RWAブームは幻想か 専門家がトークナイズ流動性格差を指摘

  • FCAに規制されるデジタル資産取引所のArchaxは、機関投資家には単一のブロックチェーン選択を強制するのではなく、チェーン非依存のインフラが必要だと述べている。
  • トークン化資産商品とオンチェーントレーディング基盤を構築するTheoは、休眠資産が未完成の市場を示していると主張する。資産は存在するが、多くは依然として実用的な用途を欠いているという。
  • デジタル資産銀行シグナムと流動性プロジェクトWAODAOは、トークン化市場が活発化するには、法域を越えた規制された連携と資産同士のより深い結び付きが必要だと指摘する。

トークン化された現実資産市場の規模が600億ドル超に達したが、その価値の大半は依然として集中し、制限され、オンチェーン上で非活性のまま。

BeInCryptoインテリジェンスの2026年トークン化の現状レポートは、RWA.xyzの市場データを基に12資産クラスにおよぶ7000超のプロダクトを調査した。全市場価値の88%は62資産に集中し、上位5プロダクトでほぼ半分を占めるという。

実際の取引活性度のギャップはさらに顕著である。10万ドル超のトークン化資産1289件のうち、910件(329億ドル相当)が1週間あたりの移転実績ゼロだった。

また、全市場の97%が米国の個人投資家にはアクセスできない現状も指摘された。BeInCryptoは、エキスパート評議会のメンバーに、これらのデータが示すトークン化の実態について見解を聞いた。

RWA市場のトークン化資産ポートフォリオ 分析図 出典: BeInCrypto

Archax:機関はチェーンの選択を強いられるべきでない

グラハム・ロッドフォードCEO(Archax共同創業者)は、ブロックチェーンの分断が機関投資家の参入障壁となっていると指摘する。

「分断の問題は現実であり、今後も続く。すべての大手資産運用会社が直面しているのは、どのチェーンを選ぶのか、次の新たなチェーンが登場したらどうするのかという運用上の問題だ。本来、選択を強いられるべきではない」とロッドフォードCEOは述べた。

ロッドフォードCEOは、個別のネットワークを横断する規制レイヤーが必要と主張する。これにより発行・取引・カストディ・決済を単一チェーンに縛られることなく担うことが可能になるという。

また、パブリック・ブロックチェーンは無条件に非規制という見方も否定した。

「規制上の安全性を左右するのはチェーンそのものではなく、ゲートウェイだ」

Theo:非活性資産が示す「作りかけ」市場

イギー・イオッペCIO(Theo)は、この329億ドル規模の非活性価値はトークン化の失敗ではなく、市場の多くが「表現」に留まっている現状の表れと分析した。

「資産をトークン化して保管するだけでは“トークン化の演出”に過ぎない。本質は担保利用やDeFi、即時決済といったユースケースを実現することだ」

レポートでは、パブリック・ブロックチェーン上を自由に転送できる「流通型資産」と、記録用途で主に使われる「表現型資産」とを区別している。

非活性価値のうち約270億ドルは表現型資産によるものだ。多くは記録管理や機関投資家向けの決済目的で設計され、パブリックな取引を想定していない。

ただしイオッペCIOは、「トークン化資産が移転・利回り獲得・24時間決済・広範な金融インフラ接続を実現できるかが今後のカギ」と指摘する。

「資産はオンチェーン化された。次はそれらを“機能させる”段階だ」

オンチェーン上で分類されたトークン化資産の分布 出典: BeInCrypto

Sygnum:規制が地域ごとの「流動性サイロ」を生む可能性

ファビアン・ドリCIO(Sygnum Bank)は、法域ごとに異なる規制や標準が策定される中、市場が地域単位で分断されるリスクを指摘する。

「規制資産バンクが”適法な相互運用レイヤー”として機能すれば、単一のユニバーサル・トークン導入を強制することなく、トークン化市場の地域分断(サイロ化)を防ぐことができる」

調査によると、EU規制下のプロダクトは中核市場のわずか33億ドル、6%を占めるにとどまる。

ドリCIOは、規制プラットフォームは地域の法規制やコンプライアンス要件を守りつつ、チェーンを越えて発行者と投資家を結びつける必要があると主張する。

WAODAO:トークン化資産には流動性ネットワークが不可欠

アレクサンドル・クリプトヴェド氏(WAODAO創業者)は、レポートが「資産のオンチェーン化」と「市場としての機能」に大きな差がある現実を露わにしたと指摘する。

「週次移転ゼロの329億ドル相当の資産は、トークン化“存在”とトークン化“市場”の乖離を如実に示す」

同氏は、トークン化資産同士を複数の少額取引ペアで結ぶ「流動性グラフ」を提案する。既存のようなステーブルコインとの単一深堀市場に頼らない仕組みだ。

「私の見解では、決定的に足りないのはこの流動性グラフだ」

この仕組みにより、リバランスや裁定取引、担保移転、機関投資家によるポートフォリオ運用などを通じた市場活性化が見込める。

トークン化市場の次の課題は「実用性」

専門家の間で、なぜこれほど多くのトークン化された価値が非活動的なままなのか、その理由に見解の相違がある。

ロドフォード氏はブロックチェーンの分断を指摘する。イオッペ氏は市場がデジタル表現の段階で停滞しているとみる。ドリ氏は規制の縦割りに焦点を当て、クリプトベッド氏はトークン化資産により良い流動性接続が必要だと主張する。

彼らの結論は一つの点で一致する。トークン発行を増やしても、市場の構造的な課題は解決しないという見解。

次の段階は、トークン化資産がネットワークを越えて移動し、規制要件を満たし、投資家に届き、実際の金融ワークフローに接続できるかどうかにかかっている。

市場は資産をオンチェーンで記録できることを証明してきた。しかし、これら大半が活発な市場として機能できるかどうかは、まだ証明されていない。

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