2023年の暗号資産市場はFTX破綻やビットコイン1万ドル台への下落で冷え込むも、同年後半にはビットコインETFの追い風で上昇市場に向け過熱感が増した。ビットバンクの調査では、回答者の20.3%が24年の価格上昇を予測し、暗号資産の将来性に期待が集まった。金融関係各社および、暗号資産関連会社は24年の市場の動向に強気の見解を示している。本稿では24年の暗号資産市場の展望について解説してゆく。
1:ビットコインの動向
米ブラックロックは23年6月15日、ビットコイン(BTC)現物投資信託(ETF)採用に向け米SEC(証券取引委員会)に申請し、複数資産運用会社が追従した。SECは24年1月10日までに「ARK 21Shares Bitcoin ETF」の最終判断を下す必要がある。23年後半、ビットコイン価格は4万5000ドル近くまで上昇し、各社アナリストはETF導入後の市場拡大を見込んでいる。ロイター通信が23年12月31日に報じたところよれば、関係者は、29日の提出期限を守った発行者は、1月10日までに、早まれば現地時間の2日または3日にSECからETFの承認または否認の判断を受ける可能性があるとみている。
ゴールドマン・サックスのマシュー・マクダーモット氏は24年、ブロックチェーン技術と規制進展による市場成長を予測。ビットコインとイーサリアムのスポットETF承認は機関投資家の参入促進につながると見ている。また、デジタル資産が効率化やリスク低減に寄与することが認められ、伝統的な金融機関も積極的にこの分野に参入していることを指摘した。市場は拡大と商業的価値実現に向かっており、デジタル資産技術の採用と「担保の移動性」向上が期待されるとした。
当社最高ニュース部門責任者のアリ・マーチン氏は、ビットコインの強気相場が続き、次のピークは25年10月と予想。一方で現物ETFの承認はビットコインへの新たなアクセスを提供するが、「噂買い、ニュース売り」のパターンに注意が必要と警鐘を鳴らす。クリプトクアントは28日、同様の見解を示しビットコインのETFの承認が市場に売り圧力を加速させ、3万二千ドル台まで下落する可能性があるとの見解を示した。
Bitwiseの12月レポートによれば、ビットコインは現物ETFの承認によりただの投機的資産ではなく、成熟した投資市場の一部としての地位を確立すると主張した。暗号資産・金融関係者は24年に起こりうる上昇トレンドにより、ビットコイン価格が8万ドルから16万ドル付近まで高騰すると見ている。
2:イーサリアム・レイヤー2の動向
イーサリアムは23年、レイヤー2市場が活況しエコシステムの拡大が見られた。米資産運用会社ヴァンエック(VanEck)は12月7日の市場予測レポートで、イーサリアムは24年にビットコインを上回らないが、テクノロジー株を上回るパフォーマンスが期待されるとした。同社はイーサリアムの24年上半期予定の重要なアップグレード「Dencun」の一環であるEIP-4844実装後、レイヤー2がEVM(イーサリアム仮想マシン)互換プロトコルのTVLと取引量の大部分を占めると予想した。
米金融大手JPモルガンのアナリストらはこのほど公開したメモで、24年にイーサリアムがビットコインや主要な他の暗号資産を上回る可能性を示唆した。同分析は、DencunアップグレードとEIP-4844の影響に基づく。JPモルガンのニコラオス・パニギルツォグロウ氏率いるチームは、半減期などからなる暗号資産市場の活況と同時に、イーサリアムが暗号通貨エコシステム内でのシェアを再び獲得し、主導権を握るとを予想。DenCunアップグレードに含まれるプロト・ダンクシャーディングは、イーサリアムネットワークの性能向上に寄与し、L2ネットワークの効率が向上し、トランザクションコストの削減が期待されるとした。
