 0.2595 |
2026 | 1.35 | 0.57 |
2027 | 2.36 | 1.46 |
2028 | 5.31 | 4.14 |
2029 | 13.28 | 10.35 |
2030 | 20.71 | 10.354 |
2031 | 34.17 | 26.65 |
2032 | 46.13 | 28.60 |
2033 | 57.66 | 44.97 |
2034 | 86.49 | 67.46 |
2035 | 108.11 | 84.32 |
この価格予測は、過去の市場動向、ヘデラの技術革新、採用率の向上を考慮して導き出されています。
HBARのユースケース
HBARは、高速処理・低コスト・高セキュリティを強みに、さまざまな分野で活用されています。現実資産のトークン化では、不動産や証券をブロックチェーン上で管理し、流動性と透明性を向上させています。分散型金融では、分散型取引所やステーブルコインの発行が可能となり、安定した運用が実現されています。サプライチェーン管理では、商品の輸送履歴やトレーサビリティを記録し、不正を防止しています。デジタルアイデンティティでは、安全なKYC手続きやプライバシー保護が強化され、NFT市場では低コストかつ高速な決済が可能となっています。これらの特長により、HBARは企業や金融機関での導入が進み、実用化が拡大しています。以下に具体例を5つ紹介します:
- サプライチェーン管理
ヘデラの分散型台帳技術は、商品の流通過程を透明かつ追跡可能にします。例えば、Avery Dennison社は、ヘデラを活用して100億以上の製品のトレーサビリティを実現しています。 - クーポン発行と管理
米国のクーポン規格を策定するコンソーシアムであるCoupon Bureauは、ヘデラ上でクーポンを発行し、透明性と信頼性の高いクーポン管理システムを構築しています。 - カーボンクレジットのトークン化
DOVUは、ヘデラを利用して二酸化炭素の排出権をトークン化し、土地所有者と企業を結びつけ、カーボンオフセットを促進しています。 - ワクチンの流通管理
英国では、ヘデラの技術を用いてコロナウイルスワクチンの保管温度や流通情報を記録し、適切な管理と信頼性の確保を実現しています。 - フェイクニュース対策
Acoer社の「NewsHash」は、ヘデラを活用してニュース記事にタイムスタンプを付与し、情報の改ざん防止と信頼性の向上を図っています。
関連記事:ValourのヘデラHBAR ETP、ユーロネクスト上場
まとめ:2025年のへデラの動向に注目
HBARは、独自のハッシュグラフ技術やエンタープライズ向けの展開を強みに成長を続けています。特に、リアルワールド資産のトークン化、分散型金融、サプライチェーン管理、デジタルアイデンティティ、NFTなど、幅広いユースケースでの活用が進んでいます。2025年以降、トランプ政権の政策がどのように暗号資産市場に影響を与えるのか、また米国産のヘデラがどのように成長していくのかに注目が集まっています。HBARは、今後の市場環境によっては大きな成長を遂げる可能性がある一方、慎重なリスク管理が不可欠な資産でもあります。
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