2023年の暗号資産市場は前半のFTX破綻の余波、そしてビットコインの1万ドル台への下落などにより冷え込みを見せたが、同年後半にはビットコイン現物投資信託(ETF)を追い風に市場は24年の上昇市場に向け過熱感が高まった。本稿ではBeInCrypto Japanが厳選した23年の暗号資産市場を席巻した10大ニュースを解説する。
1:資産運用最大手のブラックロックがビットコインETF発行に向け申請|各社が追随
米大手資産運用ブラックロックは6月15日、ビットコイン(BTC)ETF採用に向け米SEC(証券取引委員会)に申請した。同社の申請を受け、グレースケールを筆頭に始まったETFナラティブは活況を見せ、複数資産運用会社が米SECに現物ビットコインETFの発行に向け申請。米SECは24年1月10日までにアーク・インベスト・マネジメントおよび、暗号資産投資会社21シェアーズと連携し、申請したビットコイン現物ETF「ARK 21Shares Bitcoin ETF」の最終判断を下さなければならない。23年後半は同報道を受け、暗号資産市場は全面高となり、ビットコイン価格は4万5000ドル付近まで上昇した。各社アナリストらはETF導入後の市場に期待を示し、市場に大きく反映された。
2:改正資金決済法により、ステーブルコインの展開が可能に
ステーブルコインを規制する目的で22年6月に成立した改正資金決済法が6月1日、施行された。これに伴い、日本円や米ドルなどの法定通貨を裏付けとするステーブルコインが、日本でも発行・流通可能となる。同法では、ステーブルコインは電子決済手段と定義される。同法改正を受けメガバンクや金融関連会社が次々とステーブルコインの発行に向けを動きを見せた。ステーブルコインは暗号資産決算のみならず企業間決済や会計税務の簡素化も期待される。ステーブルコインの社会実装が実現すれば年間1000兆円規模の企業間決済の効率化につながるとされている。
3:取引所最大手バイナンスが日本法人「バイナンスジャパン」を設立
バイナンスジャパンは8月1日にサービスを開始し、12月2日にグローバル版からの移行ユーザー向けサービスの展開を開始した。同社は現在、国内最多となる47銘柄を取り扱い、千野剛司代表によれば、100銘柄の取扱いを目指している。プロジェクト選定は成熟度とコミュニティ規模を重視し、国内新興企業のプロジェクトをリストアップする計画もある。レバレッジ取引ライセンス取得後の先物取引開始も予定している。同社はProgmatとの協力で、新ステーブルコインの発行を検討中で、外貨建てのステーブルコイン発行を目指す。STOの決済サービス、Binance Pay導入などの広範なサービスの展開が計画されている。グローバル版のサービスは日本の法規制に適合させながら、順次提供される予定だ。
4:自民党Web3プロジェクトチームを筆頭に政府がWeb3の制度改革に着手
自民党デジタル社会推進本部Web3プロジェクトチームは4月6日、「Web3ホワイトペーパー」を公開し、13日に政策調査会政調審議会で了承された。5月9日にはホワイトペーパーを岸田文雄総理に申し入れ、日本政府はWeb3関連の法整備やガイドライン策定を進めている。8月、日本暗号資産ビジネス協会と日本暗号資産取引業協会は2024年度税制改正要望書を政府へ提出。12月14日には自民党が「税制改正大綱」を発表し、法人所有の暗号資産に関する「期末時価評価課税」の対象外とする見直しを行った。自民党には11月には3日間にわたり、DAO(分散型自立組織)の法律的な在り方を検討するDAOルールメイクハッカソンを開催するなどWeb3の法的制度設計を意欲的に行なっている。
5:暗号資産業界の「顔」の1人であったバイナンスのジャオCEOが辞任
暗号資産(仮想通貨)取引所最大手バイナンスHDを率いるチャンポン・ジャオCEO(CZ)は11月22日、CEOからの辞任を表明した。辞任は同社と米国司法省とのマネーロンダリング防止法などに違反した罪を認める司法取引の同意に起因する。同氏は有罪となれば、最大で禁錮18ヵ月、最低で10〜12ヵ月の実刑を言い渡される可能性がある。同司法取引は、連邦規制当局による数年にわたる捜査の結論として下されたもので、金融史上最大規模の企業和解につながった。バイナンスは23年、米国を筆頭に各国規制当局に運営方法を指摘されさまざまな国での営業を停止。バイナンスショックを引き起こすとの懸念が高まっていた。
6:ビットコイン・オーディナルズを筆頭にNFT・ミームコイン市場が活況