イーサリアム共同創設者、ヴィタリック・ブテリン氏は、24年におけるイーサリアムの展望は、その技術とコミュニティの変革を中心に据えている。主要な進歩には、ロールアップ技術、新しいプライバシーソリューション、アカウント抽象化、ライトクライアントの使用が含まれる。同氏はこれらの技術はイーサリアムを金融ツール以上のものにし、オープンなインターネット基盤の一部としての地位を目指すとした。同氏はまた、ゼロ知識証明のような新技術は開発者にとって使いやすく、消費者向けアプリへの適用が可能になっているとした。イーサリアムはこれにより、暗号通貨プラットフォームを超え、プライバシー保護と認証を同時に提供するツールへと進化していると示唆した。同氏は12月31日、24年のイーサリアムのロードマップについて言及し、いくつかの細かな変化があるものの、概ね変更はないとした。
コインベースの2024年市場予測レポートによると、23年のレイヤー2の普及にも関わらず、イーサリアムのトランザクション数は安定しており、1日平均約100万件にのぼる。24年にはモジュラーブロックチェーンなど台頭し、レイヤー2市場の一層の加熱が予見される。イーサリアムは資産運用会社により現物ETFの取り扱いに向けた申請も行われており、その動向は市場にインパクトをもたらすだろう。
3:NFTの動向
NFT市場は23年、冷え込んだ年となった。英保険会社Hiscoxが7月に公開したオンライン・アート・トレード・レポート23によると、NFT保有者の33%が、購入後のユーティリティ対し、「どうしたらいいかわからない」と回答。保有者の中にはこれらの不安感から、NFTへの興味が「消えてしまうかもしれない」と回答している人もいた。
一方、24年のNFT市場は活況を取り戻す見込みで、米資産運用会社ヴァンエックが7日に発表した24年の暗号資産市場予測レポートによれば、NFT市場は活動が史上最高値に回復し、依然としてイーサリアムがリード、ビットコインがOrdinalsプロトコルを通じて勢いを増すとした。ETHとBTCのNFT発行比率は3:1に変化すると予測した。
米著名ベンチャーキャピタルのa16zが12月に公開した24年の暗号資産市場予想レポートでは、NFTはデジタルブランド資産としての地位を確立し、幅広い企業やコミュニティにおいて一般的な存在になると見ている。既にスターバックスやナイキ、Redditなどの著名ブランドが、ゲーム化されたロイヤリティプログラムやデジタルコレクタブルNFTを通じて、新たな形式のデジタル資産を消費者に提案してきた。同社はNFTは顧客のアイデンティティやコミュニティの結びつきを強化し、物理的商品とデジタル表現の橋渡しをする手段としても有効であると主張する。
同社は低価格NFTのトレンドは、大規模なコレクションを消費財として提供する新たな動きを示している主張。これらは預託ウォレットや低取引コストの「Layer 2」ブロックチェーンで管理されることが多いという。同社は24年には、さらに多くの企業がNFTを取り入れ、顧客との新しい関係構築や製品・体験の共創に利用する可能性が高いとした。
NFTは現実資産(RWA)のトークン化事業にも関連しており、これまでトレーディンカードや時計などのさまざまな資産のトークン化(NFT)化が試みられた。トークン化事業の活性化もNFTの活性化を促すとみられる。ボストン・コンサルティング・グループによれば、30年までのトークン化された資産の市場は、約16兆ドルに達すると見込まれている。
DeFi・RWAのトークン化の動向
暗号資産税務管理サービスZenLedgerの24年分散型金融(DeFi)予測レポートによると、DeFi市場は12月18日時点のTVLは過去最高値の1780億ドルから450億ドルへ縮小。同社その一方で、テラの崩壊後、市場は成熟し持続可能性を獲得したと指摘する。
同社はDeFiの重要なトレンドとして、リアル・イールドの導入が挙げる。従来のDeFiプラットフォームは高APYを提示していたが、多くは持続不可能で、ポンジスキームに類似していた。リアル・イールドは、プロジェクト収益と配当の比較により、より現実的な利益の可能性を提供する。さらに同社はDeFiがRWAへの投資へとシフトを挙げる。テラの崩壊によりアルゴリズム型ステーブルコインへの関心が低下し、財務省債券など実物資産に裏打ちされたステーブルコインに注目が集まっているとした。同社は機関投資家のDeFi市場への関心の増加も指摘。DeFi市場は全金融サービス市場や世界株式市場に比べ小規模だが、イノベーションの最先端に位置付けられているとした。
