バイナンスリサーチは、「チップフレーション」が過小評価されているインフレ要因であると指摘し、DRAMメモリ価格がこの1年で約6倍に上昇したと警告した。AIデータセンターが本来は消費者向けデバイス向けだった供給を吸収しつつある。
同調査会社は、市場がエネルギーコストの緩和を織り込む一方で、メモリチップ市場の構造的な逼迫は見過ごされていると主張。チップ価格が今後も上昇すれば、インフレは高止まりし、金利や金融市場、暗号資産にも影響を及ぼす可能性。
チップ価格が上昇する理由
この警告は、インフレ要因の1つが後退する中で出された。米国とイランはホルムズ海峡の航行再開で合意した。この合意で原油供給の圧力が緩和される見通し。影響は既に表れており、原油価格はきょう約4%下落した。
ただしバイナンスリサーチは、メモリチップの問題は依然として別で、かつ目立ちにくいとする。AIインフラ需要が市場構造を変化させた。高帯域メモリ(HBM)、サーバー向けDRAM、エンタープライズ向けドライブが生産量の多くを占めつつある。
これにより、スマートフォンやPC向けの供給が急速に減少。2027年までに約30%の供給能力増強があっても、バイナンスはPCメモリ供給が約15%不足するとの見通し。スマートフォン向けも需要を約12%下回る可能性。
隠れたコスト圧力
表面上のインフレへの影響は小さい。バイナンスはチップフレーションが消費者物価指数(CPI)に約0.10ポイント程度しか上乗せしないと指摘。家電の指数構成比は小さいため。
ただし、真の圧力は見えにくいとの主張。メモリコスト上昇が企業の支出やクラウド利用料、製品刷新サイクルの鈍化にも波及。デバイスメーカーが仕様の削減に動く懸念もある。
供給改善も当面見込めない。新たなメモリ工場の建設と立ち上げには2年以上かかる。バイナンスは2026年までDRAMの供給不足率が約17%、NAND不足は2028年まで続くと指摘。
サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンの3社がDRAMの約90%、HBM生産を全て支配。一方で、ハイパースケーラー各社は長期契約で供給を確保している。
「短期的な政策対応は存在しない」とバイナンスリサーチ。
チップフレーションがビットコインに与える意味
バイナンスリサーチはビットコイン(BTC)にとって相反する影響を指摘。供給制約によるインフレが続けば、利下げ開始が後ろ倒しされ、利上げ再開の議論も再燃する恐れ。流動性の引き締めは短期的にリスク資産に重しとなる。
「“チップフレーション”が市場の認識に登場したのは2025年――既に金融政策の期待値を一変させている。エネルギー・食料・チップ、全てが同時に供給制約下となり、利下げはさらに先送り。利上げへの転換も排除できなくなっている」と同チームは述べた。
ビットコインは月曜日に約6万5700ドルで推移、直近1か月で約17%下落。同社は長期的には逆の動きも示唆。バイナンスリサーチによれば、
「ビットコインや類似資産は、供給主導でインフレが持続する世界では“割安”にならない。むしろ存在感が増す」
市場がこのリスクをどう再評価するかは、メモリ供給がどれだけ早く需給ギャップを埋めるかにかかる。
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