23年の暗号資産市場は、BRC-20、ビットコインオーディナルズ、ミームコインの台頭によってビットコインに新たな風をもたらした。ビットコインオーディナルズは、ビットコインブロックチェーン上でNFTを作成・取引する新しい手段を提供し、トランザクション手数料が一時$37以上に上昇した。BRC-20の導入はビットコインベースのミームコインの増加を促し、ぺぺコインを筆頭に億り人を生み出し注目を集めた。ビットコインオーディナルズは23年 に5100万以上のインスクリプションを記録した。米資産運用会社ヴァンエックが7日に発表した24年の暗号資産市場予測レポートによれば、24年のNFT市場は依然としてイーサリアムがリードするも、ビットコインがOrdinalsプロトコルを通じて勢いを増すとした。ETHとBTCのNFT発行比率は3:1に変化すると予測した。
7:イーサリアムが上海アップグレードを実装
イーサリアムは4月12日、Shapella(上海)アップグレードの実装を完了した。同アップグレードに伴い、ステーキングされているイーサリアム(ETH)、約1800万ETHおよび、バリデータのステーキング報酬の引き出しが可能となった。上海アップグレードは、22年9月に実装されたイーサリアムネットワークのアップグレード「The merge」に続くもの。イーサリアム開発者は6月8日、エクセキューションレイヤー会議で、次期アップグレード「DenCun」アップグレードの実装内容に合意した。一方で同アップグレードは2023年末までに実装予定とされていたが、24年の2月末頃に延期された。
8:レイヤー2競争が激化=汎用性の高い開発ツール提供で多様化見せる
23年、レイヤー2ネットワーク市場は活動と競争が急増した。Arbitrum、Optimismはトランザクション数、アクティビティで顕著な成長を遂げ、リーダーとしての地位を確立。ArbitrumはDeFiで市場最高値のTVLを記録し、Optimismは時価総額とプロトコルの成長で優位性を示した。zkSync、Scroll、Mantleなどの新興レイヤー2も市場に登場。Polygon CDK、OP Stack、RaaS(Rollup as a survice)などの新技術がレイヤー2の多様化を加速した。コインベースが主導するレイヤー2のBaseは80万アクティブユーザーを突破し市場を席巻した。日本発のパブリックブロックチェーンのアスターネットワークはポリゴンとともに「Astar zkEVM Powered by Polygon」を発表。24年初頭のローンチが予定されてる。モジュラーブロックチェーンなど台頭し、レイヤー2市場の一層の加熱が予見される。
9:リップルが米国証券取引委員会に対し一部勝訴
ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所アナリサ・トーレス判事は7月13日、一連のリップル(XRP)裁判に対し、一部判決を下し、デジタルトークンとしてのXRPは有価証券ではないと判断した。これを受け、XRPは急騰し、一時96%の高騰を見せた。裁判所は報告書で、取引所でのXRPの提供・販売は、投資契約の提供および販売に当たらない。これらの取引に対するHowey Testの3番目の要件を立証していないとし、米国証券取引委員会(SEC)の主張を退けた。しかし、裁判所は、機関投資家向けのトークン販売が連邦証券法に違反していると判断するなど、SECの主張も一部認めた。このため、今後リップル、またはSECが控訴する可能性がある。米SECは23年いくつものアルトコインを証券であると主張しており、同判決の行方は法的な不確実性にある他のプロジェクトにも先例となる可能性があるこの裁判の結果は2024年春に決着する予定。
10:5人に1人が24年の暗号資産の価格上昇に期待示す
暗号資産(仮想通貨)取引所ビットバンクが21日に公開した調査によれば、「24年の暗号資産市場に対する期待は?」との質問に対し、回答者の20.3%が「価格上昇」を予測し、「暗号資産の将来性」にも期待が集まった。ビットコインの価格は、4月の半減期を控えて上昇が予想されており、注目が集まる結果に。ビットコインの予想最高値については、「400万円〜500万円未満」が27.0%で最多となり、価格上昇に期待しつつも慎重な見方が示された。24年は各アナリストや市場参加者からの期待からさらなる市場の活況が予見される。一方で各国経済状況は引き続き影響をもたらすため要注目となる。
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