暗号資産リサーチ企業メサーリが12月19日に発表したレポートによれば24年の暗号資産市場全体としては、DeFiが重要なセクターであり続けている。DeFiは伝統的な金融システムに代わる新しいパラダイムを提供しているとした一方で、規制当局からの圧力が高まっており、特にセキュリティやコンプライアンスに関する規制が市場の成長に影響を与える可能性があると指摘した。
米著名ベンチャーキャピタルのパンテラキャピタルは24年の暗号資産市場において、RWA(実物資産)のトークン化に関心を示した。これには伝統的金融(TradFi)の商品のトークン化も含まれる。同社は暗号資産がTradFi市場での露出を増やすことで、TradFi-DeFi間の橋渡しを実現し、投資家に流動性と多様性をもたらすと見ている。
同社はステーブルコインはTradFiとDeFiの世界をつなぐ重要なリンクとなり、USDCやPYUSDなどがポートフォリオオプションや支払い手段として広く受け入れられると主張。USDCを提供するサークルが24年にIPOを検討している中、日本円を含む非米ドルステーブルコインの発行と利用が増加する可能性が高いと見ている。これによりオンチェーンの法定通貨FX市場の成長にもつながるとした。これまでにOndoなどのプラットフォームを通じてトークン化された国債は8億ドルに達している。
新興領域の動向
a16zの24年の暗号資産市場予想レポートではブロックチェーンは、中央集権型AIに対抗する力を持つとみている。現在、大手テック企業のみがAIモデルの訓練・運用を行っているが、ブロックチェーンを利用することで、計算能力や新しいデータセットの提供者が参加し報酬を得るグローバルな市場が可能になると主張。これによりAIのコストが低下し、よりアクセスしやすくなるという。
同社はAIが情報生産の方法を変革する中、豊富なAI生成コンテンツやディープフェイクが生まれるが、暗号技術はこれらの起源を追跡するのに役立つとした。また、AIの分散化と民主的な管理を模索する必要があり、Web3がその解決策を探る場となる。分散型、オープンソースのブロックチェーンネットワークにより、AIの革新は民主化され、消費者にとって安全になると指摘した。
メサーリがレポートで新たなセクターとして注目したうちの1つがDeSoc(分散型ソーシャルネットワーキング)だ。同社はブロックチェーン技術を活用したDeSocは、既存の中央集権的なソーシャルメディアプラットフォームに代わる新しい形態を提案する。コンテンツクリエーターへの公平な報酬分配や、プラットフォームの透明性と信頼性の向上が期待されるとした。DeSocは、ユーザー参加型の経済モデルと分散型のガバナンスを通じて、ソーシャルメディア業界に新たな動きを生み出す可能性を秘めているとした。
ヴァンエック(VanEck)は市場予測レポートでDePIN(分散型物的インフラストラクチャーネットワーク)が実用化に向けて進展を見せるとした。Hivemapperは、Google Streetviewに匹敵するコミュニティ所有のマッピングプロトコルを開発し、1千万キロメートルの独自マッピングを達成した。HONEYトークンを活用し、世界中のドライバーを動員してデータベースの構築を目指している。同社はHivemapperは、Googleに対し速度と資本コストの面で有利になる可能性があるとし。同社はHelium(HNT)が分散型ワイヤレスホットスポットネットワークを米国で拡大し、有料加入者を5千人から10万人に増やすと見ている。ホットスポットは誰でも設置可能で、ホットスポット運営者はHeliumのトークンで報酬を受け取り、従来のネットワークと比べてコスト削減が期待されるとした。
コインゲッコーが12月27日に公開した独自レポート「人気暗号資産の2023年総括」によれば、ブロックチェーン領域におけるAIの活用とDePINは暗号資産市場で最も話題を呼んだ分野の1つとなった。
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